ネットワークが遅い?
近年、Macに限らずデジタル機器はインターネットへの依存度が高く、ネットワークの遅さがMacの足を引っ張っている場合があります。特に、クラウド系のサービスをたくさん使っていると、データ同期に手間取ってレインボーカーソルが回ってMacが応答しなくなることも考えられます。
インターネット回線自体は問題ないのにネットワークが遅いときは、ユーザ側の工夫で緩和することが可能です。まず、11nや11acの無線LAN環境があるときは、5GHz帯のネットワークに接続したほうが高速です。その技術的な理由は下のコラムを参照していただくとして、それでは5GHz帯で確実に11acで接続するにはどうすればいいのでしょうか?
サードパーティ製のWi-Fiルータは、ほとんどの場合、2.4GHzと5GHzのネットワーク名(SSID)が別々に設けられており、Wi-Fiメニューから指名することができます。たいていは、ネットワーク名に「A」が入っていると5GHz、「G」が入っていれば2.4GHzと区別されます。
これは、5GHzの電波を使う11aという規格があったことと、11nの前の規格が2.4GHz専用の11gだったことに由来します。もしくは、2.4Gや5Gという文字列が入っている製品もあります。
一方、アップル純正ルータのAirMacエクストリームベースステーションや、AirMacタイムカプセルの場合、自動設定すると5GHz帯と2.4GHz帯が同じネットワーク名となり、2.4GHz帯のほうでつながってしまうことが多々あります。ということは、11nでの接続になってしまうのでリンク速度は最大216Mbpsです。
そのため、AirMacユーティリティで5GHz帯に別の名前を付けてデバイス側でもそれを選ぶ必要があります(高速化テク?)。
【高速化テク?】5GHz帯でアクセスする方法
[オプション]キーを押しながら[Wi-Fi]メニューをクリックすると、接続している周波数やリンク速度がチェックできます。
2.4GHz帯につながっていたら「AirMacユーティリティ」で[ワイヤレス]タブの[ワイヤレスオプション]ボタンをクリックし、[5GHzネットワーク名]にチェックを入れます。
AirMacが再起動したら、Macの[Wi-Fi]メニューから設定した5GHz帯のネットワークを選びましょう。
チャンネル重複に注意
ほとんどのルータのチャンネル設定は自動化されており、近隣で使っているチャンネルを避けてくれるはずですが、実際に試してみると同じメーカーのルータは同じチャンネルに設定され、見事に重複しました。いずれにせよ、手動で設定するほうが確実でしょう。
さて、目に見えないWi-Fiの通信チャンネルの空きチャンネルは、どうやって調べればいいのでしょうか。それは、「WiFi Explorer」のようなWi-Fi探索ソフトを使うことで見える化すれば可能です。近隣の電波状況をチェックして、できるだけほかのWi-Fiネットワークからチャンネルを離すように設定するのです。
AirMacベースステーションはAirMacユーティリティ、サードパーティ製はWEBブラウザから上級設定などを開いて変更します(高速化テク?)。
【高速化テク?】チャンネルの重複を解消する方法
WiFi Explorerを使って近隣のWi-Fiチャネルを調べて、電波の利用状況を把握します。図の状況では36~64chが使用されているのでそこを避けましょう。
AirMacの場合は「AirMacユーティリティ」を使いWi-Fiチャンネルの自動設定をクリックし、手動でチャンネルを指定します。
サードパーティ製のルータでは、WEBブラウザで設定画面を開き、Wi-Fi設定などから使用チャンネルを変更しましょう。
【テクノロジー解説?】最新Wi-Fi規格 IEEE802・11acとは
IEEE802・11acでは、複数のアンテナを使うMIMO技術がキモです。これは、マルチプルインプット、マルチプルアウトプットの略で、複数のアンテナで電波をやりとりして通信速度を高速化する技術です。
1対のアンテナで送受信される電波をストリームと表現しており、大抵はアンテナの数とイコールになります。11acの標準的な3ストリーム構成ならばリンク速度は1300Mbpsになります。
MIMO自体は11nの時点で採用されていましたが、11acではさらに帯域幅も増加しています。11nまでは20MHz幅だったものが80MHz幅となったため、単純計算で4倍になりました。
さらに、電波自体の効率もアップしています。これまで1つの信号が6ビットだったのが8ビットに増えました。情報量は6ビット(64段階)から8ビット(256段階)になったので、これも4倍になっています。
11acでは、これらの3つの要素によって大幅な高速化を実現しているのです。
複数のアンテナで並列に電波通信を行いデータ通信速度を向上させています。11nでは3~4ストリームだったところ11acの規格では最大8ストリームまで対応します(製品化はされていません)。
現在は、80MHz幅までの製品がほとんどですが、将来的には4倍である160MHz幅も使えるようになります。さらに電波効率を高める多値化、ストリーム数の増加などによって11acは高速化されています。
【テクノロジー解説?】5GHz帯が速いのはなぜ?
Wi-Fiに使える電波には、2.4GHz帯と5GHz帯の2つの周波数帯があり、2.4GHz帯はわずか100MHz幅に14チャンネルがひしめき合う、超混雑周波数帯です。しかも、各チャンネルは周波数が段階的にズレているだけなので、4チャンネル分が重なりあっています。重複せずに使えるチャンネルはわずかに3つなのです。
しかし、比較的新しい5GHz帯は340MHz幅に19チャンネルと比較的ゆとりがあります。このため、電波干渉が発生しづらく速度が出やすい傾向にあります。さらに、11ac規格では2.4GHzが廃止され、5GHz帯のみになりました。
つまり、11ac対応のルータでも5GHz帯でつながっていなければその性能を発揮できず、互換性を維持するために搭載された旧規格で接続されてしまいます。特にMacの場合は、2.4GHz帯の11nは20MHz幅での通信になるため、最大216Mbpsで頭打ち。しかし、5GHz帯にするだけでも40MHz幅で通信できるようになり、450Mbpsと2倍以上にアップするのです。
5GHz帯のチャンネル割り当て
5GHz帯は合計340MHz幅の中で重複しないようにチャンネルが割り振られており、そもそも干渉しにくい設計です。
2.4GHz帯のチャンネル割り当て
2.4GHz帯は100MHz幅に14チャンネルも用意されていますが、重複せずに同時使用できるのはわずか3チャンネルです。