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Macintosh Plusのメカニカルキーボードと金属ボール搭載のマウス/今井隆の「Think Vintage.」

著者: 今井隆

Macintosh Plusのメカニカルキーボードと金属ボール搭載のマウス/今井隆の「Think Vintage.」

Macintoshの実用性を飛躍的に高め、本格普及の狼煙を上げた名機「Macintosh Plus」。これまで、モデルの詳細、ロジックボードのアーキテクチャ、そのほかコンポーネント、そして筆者の修理と改造歴について、連載「今井隆の『Think Vintage.」」で解説してきた。今回はMacitosh Plusのキーボードとマウスについて焦点を当てよう。

独特の操作フィーリングを持ったMacintosh Plusのキーボード

Macintosh Plusに付属していたキーボードは製品型番「M0110A」で、筆者のものは日本語配列(JIS配列)の「M0110A J」だ。製品の組み立ては米国で行われたが、キースイッチや基板にはアルプス電気(Alps Electric)の部品が使われており、日本製の部品を米国で組み立てて再び日本に輸出するという“逆輸入”製品となっていた。

ちなみにMacintosh 128Kや512Kのキーボードはテンキーレスだったが、Macintosh Plusのキーボードはテンキーやカーソルキーを備えたフルキーボードだ。

Macintosh Plusの付属品であるキーボードの底面には製品ラベルが貼られており、そこにはモデルナンバー「M0110A J」と、米国で製造されたことを示す「Made in U.S.A.」の印刷がある。その上には当時の社名であった「Apple Computer, Inc.」の刻印が刻まれている。
Macintosh Plusの付属品であるキーボードの底面には製品ラベルが貼られている。そこにはモデルナンバー「M0110A J」と、米国で製造されたことを示す「Made in U.S.A.」の印刷がある。その上には当時の社名であった「Apple Computer, Inc.」の刻印が刻まれている。

Macintosh Plusおよび初代であるMacintosh 128K、512Kのキーボードインターフェイスは独自設計で、接続用コネクタには電話線に使われる「RJ11」4ピンコネクタが採用されていた。その後のMacintosh SEおよびII以降の製品では、キーボードやマウスのインターフェイスがADB(Apple Desktop Bus)に統一された。

キーボードの後方には、Mac本体と接続するためのRJ11コネクタがあり、その横には接続先を示すコンパクトMacのアイコンがある。コネクタの左側にあるのは盗難防止のセキュリティ金具を挿入するためのロックホールが備わる。
キーボードの後方には、Mac本体と接続するためのRJ11コネクタがあり、その横には接続先を示すコンパクトMacのアイコンがある。コネクタの左側にあるのは、盗難防止のセキュリティ金具を挿入するためのロックホールだ。

筆者のMacintosh Plusのキーボードには、アルプス電気の「Alps SKCC Tall Cream」と呼ばれるクリーム色の軸のメカニカルキースイッチが採用されている。そのキースイッチがキーの数だけ基板上にハンダ付けされた、いわゆる「メカニカルキーボード」だ。

このタイプのキーボードは部品および製造のコストが高いことから、一度はメンブレン方式やパンタグラフ方式に置き換わっていたが、最近はゲーム用を中心にその優れた操作性が見直されつつある。またキートップの刻印には耐久性に優れた昇華印刷(Dye-sub)方式が採用されており、酷使してもキートップの印刷が消えることはなかった。

Macitosh Plusは基板の手前中央付近(スペースバー直下)には、Intelの8ビットワンチップマイコン「i8048」が搭載されていて、Plus本体にはシリアル通信でキー入力情報を送っている。ただし一般的なUART(非同期シリアル方式)ではなく、独自の同期シリアル方式になっている。
Macitosh Plusは基板の手前中央付近(スペースバー直下)には、Intelの8ビットワンチップマイコン「i8048」が搭載されていて、Plus本体にはシリアル通信でキー入力情報を送っている。ただし一般的なUART(非同期シリアル方式)ではなく、独自の同期シリアル方式になっている。




