島幸太郎
株式会社エミライ取締役、OPPOデジタルジャパン株式会社ディレクター(プロジェクト執行・販売推進担当)。PCオーディオ分野の事業コンサルティングを請け負うほか、関連書籍を執筆。 普段は13インチMacBookプロ・レティナを愛用。
Macはとにかくスマート
PCオーディオの専門書籍の執筆経験があり、現在PCオーディオに関するコンサルティング、ライティングを行っている株式会社エミライの島幸太郎さん。まず島さんはMacにおけるサウンド面でのメリットを話してくれました。
「まずMac全体の話しをすると、OS Xに導入されている『コア・オーディオ(Core Audio)』という仕組みは強みの1つだと思います。コア・オーディオはOS Xにおいて、音声信号の入出力の制御などを司っている部分なのですが、何が優れているかというと、音楽データに対してユーザが意図しない改変をしないのです。つまり、音楽データがOS内部で処理される際に1ビットの変化もなく出力されるので、オーディオファンとしたら、大変信頼できる環境というわけです」
また、島さんはMac自体がUSBオーディオとの親和性がとても高いと話します。
「USB│DACやUSBスピーカといったオーディオ機器をコンピュータと接続して使う場合、通常コンピュータにドライバソフトをインストールする必要があります。しかし、OS Xでは『USBオーディオクラス2.0(USB Audio Class 2.0)』というドライバを標準でサポートしているため、別途ドライバをインストールする必要がないのです。とにかくそれぞれをつなげば音が出る、これはすごいアドバンテージだと思います。ウィンドウズの場合、このUSBオーディオクラス2.0は未サポートなので、USBオーディオ機器を接続しようと思うと、わざわざ対応するドライバをインストールしなくてはいけません」
Core Audioの仕組み
元々プロ用の音楽制作APIであるASIO(アジオ)をベースに作られたコア・オーディオは、複数のサービスで構成されています。音楽データは、まずオーディオファイルサービスに読み出され、オーディオユニットに受け渡されます。そうして生成されたデータがHAL(Hardware Abstraction Layer)とI/Oキットというフレームワークを通じて、外部のデバイスへデータを送出します。
USBオーディオとの親和性
USB-DACといったUSBオーディオ機器を使う際も、Macなら「つなぐだけ」で音が出ます。その親和性の高さは、コンピュータに苦手意識を持つオーディオファンでもスムースに使いこなせると島さんは話します。
MacBookならではの利点
では、デスクトップ型にはない、MacBookシリーズならではのメリットはどういったところにあるのでしょう。
「MacBookシリーズならでは強みについて、まず思いつくのはバッテリを搭載していることだと思います。というのも、オーディオファンの多くは電源品質にこだわるんですよ。それこそオーディオ用の電源を用意する方もいるくらいで、DC(直流)の電源をいかにノイズを少なくして出すかは1つのテーマになっているのですが、これをコンピュータ用のスイッチング電源に求めるのはとても難しいのが実情です。しかし、MacBookシリーズを使えば、時間の制約はあるにせよ、内蔵のバッテリがありますから。しかも、音楽聴くだけなので、基本的に何時間も持つので十分。加えて、そのバッテリのDCはすごくきれいですし、それによっていい音で聴くというのがとてもスマートに行えます。なのでMacBookにUSB-DACなどを接続して聴くときは、電源から外して聴くというこだわりがあるオーディオファンもいらっしゃいますね」
さらに、ボディの素材に採用されているアルミ筐体はオーディオ目線でも、魅力的に映るのだそうです。
「オーディオ業界ではアルミ筐体が大好きなメーカー/愛好家が多いんですよね。金属筐体は電磁シールド的な意味でも、振動のコントロール的な意味でも良いとされますが、特にアルミはオーディオに使い勝手の良い素材なので、MacBookのボディは魅力的なわけです。また、アルミボディはオーディオ機器とのデザイン的な相性も良く、オーディオルームに置いてあっても見栄えがするというのも大事なポイントになります。そのため、新規にオーディオ再生用にコンピュータを買おうとなったら、だいたいの方がMacを買う、というのが最近のトレンドになっていると思います」
最後にUSB-DACに接続して音楽データを聴いた場合、MacBookシリーズの中でも音の違いは出るのか聞いてみました。
「あくまでも個人の感想ということで聞いていただきたいですが、MacBookプロは音がいい機種だと思います。以前とある媒体の企画で、同じ音源、同じDAコンバータを使ってMac全機種を比較したことがあるのですが、聴くと予想以上に違うんですよね。筐体内のスペースの差が回路設計のマージンに影響するのかもしれませんが、おそらく電源系のノイズの乗りやすさを左右するのだろうと思います」
松本秀樹
株式会社PFUイメージビジネスグループ国内営業統括部長。同社の主力商品・ハッピーハッキングキーボード(Happy Hacking Keyboard)の開発から携わる。「MacBookユーザの皆さまにも、外付けとしてぜひ、HHKBをお試しいただきたいと思います」。【URL】https://www.pfu.fujitsu.com/hhkeyboard/
極限まで薄さを追求している
「妥協を許さない、上質のこだわり」をテーマにしたプロ向けのキーボードといえば、PFU社のハッピーハッキングキーボード(Happy Hacking Keyboard、以下HHKB)だ。そんなHHKBの開発当初からプロジェクトに関わっているPFUの松本秀樹さんに、MacBookのキーボードについて聞いてみました。
「MacBookシリーズのキーボードは、当社のHHKBと比べると、キーストロークの深さに違いはあるものの、同様に手首や指に力を入れなくても自然に入力できる感覚があります。たとえるなら、万年筆のように筆圧をかける必要がなく、さらさらと筆が進む感覚に似ていて、長時間使っても疲れない印象です。ただ、新型MacBookを始めとして、やはりキーストロークが浅いため、ユーザによってはある程度の慣れが必要かもしれません」
最後に、キーボードの中でアップルのこだわりを感じるポイントを教えていただきました。
「やはり新型MacBookで導入された、新規開発のバタフライ構造でしょうか。とても高品位な打感ですよね。パンタグラフ構造やシザー構造とも違い、1つの部品構造で極限まで薄くすることにこだわったのだと感じます。ボディ全体を薄くしたい、でもキーボードの品質も落としたくないという、薄さと美しさへの挑戦が、アップルならではのこだわりなのではと思います」