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「iPhoneカメラの最大の強みは機動力だと思います」/Shot on iPhone 12に選出されたクリエイター・いくちかさんがiPhoneで撮る理由

著者: 小平淳一

「iPhoneカメラの最大の強みは機動力だと思います」/Shot on iPhone 12に選出されたクリエイター・いくちかさんがiPhoneで撮る理由

▶︎教えてくれたのは…いくちかさん

撮影した写真が、Apple「Shot on iPhone 12」に選出されたクリエイター。広告動画や個人向け出張撮影サービスを展開する。

Instagram

いくちかさんのInstagram:@a2.iku

いくちかさんの出張撮影サービス用Instagram:@douga_nikki

いくちかさんは、映像作品の企画構成や撮影、編集まで手掛けるクリエイター。2021年、いくちかさんが撮影した写真がAppleに見出されて、iPhoneで撮影した美しい写真を取り上げる「Shot on iPhone 12」に選出されました。ここでは、iPhoneを使って写真を撮るメリットと、撮影時のコツを聞いてみました。

構図への集中と機動力

──まず、iPhoneのカメラと一眼レフの違いはどんなところにあると思いますか?

iPhoneは一眼レフに比べてボケにくいのですが、これはメリットでもデメリットでもありますね。一眼レフの場合は絞りを変えてボケ加減を柔軟にコントロールできますが、撮影時に気を配る要素が増えてきます。しかしiPhoneなら、複雑なことを考えずに構図に集中できるのがメリットだと思います。

──iPhoneにも背景をぼかす「ポートレートモード」という機能がありますが、いくちかさんの写真ではあまり使われていないようですね。

「ポートレートモード」はソフト側でボケ味を加える機能なので、個人的には被写体の認識機能がもう一歩進化してほしいと感じていて。手軽に使えて面白い機能だと思いますが、僕はあまり使いません。

──それ以外にもiPhoneの強みはありますか?

最近のiPhoneは光学式手ぶれ補正を搭載しているのもメリットで、多くのシーンで三脚を使わなくてもブレのない写真が撮れるようになりました。あとは撮りたいときにすぐ撮影を始められる機動力の高さがiPhoneの最大の強みだと思います。僕は旅行するのが趣味なんですが、「Shot on iPhone 12」に選ばれた橋の写真も、旅行中にたまたま通りがかった橋の奥行き感が魅力的に感じて何気なく撮影したものなんです。

2021年、Appleの「Shot on iPhone 12」に選出された写真。16枚の作品が選出された中で、日本のクリエイターとしてはいくちかさんの写真2枚だけが選ばれました。

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アクセサリは使わない

──では、iPhoneで撮影する機会は増えましたか?

今は仕事でもプライベートでも、動画も写真もほとんどiPhoneで撮っています。カメラバッグに一眼レフやレンズを入れて持ち運ぶ機会はめっきり減りましたね。

──iPhoneでの撮影時にアクセサリは使いますか?

特別なものは何も使っていません。その場の光を活かしたいのでストロボなどのライト類も使いませんし、手ぶれ補正が頼りになるので三脚も持ち歩かない場合が多くて。本当に、iPhoneだけをポケットに入れている感じですね。

──iPhoneだけでも十分美しい写真を撮れるということですよね。とても勇気づけられる言葉です。使っているアプリも標準の「カメラ」ですか?

以前はサードパーティ製のカメラアプリも試していましたが、今は標準の「カメラ」アプリだけです。最近は特に、標準のアプリでも十分きれいな写真が撮れると思います。

──では、カメラアプリの設定や機能で工夫していることはありますか?

撮影後に色味を補正するときに色が劣化しにくくなるので、記録フォーマットを「Apple ProRAW」に設定しています。Appleに取り上げられた橋の写真も、RAW形式で撮ってあとから色を補正していて、RAWのおかげで朝の太陽光によい感じに色が乗ったんです。

奥行き感を意識する

──肝心の構図については、何かコツがあるのでしょうか?

奥行き感や立体感を意識するだけで、写真の仕上がりはずいぶん変わると思います。たとえば橋の欄干があったら、それをどれだけ長く見せられるか意識して撮影してみると、立体感が出てダイナミックな写真を撮れると思います。

手前から左奥に向かって、小道が斜めの線を描くような構図で撮影。奥行き感が強調されて目を惹く作品になったほか、ふわりとジャンプした一瞬を捉えたことで躍動感や元気な印象も感じられます。

──いくちかさんの写真を見てみると、たしかに奥行き感のあるものが多いですね。広角カメラで撮られている写真も目立ちますが、それも奥行き感の表現に影響している気がします。

超広角カメラを使うと、広々とした画角で遠近感のある写真を撮影できます。いくちかさんは低い位置で上下が逆さになるようにiPhoneを持ち、花びらをふわっと散らした瞬間に撮影。いつもとはひと味違う、印象的な写真を狙えます。

iPhoneのProモデルには、超広角、広角、望遠と3つのレンズがありますが、僕は超広角カメラで撮ることが圧倒的に多いです。超広角だとひと味違った印象の写真が手軽に撮れるので、一度使ってみるとそこからiPhoneを使った撮影の魅力に気づく方もいると思います。

iPhoneを逆さに構えて広角カメラで撮影。今までの写真を見てもわかるように、上下逆にiPhoneを構えるというテクニックを覚えておくだけで構図の幅が広がります。

──ほかにも、構図の引き出しを増やすコツはありますか?

SNSなどで写真をたくさん見ると、何気なく撮影するときに自然とよい構図をイメージしやすくなると思います。また、気に入った写真があったら「どうしてこんなに立体感のある写真を撮れたんだろう」と分析して、自分の中に落とし込むことも大切だと思います。この経験を重ねていくことが、撮影の引き出しを増やすことにつながるのではないでしょうか。

親子が立っている足元にiPhoneを置いて撮影。Apple Watchがあれば構図を確認しながらリモートでシャッターを切ることができ、撮影タイミングを逃しにくいです。

著者プロフィール

小平淳一

小平淳一

Apple製品を愛するフリーランスの編集者&ジャーナリスト。主な仕事に「Mac Fan」「Web Desinging」「集英社オンライン」「PC Watch」の執筆と編集、企業販促物のコピーライティングなど。ときどき絵描きも。Webの制作・運用も担う。

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