ずっしりと重いが操作性に優れたMacintosh Plusのマウス

Macintosh Plusに付属していたマウスは製品型番「M0100」で、日本製だ。おそらく筆者のものはミツミ電機(Mitsumi Electric)製と考えられる。

Plusのマウスは非常にシンプルで、クリックボタンはワンボタンのみ。最近のマウスのような光学式ではなく、底面のボールを転がしてその回転数から移動方向と移動距離をメカニカルに計測する方式だ。
Plusのマウスは非常にシンプルで、クリックボタンはワンボタンのみ。最近のマウスのような光学式ではなく、底面のボールを転がしてその回転数から移動方向と移動距離をメカニカルに計測する方式だ。

ミツミ電機はこの当時Appleのマウス製造におけるパートナー関係にあり、高品質で信頼性に優れたメカニズムが高く評価されていた。また、このマウスはPlusのキーボードを製造していたアルプス電気からも同一型番で供給されていた。

Plusのマウスの操作感を支えているのは、底面に取り付けられたマウスボールだ。直径は1インチ(約25.4mm)、重さ25〜35g。鋼鉄製の玉を芯材として灰色のウレタンゴムでコーティングしたもので、その回転をローラに伝えてロータリエンコーダを回すメカニカル方式のマウスとなっている。

マウスボールにはゴミやホコリが吸着しやすいため、ボールを取り外して清掃するための仕組みが取り入れられていた。ボールは丸洗いできるほか、ローラは無水エタノールを綿棒などにつけて清掃することが可能だ。

マウスの底面を見ると銘板シールがあり、そこにはモデルナンバーと生産国、シリアルナンバーの記載がある。中央下部に見えるのがマウスボールで、その上にメンテナンス時に取り外せるカバーがある。
マウスの底面を見ると銘板シールがあり、そこにはモデルナンバーと生産国、シリアルナンバーの記載がある。中央下部に見えるのがマウスボールで、その上にあるのがメンテナンス時に取り外せるカバーだ。
マウスボールのカバーを実際に外したところ。カバーを回転させて「L(Lock)」から「O(Open)」にすると、中のボールを取り出して清掃することができる。スムーズな操作性を維持するには、定期的な清掃が欠かせなかった。
マウスボールのカバーを実際に外したところ。カバーを回転させて「L(Lock)」から「O(Open)」にすると、中のボールを取り出して清掃することができる。スムースな操作性を維持するには、定期的な清掃が欠かせなかった。

Macintosh Plusのマウスを分解すると、その仕組みがわかりやすい。ボールハウジングの左にローラ軸が縦に配置され、下にはローラ軸が横に配置されている。これにより、ボールの縦横方向への移動を各ローラ軸の回転に変換しているのだ。

ローラ軸の端にはスリットが切られた円盤が取り付けられており、それをLED(発光体)と光学センサ(受光体)で挟むことで、横切ったスリットの数から移動量を計測する。さらに少し角度をずらした位置にもう1組のセンサを配置することで、ローラ軸がどちら側に回転したのかを判断する仕組みだ。

その下部にマイクロスイッチが配置されていて、マウスボタンのクリックを検出する。シングルボタンなのでマイクロスイッチが一個しかない。

基板上のICはコンパレータ(比較器)のみで、現在のマウスのようなワンチップマイコンは搭載されていない。Macintosh Plusまでのマウスは、マウスの動きを読み取るのはMac本体の役割だった。ADBマウスからはマウス自身が賢くなり、通信によって移動量や方向、クリックの有無を本体に伝えるようになった。

Macintosh Plusのマウス内部は極めてシンプルだ。このマウスではMotolora製のコンパレータIC「LM393N」が搭載されているだけで、マウスの移動やクリックを検出するのはMac本体の役割になっている。
Macintosh Plusのマウス内部は極めてシンプルだ。このマウスではMotolora製のコンパレータIC「LM393N」が搭載されているだけで、マウスの移動やクリックを検出するのはMac本体の役割になっている。

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著者プロフィール

今井隆

今井隆

IT機器の設計歴30年を越えるハードウェアエンジニア。1983年にリリースされたLisaの虜になり、ハードウェア解析にのめり込む。

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