2025年6月、Xのとあるポストをきっかけに話題を呼んだ「フィルラボ」。商業施設などに設置される自動販売機型のサービスで、iPhoneを投入すると自動でガラスフィルムを貼り付けてくれます。
さらに、その場でアップロードした写真をレイアウトしたオリジナルのiPhoneケースを作成できる自動販売機「MyCaseLabo」も登場し、こちらも注目を集めています。
フィルラボとMyCaseLaboを展開するのは、スポーツ用品や折りたたみ自転車を扱うグローバルコネクションです。中国で生まれたこのサービスを、どのように日本市場向けにカスタムし、展開しているのか、同社EC事業部 ITソリューション事業部 部長の庄子雄太氏に伺いました。
SNSでも話題に! 日本向けにカスタマイズされた、iPhoneの全自動保護フィルム貼付機「フィルラボ」
——まず、「フィルラボ」の概要について教えてください。
フィルラボは2024年9月から展開を始めた、iPhone用の全自動保護フィルム貼付機です。ショッピングモールや携帯ショップなど、全国の商業施設に設置しています。
iPhoneの画面にフィルムを貼ろうとすると、どうしても埃が入ってしまい、気泡が残ってしまうことがありますよね。そんなときフィルラボを使うと、気泡を残すことなく、ズレもない状態でガラスフィルムをぴったり貼り付けられるのです。iPhone XからiPhone 16eまで対応しています(iPhone SEの第1世代、iPhoneのminiシリーズを除く)。ガラスフィルムの硬度は9Hで、反射防止やのぞき見防止、高透明など、3種類から選べます。

——フィルラボが生まれた経緯を教えてください。
当社は開発メーカーではなく、日本仕様にサービスを展開する代理店や運営会社のような立ち位置です。開発元は中国の企業で、彼らがグローバルに展開する中で、日本市場を当社が担当しています。「フィルラボ」という名称も、弊社が日本展開用のサービス名として命名したものです。
もともと、当社の代表と開発企業の代表が知り合いで、日本展開について相談されたのがきっかけでした。当社はそれまで自販機事業を行っていなかったのですが、別事業の関係で商業施設とのパイプがあり、挑戦してみることにしたのです。ただ、開発元が作った「iPhone用の全自動保護フィルム貼付機能を持った自動販売機」をそのまま日本で展開するには、筐体のデザインやUIなどに課題がありました。そこで、この自販機を日本仕様にするところから始めています。
——中国仕様と日本仕様ではどのような点が異なるのでしょうか。
筐体は同じものですが、ラッピングのデザインは異なります。日本で展開するフィルラボは黒基調ですが、中国仕様だともっと派手な色合いです。また、タッチパネルの大型ディスプレイで操作するのですが、そのUIも大きく異なります。

