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富士フイルム「X half」レビュー/懐かしさと革新性が融合した“現代版ハーフサイズカメラ”の魅力

著者: 松山茂

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富士フイルム「X half」レビュー/懐かしさと革新性が融合した“現代版ハーフサイズカメラ”の魅力

フィルム時代に35mmフィルムを縦に半分使うことで撮影枚数を倍にする工夫から生まれた「ハーフサイズカメラ」。その発想を現代に蘇らせたのが富士フイルムの「X half」です。

このカメラは、縦構図に最適化された設計や、撮影後に“デジタル現像”しないと写真が見られない「フィルムカメラモード」を備えるなど、懐かしさと新しさが融合した1台です。今回は「X half」のファーストインプレッションをお届けしましょう。

アナログ要素を盛り込んだ、クラシックなデザインがたまらない!

「X half」を手にした瞬間、まず感じたのはクラシックなデザインの魅力です。「あぁ、やられたな」と思わずにはいられませんでした。以前紹介した「instax WIDE Evo」もそうですが、最近の富士フイルムは私のような“カメラ老人会”に属する人々の心を射抜く製品を次々と送り出してきます。

「X half」は、昔のハーフサイズカメラを現代に持ち込んだような懐かしさを感じさせるボディに、縦向きの1インチセンサを搭載し、デジタルで“古のハーフ版”を再現しています。

一方で、スマートフォンで撮ることが当たり前のイマドキの人たちには、普通にカメラを構えるだけで3:4の縦位置で写真や動画が撮れるという撮影スタイルを提供しています。このように、異なる“2つの層”に向けて登場したカメラが今回の「X half」と言えるでしょう。

背面は静止画と動画の切替スイッチと再生ボタンの2つだけで、デジタルカメラにありがちな複雑さがなくスッキリとした印象です。液晶モニタも縦長です、左横にはサブモニタがあり、どちらもタッチパネル式で各種操作に使います。



レンズと操作性にもこだわりが詰まってる!


また、レンズの焦点距離は、同社のレンズ付きフィルム「写ルンです」と同じ32mm相当で、フィルムカメラの楽しさに目覚めた人たちが「X half」のファインダーを覗いたとき、同じ画角で違和感なく使えるように設計されています。

古風なノブが付いた絞りリングや、ローレット加工を施したフォーカスリングがなんともエモい雰囲気を醸し出しています。レンズは焦点距離10.8mmのフジノン単焦点レンズ(35mm判換算で32mm相当)で、5群6枚(非球面3枚)という構成も申し分ありません。


オート撮影だけでなくマニュアル撮影も可能で、絞りやフォーカスは実際に回転するリングで操作できます。各所にアナログ要素を取り入れ、見た目のレトロさだけでなく、構造そのものにも“当時らしさ”を感じます。

露出補正ダイヤルの中心にはシャッターボタンがあり、電源レバーも同軸上に配置されています。電源をオンにすると、フィルムの巻き上げレバーに似たフレームレバーが出現し、カメラ本体を保持するグリップとしても、2in1画像の作成やフィルムモードでの撮影にも使います。
底部には三脚用ねじ穴も完備。きちんとレンズの光軸中心に配置してあります。バッテリカバーを開けると内部にはバッテリ収納部分とメモリカードスロットを備えます。
左側面にはフラッシュスイッチと端子カバーが並んでいます。端子カバーの中にはUSB-Cポートを搭載し、バッテリの充電やPCとのデータ通信、付属のアダプタを介してヘッドフォンとの接続なども行えます。
上面のトップカバーにはマイク穴とコールドシューがあります。コールドシューを使えば小型ライトなど撮影用アクセサリも装着できます。

機能はイマドキのデジタルカメラと一緒! 液晶モニタとサブ液晶モニタでタッチして操作する!

「X half」は、見た目はレトロながら、機能は現代のデジタルカメラと遜色ありません。

露出制御はプログラムAE、絞り優先AE、シャッタースピード優先AE、マニュアル露出の4種類を搭載し、シャッタースピードは最高1/2000秒。絞りは3枚羽根で、F2.8からF11の1EVステップ刻み。オートフォーカスはシングルとコンティニュアスのコントラストAFに対応し、顔検出と瞳AFもサポートしています。

手ぶれ補正機能はありませんが、静止画や動画の切り替えは物理ボタンで行い、そのほかの操作や設定の変更はタッチパネルで行います。

各種設定や機能の切り替えはすべて液晶モニタのスワイプやタッチ操作で行います。特にサブモニタの表示が昔のカメラの裏蓋にあったパトローネの確認窓とそっくりなんです。単に昔のデザインを取り入れただけでなく、意図的に役割を分けているこのUIには、いろいろな意味で感心しました。

