手元に最新の顧客情報を
カミハギサイクルは、1973年創業の自転車販売会社だ。代表取締役社長の上萩泰司氏は2代目にあたり、以前は自動車販売会社のヤナセでメカニックをしていたという。
上萩氏がカミハギサイクルに入ったとき、同じ高級輸入車を扱う業務にも関わらず、自動車と自転車では接客の姿勢に大きな差があることを痛感した。そのとき上萩氏は、顧客満足度に対する自転車販売業界全体の意識改革が必要だと強く感じたという。同社が現在のシステムを導入した根底には、そんな顧客満足に対する思いがある。
同社はこれまで、手書きで作成した顧客情報をウィンドウズベースの顧客管理ソフトに打ち直して管理していた。同社は現在3つの店舗があるが、従来は各店舗で記入した紙の情報をわざわざ集め、管理者が顧客管理ソフトに入力してから更新されたデータを各店舗に戻すという運用だった。しかしこの方法では、タイムリーな顧客管理は不可能だ。実際、顧客間とのやりとりでトラブルが起きるようになっていたという。ファイルメーカーはまずこうした問題を解決するために導入された。
ファイルメーカーというプラットフォームでは、iPhone/iPadで動作するカスタム業務アプリを開発できる。同社が導入したシステムでは、サーバに顧客データを置いて、コンピュータからでもiPad上のカスタムアプリからでもリアルタイムに顧客情報を確認・入力できる。iPadを使うことでペーパーレス化が図れたうえ、離れた店舗間でも常に最新の情報にアクセスできるようになったため、業務効率が大幅に改善したそうだ。
また、同社が導入したカスタムアプリでは、iPadで見積書の作成も行える。あらかじめ登録されている主要商品をリストから選んで素早く見積書を作成でき、しかも作成した見積書や注文書は顧客台帳に紐付けされる。この仕組みにより、今や顧客の担当スタッフが不在のときでも十分な接客が行えるようになった。
顧客との時間も増加
iPadは、接客業務にも活用されている。iPadのサファリを使って海外製スポーツバイクの商品情報や在庫状況なども確認できるため、接客中に顧客の側を離れることも少なくなったという。
また、同店では顧客向けに多数のイベントも開催しており、その参加登録もカスタムアプリ上で行えるようにした。現在の参加状況に加え、誰が参加するのかも把握できるようになり、イベント当日の受付業務などのサポートも向上したそうだ。
iPadの導入は、同社に数多くのメリットを生み出したが、将来的にはファイルメーカーの活用の幅をさらに広げていきたいと考えているようだ。こうした業務の効率化は、スタッフの負担軽減だけでなく、顧客と向き合う時間を生み出していくことにつながった。iPadとファイルメーカーは、上萩氏が抱いた顧客重視の思想を支える存在になっているのだ。
カミハギサイクルは、愛知県内に3店舗を展開するスポーツサイクルの専門店。2015年秋からファイルメーカーを使った業務システムを導入した。【URL】http://kamihagi.com/
同社の使う業務アプリ。スタッフが顧客管理に使うほか、対面での注文やイベント参加受付など、さまざまな用途に幅広く対応する。なお、システムの開発はラディックスという会社が行った。【URL】http://www.radix.ad.jp/
同社代表取締役社長の上萩泰司氏。納期を顧客にしっかり提示するなど、輸入自動車業界で当たり前のことが自転車業界ではアバウトになっており、ツールの改革だけでなくそうした部分の意識改革も広まっていってほしいと語る。
iOS上での機能を強化したFileMaker新シリーズ
5月12日、FileMakerプラットフォームの最新版となるFileMaker 15が発売された。このバージョンではタッチIDによるカスタムアプリの起動や、カスタムアプリとiOSデバイス上にある他のアプリとの連係を実現する「App Extensions」などの機能を搭載。iPad/iPhoneでの使い勝手が向上している。
FileMaker Pro 15
【価格】3万8000円 ほか
【発売】ファイルメーカー
【News Eye】
上萩氏は、カスタムアプリに見積書作成機能を搭載したことで予想外のメリットも生まれたと語った。紙ベースで見積書を使っていた頃は金額に線を引いて値引き対応を行うことがあったが、デジタルに変わったことで値引きを求められることが少なくなったのだそうだ。