——UIのデザインを御社で作成して開発元に要望を出し、実際のシステムへの反映は開発元が行うということでしょうか。
そうです。システム的に開発元で反映する必要があるものは、先方に依頼しています。一方、ラッピングデザインや日本の公式Webサイトの制作、設置場所のPOP、社内や設置していただく企業様向けの管理システムの構築などは、すべて当社の担当領域です。そのほか、カスタマーサポート対応、設置や在庫補充、メンテナンスなども、もちろん当社が担っています。
——開発元は中国企業ですが、日本展開に合わせてかなりの部分に御社が携わっておられるのですね。
はい。ラッピングやマーケティング、UIなど、当社の裁量で自由に展開しています。開発元は日本市場の知見を持っていないので、そこを当社が担当する形です。開発元からもそこは信頼していただいて、いろいろとこちらの要望に対応してくれています。
商業施設を中心に展開中。フィルラボの設置場所は、慎重かつ冷静に見極めて
——現在、iPhoneだけの対応ということですが、Androidには対応していないでしょうか。
現状、日本での展開はiPhoneだけに絞っています。Androidへの対応も一部可能ですが、日本でもポピュラーなブランドで利用できるのはGalaxyくらい。それ以外は、ガラスフィルムも含め、新たな開発や検証が必要です。そこにリソースを割くのであれば、iPhoneだけにしたほうがわかりやすいという判断です。
Androidスマホは画面サイズや形状などもモデルごとにばらばらで、それらすべてに対応できるのか、という問題も出てきますから。とはいえ、ご要望も多くいただいているので、Android対応についても引き続き検討させていただきます。
——日本では、御社が持つパイプでショッピングモールなどに展開されているそうですね。そのパイプとはどのようなものなのでしょう。
当社はもともと、スポーツ用品、特に折りたたみ自転車に強みを持つ会社です。ほかにも、ECでキックスクーターやゴルフ、アウトドアなどの商材も取り扱っています。現在、秋葉原に実店舗の自転車店を構えているのですが、その前は百貨店などの商業施設にも店舗を出していたんです。そのパイプを活かせば、広く展開できるのではと考えました。
現在フィルラボは、エディオンなんば、フロム中武、イオン各店、アピタ各店、オプシアミスミ、川崎アゼリア、COMBOX310、ニットーモール熊谷、新宿マルイ、ベストスポーツ(当社店舗)、楽天モバイルなどで展開しています。
——商業施設のテナントや空きスペースに設置するイメージですか。
はい。ありがたいことに店舗からの引き合いもあり、「空きスペースを有効活用したい」とご相談をいただくことも出てきています。ただ、場所の見極めが重要なので、ビジネスとして成立するかどうかを現地に行って確認するようにしています。そういった理由もあり、ここまでの展開は比較的ゆっくりとしています。
——どちらかといえば、地方から展開されている印象がありますね。
都心にも展開したいですし、2024年9月にフィルラボを発表したときは都内の商業施設からも反響をいただきました。ただ、実際に場所を作れるか、また条件面などの問題から、都心での展開は慎重に行っている状況です。その中で、新宿マルイさんは以前からお付き合いがあったこともあり、地下1階の連絡通路という良い場所に早い段階から設置していただきました。
SNSのバズで運営会社も驚いた。フィルラボのポテンシャル。新宿マルイでも大盛況
——ユーザの反響や売上などの成果はいかがでしょうか。
おかげさまで上々の成果が出ています。たとえば新宿マルイさんのフィルラボでは、月に1500以上の利用実績があり、予想以上の手応えを感じています。
——XなどのSNSでもバズっていましたね。
「自動販売機マニア(石田健三郎)」さんのポストがバズって、ものすごい反響になりました。もともと話題性のあるサービスでしたが、「こんなにも潜在需要があったのか」と驚きましたね。
——無人ということで、トラブルが起きることはないのでしょうか。
特殊な条件が重なれば、起きる可能性はゼロではありません。ただ、さまざまな状況を想定して対策をとっています。たとえば、停電時は補助電源が作動してiPhoneが閉じ込められるリスクを回避していますし、機械的なエラーが発生したときも自動でiPhoneを排出するようになっています。また場合によっては遠隔での操作も可能です。幸い、大きな問題は今のところ起きていません。

オリジナルのiPhoneケースを3分で。「MyCaseLabo」の展開も進行中
——2025年6月からは、同じく自動販売機型の「MyCaseLabo」も展開をスタートされています。
MyCaseLaboも、フィルラボと同じ企業が開発したサービスです。その場で写真をアップロードすると、筐体内のプリンタでiPhoneケースに印刷されます。
対応モデルはiPhone 11からiPhone 16シリーズまでです(iPhone SE、iPhone 16e、各miniシリーズは除く)。3分でオリジナルのiPhoneケースを作れるサービスとして、現在商業施設を中心に展開を進めています。

——フィルラボの成功が、MyCaseLaboの日本市場への展開のきっかけになったのでしょうか。
そうですね。フィルラボの展開から3カ月後くらいに、中国企業から「こういうものも開発している」という案内がありました。それがMyCaseLaboです。
——MyCaseLaboの場合、著作権的に問題ある画像を使用するユーザが出てくる懸念はありませんか。
著作権を侵害したり、公序良俗に違反するものはアップしないよう、筐体に注意書きを貼っています。また、実行前に著作権に関する同意ボタンを押す必要があるなど、対策を講じています。


MyCaseLaboはインバウンド客にも好評。商業施設以外への展開も視野
——MyCaseLaboも、続々と導入が進んでいるようですね。
はい。ビックカメラ有楽町店やアピタ稲沢店など、さまざまな商業施設に導入いただいています。すでにフィルラボを導入いただいている店舗はもちろん、MyCaseLaboだけを導入いただくケースも多いです。
——フィルラボとMyCaseLaboのターゲット層は異なるのでしょうか。
ユーザ層は違いますね。フィルラボは実用的な目的で利用される方が多いのに対し、MyCaseLaboは「こんなのがあるんだ」と興味を持って立ち寄っていただくことが多いです。思い出の写真をその場でケースにできるからか、観光客の方の利用が多いのも特徴ですね。インバウンド向けに多言語対応もしています。
——フィルラボとMyCaseLaboの今後の展開について教えてください。
フィルラボに関しては、このまま展開数を増やしていきたいと思っています。2026年末までに数百台、いずれは1000台くらいまで増やせると考えています。MyCaseLaboについては、商業施設以外に観光地やイベント会場などでの展開も検討中です。
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著者プロフィール
山田井ユウキ
2001年より「マルコ」名義で趣味のテキストサイトを運営しているうちに、いつのまにか書くことが仕事になっていた“テキサイライター”。好きなものはワインとカメラとBL。







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