修理情報の提供やツールの開発販売を手がける「iFixit」は9月23日、iPhone 17 Proの分解調査結果を公表した。ユニボディに包まれたその内部構造と、新たに採用された放熱テクノロジーを探る。
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Apple iPhone 17 Pro Max (256 GB):ProMotion を採用した6.9 インチディスプレイ、 A19 Pro チップ、iPhon…
リア面からの内部アクセスは不可能な構造に
iPhone 17 Proは、iPhone 7以来となるアルミニウム製のユニボディを採用している。ユニボディは1枚のアルミニウムプレートからCNCフライスなどを用いて目的の形状を削り出す製法で、継ぎ目のない一体構造によって高い堅牢性を特徴とする。
ユニボディは2008年10月リリースのMacBook Proで初めて採用され、その後ほかのMacやiPadなどに展開された。iPhone 17 Proのユニボディは切削加工の前に熱間鍛造を行うことで、強度としなやかさを向上している(参考記事)。
iFixitでは、まず最初にユニボディ背面の開口部を覆うガラスパネルを取り外している。ガラスパネルの裏側にはMagSafeの受電コイルとUWBアンテナ3基が設けられており、コネクタを介してロジックボードと接続されていた。ガラスパネルを外してもそのコネクタとバッテリの一部が見えるのみで、iPhoneの内部にはアクセスできない。バッテリ交換を含めたあらゆる内部パーツへのアクセスは、フロントのディスプレイパネルを外すしかないことがわかる。

Photo●iFixit

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とはいうものの従来のProシリーズでも、リアパネル側から内部部品に容易にアクセスできるのはiPhone 16 Proだけだった。iPhone 15 Proでもリアパネルを取り外すことはできたが、インナーパネルが邪魔をして内部パーツへのアクセス性は決して良いとはいえなかった。iPhone 14 Pro以前はリアガラスがサイドフレームに強力に接着されていて、リアガラスの交換は破壊的手段を必要とした。
iPhone 17 Proはディスプレイパネルを外すことで、ようやく内部へのアクセスが可能になる。

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グラファイトシートで覆われたインナーフレームは、14本ものトルクスビスでユニボディに固定されていた。インナーフレームを取り外すと、アルミニウムケースを備えたリチウムイオンバッテリがそのうら側に接着されており、インナーフレームはバッテリトレイとしての機能も備えていることが判明した(参考記事)。

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バッテリをインナーフレームに固定する方法として、iPhone Airでも確認された電気式剥離シートが用いられている(参考記事)。インナーフレームと電極の間に電流を流すことで、容易にバッテリとフレームを分離することができた。

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iPhone 17 Proの革新的な放熱機構に迫る
バッテリを取り外したインナーフレームには、グラファイトシートとともにベンパーチャンバーが取り付けられている。ベイパーチャンバーの周辺部はインナーフレームに溶接されており、Appleシリコンから発生した熱はインナーフレームを通じてユニボディへと導かれることが判明した。

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iFixitでは実際にiPhone 16 Pro MaxとiPhone 17 Pro Maxに高負荷を掛けた状態で、その表面温度をサーモグラフで計測した。その結果、両者の温度差が約4℃に達しただけでなく、iPhone 16 Pro Maxではサーマルスロットリング(発熱による障害や故障を防ぐための性能抑制機能)が発生したことを確認したという。
またサーモグラフからはiPhone 17 Pro Maxの表面温度がほぼ均一に分布しており、ベイパーチャンバーによる熱拡散設計が極めて有効に機能していることが見てとれる。

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さらにiFixitではベイパーチャンバーを分解し、その内部を顕微鏡で観察している。そこにはチャンバー内に整然と並ぶ突起(整流板)と、内部の片面に配置されたウィックの姿が鮮明に捉えられている。ベイパーチャンバーの動作原理は別の記事で解説しているが、この突起は蒸発(気化)した作動液をなめらかに周囲へと導く整流板としての機能に加えて、冷却部で液体に戻った作動液をウィックへと導く役割を兼ね備えている。

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iPhone 17 Proの心臓部、A19 Proを搭載するロジックボード
iPhone 17 Proのロジックボードは、iPhone Airと同様にカメラブロックの下、バッテリ上部に配置されている。従来のProシリーズのロジックボードは長らくバッテリ横に配置されていたが、今回のモデルチェンジを機会にロジックボードの配置と形状を大きく見直すことで、放熱設計の見直しとバッテリ容量の最大化を実現している。

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iPhone 17 Proのロジックボードには、心臓部である「A19 Pro」と新たに自社開発された無線通信チップ「N1」、そしてQualcommのSnapdragon X75 5Gモデムチップセットなどで構成されている。つまりiPhone 17 ProにはまだAppleオリジナルの5Gモデムチップ「C1X」は採用されていない。

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分解を行ったiFixitでは、新しいアルミニウム製のユニボディに対して強度面でのリスクを指摘している。アルミニウムは比較的軽量で放熱性に優れる反面、柔らかい素材のため傷が付きやすい。表面にはアルマイト(陽極酸化)処理によって優れた耐食性と耐摩耗性を獲得しているが、従来のステンレスやチタン合金に比べると耐摩耗性で劣る。
またアルマイト処理は平滑な平面部では均一に生成される一方で、鋭角部分では皮膜が均一に形成されにくく脆くなりやすい。このため平面部への傷には強い一方で、端面は皮膜が剥がれやすい欠点がある。iFixitでは特に鋭角なカメラバンプ頂点に着目し、そこにキーやコインが擦れることで皮膜が剥がれやすいと警告している。従来モデルではこの部分は強化ガラス製だっただけに、同じような扱いでも傷つく可能性が高い。iFixitは「すぐにケースなどで保護しないとカメラバンプが傷つく」と警告している。

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iPhone 17 Proの分解から革新的な冷却システムの全容が明らかになり、優れた放熱性能を持つアルミニウムユニボディがその効果を後押ししている。その一方でユニボディ構造によってリア面からの内部アクセス経路が絶たれ、メンテナンス性の観点からはiPhone Airや従来モデルには及ばない。この一見矛盾した課題をどのように解決していくのか、今後の進化に期待したいところだ。
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