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デザインも画も懐かしい“エモカメラ”「PIENI 8」レビュー。おもちゃみたい、だからいい!

著者: 小平淳一

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デザインも画も懐かしい“エモカメラ”「PIENI 8」レビュー。おもちゃみたい、だからいい!

PIENI 8
【発売】ケンコー・トキナー
【価格】オープンプライス
【実売価格】8500円(編集部調べ)
【サイズ】76(W)×77(H)×23(D)mm
【重量】約32g(microSDカード、付属品除く)
【主なスペック】イメージセンサ:1/9型CMOS/有効画素数:122万画素/レンズ:f=1.8mmF2.8/撮影距離:標準:約0.3m~∞/静止画サイズ:1280×960ピクセル/動画サイズ:640×480ピクセル(12fps)/入出力ポート:USB-Cポート
【URL】https://www.kenko-tokina.co.jp/
【製品貸与】ケンコー・トキナー

ノスタルジックなデザインがかわいいカメラ

本製品のPR動画に偶然巡り合ったとき、まるでコマ撮りのようなカクカクとした映像に懐かしさを覚えました。「このカメラで身近なものを撮影してみたい」。そんな興味が湧き上がり、製品を借りて実際に検証してみることにしました。

手元に届いた製品は、手のひらにすっぽり収まるサイズ感で驚くほどの軽さ。スペック上は32gとされていますが、感覚的にはマッチ箱を持ったくらいです。見た目は、まるで駄菓子屋で見かけるプラスチック製のおもちゃのような仕上がり。側面にはリールを巻き取るクランクのようなデザインが施されていますが、これも飾りで動かすことはできません。トイカメラですがちょっとした満足感のある遊び心のあるデザインです。

物理ボタンが2つだけのシンプルさ
搭載されているボタンは2つだけ。フォーカスロックや露出といった設定は一切なく、ただボタンを押して撮影するというシンプルさです。

撮影してみると、製品の割り切りの良さをいっそう実感しました。本体のボタンは、電源ボタンと動画/静止画モードの切り替えボタンの2つだけ。シャッターボタンは電源ボタンと兼用です。

本体上部にはのぞき窓がありますが、実際に撮影される画角とは大きく異なり、正確な構図を把握することはできません。また、液晶ディスプレイもないため、どのような写真や動画が撮れたのかは、家に帰ってMacにデータを読み込むまでわかりません。しかし、この「わからない」という仕様もまた、本製品の醍醐味といっていいでしょう。

なお、撮影したデータはマイクロSDカードに記録されますが、本体下部にあるUSB-Cポートを使ってMacにつなげば、ダイレクトにデータを転送することが可能です。

粗い画質が逆にポイント。日常を彩る魔法がそこにある

動画は640×480ピクセルの12fps。滑らかとはいえないこのコマ数は、私が30年ほど前に大学の映画研究部で使っていた8ミリフィルムカメラを思い出させてくれました。

写真もレトロ感満載です。スペック上は1280×960ピクセルですが、実際の見た目はそれよりはるかに粗く、320×240ピクセル程度に感じられます。暗い部分はつぶれ、明るい部分は白飛びし、JPEG画像を高圧縮した際のブロックノイズも目立ちます。しかし、この“粗さ”こそが、この製品の絶対的な魅力といえるのです。2000年ごろのカメラ付き携帯や初期のプリントシール機(いわゆるプリクラ)を彷彿とさせる画質は、ノスタルジックな気分を一気に盛り上げてくれます。

この製品は、撮影した瞬間から「懐かしさ」を上乗せする不思議な力を持っています。昼間撮影した写真を夜に見返しただけで、まるでずいぶん昔の思い出のように感じられるのです。このタイムマシンのような特性は、私と同じ50代前後の人ならきっと共感していただけるでしょう。

このカメラでは、何気ない日常の風景を撮るのがおすすめだと思います。普段は意識することのない風景が、かけがえのないものだと気づかせてくれる、そんな魔法を秘めています。ずっとポケットに入れて持ち歩きたくなる、愛着の湧く製品だと感じました。

唯一無二の“いい粗さ”
解像度が低くて、白飛びや黒つぶれも激しく、さらに動画は12fpsでコマ撮りのような粗さ。でもそれが唯一無二の味を出しています。

※この記事は『Mac Fan』2025年3月号に掲載されたものです。

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著者プロフィール

小平淳一

小平淳一

Apple製品を愛するフリーランスの編集者&ジャーナリスト。主な仕事に「Mac Fan」「Web Desinging」「集英社オンライン」「PC Watch」の執筆と編集、企業販促物のコピーライティングなど。ときどき絵描きも。Webの制作・運用も担う。

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