特にサブ液晶モニタを使ったフィルムシミュレーションやフィルタの切り替えは「X half」の大きな特徴です。フィルムシミュレーションは13種類あり、「PROVIA」や「Velvia」など懐かしい名前が揃っています。

また、26種類のフィルタも選べ、特定の色だけを残して他をモノクロにする「パートカラー」や、褪色した写真を再現する「期限切れのフィルム」など、楽しみ方が広がります。

「X half」で使えるフィルムシミュレーションは全部で13種類。「PROVIA」や「Velvia」など富士フイルムのフィルムを愛用していた人には懐かしい名前でしょう。
「PROVIA(スタンダード)」や「CLASSIC Neg.(クラシックネガ)」で撮影したカットです。愛用していたフィルムを選んでもよし、用途やテーマに応じて使い分けるのもアリです。
「ACROS STD」、「SEPIA(セピア)」で撮影したカットです。

また、フィルタも下記26種類の中から選べます。

アドバンストフィルター

トイカメラ/ミニチュア/ポップカラー/ハイキー/ローキー/ダイナミックトーン/ソフトフォーカス/パートカラー(レッド)/パートカラー(オレンジ)/パートカラー(イエロー)/パートカラー(グリーン)/パートカラー(ブルー)/パートカラー(パープル)/ライトリーク/ハレーション/期限切れフィルム(グリーン)/期限切れフィルム(レッド)/期限切れフィルム(ニュートラル)/キャンバス/レトロ/ビネット/ぼかし/魚眼/色ずれ/ミラー/二重露光

トイカメラやミニチュアなど、フィルムシミュレーションとはまた違った効果を楽しんでみましょう。
特定の色だけ残して他はモノクロにする「パートカラー」も使えます。褪色した写真を再現できる「期限切れのフィルム」はフィルムメーカーだった富士フイルムならではのアイデアでしょう。

また、DCF(Ver.2.0準拠)、JPEG(Exif Ver.2.31)の静止画だけでなく、MPEG-4 AVC/H.264、リニアPCM ステレオ(16bit/48KHzサンプリング)に対応したMOV方式と、MPEG-4 AVC/H.264、AACのMP4方式での動画撮影にも対応しているので動画コンテンツの制作にも使えます。


縦構図2枚を並べて仕上げる“ハーフサイズ”ならではの楽しみ方

「X half」には、縦構図の写真を2コマ並べて1枚の写真として楽しむ「2in1」機能も備わっています。同じテーマや連想でつながる2枚のカットを組み合わせて、1枚の作品として仕上げることができます。

操作は簡単で、写真を撮ったあとにフレーム切り替えレバーを引くだけで完成します。左右の写真を入れ替えたり、境界線の色やサイズも変更可能です。

さらに、撮影した写真や動画は専用アプリ「X half」を使ってスマホと接続し、画像を転送することができます。アプリ上で「2in1」に仕上げることも可能で、単に2枚の写真を並べて1つにまとめるだけではなく、複数の写真を使って表現する「組み写真」としての新鮮な体験を提供します。

シャッターを切ったらフィルムを巻き上げるようにフレーム切り替えレバーを引いて次のカットを撮影します。これだけで「2in1」の作品が完成します。液晶モニタに「2in1」ガイドが表示されてインジケーターランプが点灯するので、続いて写真を撮れば2枚の写真を1つにまとめてくれます。
左右の写真を入れ替えたり境界線の色やサイズも変更可能。写真だけでなく動画同士を組み合わせたり、写真と動画を1つにすることもできます。
専用アプリ「X half」を使って、アプリ上で「2in1」に仕上げることもできます。撮影時に「2in1」にしなくても、後からアプリで組み合わせることも可能です。

フィルムカメラの撮影体験を再現する「フィルムカメラモード」で“撮る楽しみ”を再発見!

