ソフトとアプリ
初代iPhoneが誕生したのは、今から12年前の2007年。もっとも初代は日本では販売されなかったので、日本デビューは第2世代のiPhone 3Gが発売された2008年となる。北京オリンピックが開催され、リーマン・ショックに世界が激震した年である。
ということは、今の高校生あるいはそれよりも若い世代にとって、スマホは物心がついた頃から、すでに生活の中にあった、ということになる。当然、「アプリ」という言葉にもごく自然に接していて、何のこだわりもないだろう。
しかしワタクシのようなオジサンはちょっと違う。アプリとは別に「ソフト」という名称を使うからだ。ここからはワタクシの勝手なイメージだが、ソフトとアプリの棲み分けは単純で、パソコンの世界ではもっぱらソフトを使い、スマホやタブレットなどの携帯端末ではアプリを使う。だが、OSはあくまでも「基本ソフト」であって、携帯端末のOSだからと言ってiOSを基本アプリとは言わない(よね?)。
表計算、文書作成などのオフィス業務ツールや、イラストレーター、フォトショップなどのクリエイティヴ系ツール、総じて高価格で多機能なものをソフトと呼ぶことが多く、逆にアプリには安価で程々の品質と機能といったイメージがある(千円のアプリは高いが、千円のソフトは安い)。
だが、そういうイメージも過去のものとなりつつあるようだ。最近ではパソコンの世界でもアプリを積極的に使う傾向にあるようだ(そもそも販売しているのがMac Soft StoreじゃなくMac App Storeだし)。それと同時に、ワタクシの線引きをラクラク超えてしまうような高機能な超アプリが現れている。今回取り上げた「Olli by Tinrocket」もそのひとつ。撮ったものを瞬時にイカした手描きイラスト風に加工することができる凄腕のカメラアプリだ。
勉強になります
このアプリの優れている点は、まず何と言っても結果が素晴らしい。どんなつまらない素材だって、それなりのイラスト風に仕上げてくれる。線の拾い方、ベタの使い方、省略の仕方なども、まるで人がやったかのように自然で味があり、絵を描くモノの端くれとしてはとても勉強になる。特に一部のフィルタは、黒ベタの効いたアメコミっぽいイラスト画像が作れるので、アメコミ好きのワタクシにはたまらない。
結果がライブで表示されるのもイイ。カメラが被写体を捉えた瞬間にフィルタのかかった画像がディスプレイに表示されるので、待つストレスがなく快適だし、単純に楽しい。フィルタの切り替えも指で画面をスワイプするだけで簡単に行える。もちろんフィルタが切り替わった瞬間に画像には加工が施されている。その真骨頂は、撮影と同時に手描きアニメが生み出されていく動画撮影だろう。オジサン世代には、80年代に大ヒットしたa-haの「Take On Me」のミュージックビデオの衝撃を思い起こさせる。あれが自分の手の中でできてしまうとは、モバイルコンピュータ技術もここまで来たかと、もはや感動的ですらあるのだ。いや、ホント。
それにしても「Olli」のようなデキるアプリが増えてくると、ワタクシの中のソフトとアプリの境界線がますます曖昧なものになっていく。結果、「スパゲティー」と「パスタ」、「ホットケーキ」と「パンケーキ」、「運動靴」と「スニーカー」のように、おそらくソフトもアプリに取って代わられる日が来るのだろう。昭和はホントに遠くなりにけり…ですネ。
おススメです
瞬時に写真を手描きイラスト風に変換してくれるカメラアプリ。仕上りがとても自然で、本当に手描きしたかのような、おしゃれでポップなイラスト画像が簡単に出来上がる。動画にも対応していて、手軽に手描き風アニメーションが作れるのにはビックリ。有料だが、間違いなくそれ以上に価値のあるアプリだ。