本来、写真を撮るという行為は、カメラにフィルムをセット、ファインダーで被写体をとらえてシャッターを切る、フィルムを巻き上げて次の写真を撮る、という操作を繰り返すことでした。撮ったらそれで終わりではありません。フィルムを現像するまでは、どんな写真が撮れていたかわかりませんでした。

それがデジタル化してからは、撮った直後に結果がプレビューできるし、上手く撮れていなかったらその場で撮り直しも可能になったのです。フィルムカメラ時代より遥かに便利になりましたが、“写真を撮る”楽しさがなくなったと感じていたのは私だけでしょうか。

こうした写真のワクワク感を「X half」の「フィルムカメラモード」なら体験できます。

撮影枚数を設定し、シャッターボタンを押して写真を撮り、フィルムを巻き上げるようにフレーム切り替えレバーを引いて次の写真を撮ります。このモードでは、撮った写真をその場でプレビューできず、撮影が終わるまで結果を確認できません。これが本来の写真を撮るという行為を思い出させてくれます。

「フィルムカメラモード」では、初期設定で撮影枚数、つまりフィルムの枚数を36/54/72から選んで[始める]をタップしたら、あとは写真を撮るだけです。液晶モニタを使ってプレビューすることもできないので、構図も光学ファインダーを覗いて確認するしかありません。撮った写真をその場でプレビューすることもできない徹底ぶりです。


撮り終えた写真もスマホと接続してフィルム現像を済ませないと、どんな写真が撮れたか確認できません。デジタル時代のカメラしか知らない人は、なんて面倒なと思われるかもしれませんが、これが本来の“写真を撮る”ということだったのです。


個人的には、この「フィルムカメラモード」こそが「X half」の存在意義だと感じました。ファインダーで被写体を捉えてシャッターを切る、そんな本来の写真の面白さを体験してみたいのなら、迷わず「X half」を手に取るべきです。

“デジタル現像”するには、撮影後に「X half」アプリを開き、撮影に使ったフィルムを選択して[フィルム取得]をタップします。
するとフィルムの現在処理がスタートします。
現像前のコマはカラーネガフィルムのようなオレンジ色でマスクされていますが、現像するとポジフィルムのように撮った写真と同じような表示になります。
すべてのコマの現像処理が完了するとフィルム画像は取り込み完了となります。
取り込まれたフィルムは「X half」アプリのアルバムに格納されます。
10コマごとにフィルムをカットして並べたコンタクトシートも同様にアルバムに格納されます。
普通に撮影した写真は「X half」アプリの「シングルアルバム」や「2in1アルバム」に取り込まれますが、「フィルムカメラモード」で撮影した写真は「フィルムアルバム」からしか参照できません。
フィルムアルバムに並んでいるフィルムをタップするか[すべてを見る]からフィルムを選ぶと、そのフィルムに写っている写真がプレビューできます。
アプリのデザインもフィルム調で可愛らしく、使い勝手も良好です。

果たしてX halfは誰のためのカメラなのか? 使って気になった点は?

短期間ですがX halfを使ってみて感じたことを挙げてみましょう。

まず、サイズや重量ですが、105.8(W)×64.3(H)×45.8(D)mmという大きさはまさにコンパクトサイズ。気軽に持ち歩くにはちょうどいい大きさです。バッテリとメモリーカード含む重量も約240gと軽量ですが、私的にはちょっと軽すぎる感がありました。

手ぶれ補正の機能がないので、ある程度の重さがないと構えていてブレが生じてしまいます。クラシックカメラを思わせるデザインも、実際に手に取ったときに軽すぎると拍子抜けしてしまいます。この手のカメラには多少の重厚感は必要です。付属のレンズキャップもゴムではなくメタルか、せめてボディと同じ金属感のある樹脂製にして欲しかったというのが正直な感想です。

一方で、操作系のボタンが最小限なのは高評価です。カメラ背面にゴチャゴチャと並んだボタンが個人的には嫌いなので、「X half」のシンプルな背面は大変気に入りました。私の撮影スタイルは絞り優先のマニュアル撮影が基本なのですが、「X half」なら絞りやフォーカスの変更もリングを回すという直感的な操作で行えます。

さらに「フィルムカメラモード」を使えば、巻き上げてシャッターを切るという動作もフィルムカメラと同じ感覚で行えます。だからこそフレーム切り替えレバーにはラチェット感が欲しかったですね。

「フィルムカメラモード」ですが、切り替える際の画面に“フィルムカメラモード中に、SDカードや電池を抜くと、モードは強制終了します”とあったので電源を切っても維持されると思っていたのですが、一定時間何も操作せずにスリープしたり、電源レバーでオフするとフィルムカメラモードが終了してしまいます。

その都度、フィルムカメラモードに切り替えるため、撮影枚数に達していないフィルムがいくつもできてしまいました。私の操作に間違いがあったのかもしれませんが、フラッシュスイッチのようにフィルムカメラモードも物理的なスイッチでオンオフできれば、さらに操作性がよくなるような気がします。

著者プロフィール

松山茂

松山茂

東京の下町・谷中を拠点として日々カメラと猫を愛でながら暮らすフリーライター。MacやiPhone、iPadを初代モデルから使ってきたのが自慢。

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