略語も俗語の翻訳もOK!
ドイツで誕生した翻訳ソフト「DeepL翻訳(以下、DeepL)」は、筆者の仕事に欠かせないツールのひとつです。日本語、英語、中国語など全31言語の相互翻訳に対応しており、既存の翻訳ツールに比べて翻訳元の文章の要点や文脈を抑えながら自然に意訳できるのが強みです。たとえば「バイト(アルバイト)」「シネコン(シネマコンプレックス)」のような和製英語の略語や、「ワンチャン」「とりま」などの比較的新しい俗語も、文脈を読み解きながら適切に翻訳してくれます。

DeepLは、人間の脳の仕組みを模した機械学習モデル「ニューラルネットワーク」にデータを読み込ませるAI(人工知能)技術を採用した翻訳ツールです。大小さまざまなデベロッパがこのようなツールの独自開発を進めているなか、DeepLを選ぶメリットはmacOSに最適化されたソフトを用意していること。多くのタスクをバックグラウンドで実行でき、必要なときにメニューバーから同ソフトにアクセスしたり、ショートカットキーを使って呼び出せたりと、頻繁に使いたくなる要素が満載です。


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翻訳アプリを仕事で役立てるテクニック
コロナ禍により、筆者は海外にいる方とビデオ会議ツールで会話する頻度が増え、それに伴ってDeepLを使う機会も多くなりました。たとえば英語話者に取材する場合、取材中はiPhoneの自動文字起こしアプリを使って会話をテキスト化し、おおよその意味を確かめています。そして、取材後にDeepLに英語の文章を入力して、より正確な日本語訳を確認することで、内容を深く理解しようと努めています。


また、自動翻訳したあとの完成度を確かめるために“再翻訳”ができるので、外国語でメールを書くのも苦ではなくなりました。再翻訳とは、たとえば日本語で書いたメールを同ソフトで外国語に翻訳したあと、再度「外国語→日本語」に翻訳することで、意味の伝わらない箇所がないかを日本語ベースで確認すること。意味がきちんと伝わるかダブルチェックすることで、こちらの意図をより正確に伝えられます。
これらの機能は無料でも利用できますが、一度に翻訳できるのは3000字が上限です。また、Word、PowerPoint、PDF形式のファイル翻訳もサポートしていますが、翻訳できるのは月に3ファイルに限定されるほか、翻訳後のファイルを編集することはできません。これ以上の文字数/ファイル数を翻訳したい場合、公式Webサイト上でサブスクリプション「DeepL Pro」に登録する必要があります。

有料版では一度に翻訳できる文字数の上限がなくなるほか、文書ファイルの翻訳上限が増え、これを編集することも可能です。これ以外にも、翻訳したテキストをソフト側で保存しない強固なセキュリティ機能、固有名詞や専門用語を登録できる用語集など、最適化が図られた機能の数々を利用できます。
なお、英語での30分間の会話は2万字前後のテキストになる場合が多いです。無料版でも6〜7回に分ければ翻訳できますが、ファイルそのものを翻訳する機会が多い方は有料版を選ぶのがベターでしょう。翻訳するシーンを一度整理して、プランを無駄なく選びましょう。
Apple純正ソフトも見逃せない!
外国語のWebページをサッと翻訳して概要をたしかめたいときには、純正ブラウザ「Safari」を活用するケースも多いです。翻訳に対応したWebページを「Safari」で開いた場合、スマート検索フィールド(検索バー)の右端に[A]と[文]の文字が並んだマークが表示されます。これをクリックして[Webページを翻訳]→[日本語に翻訳]を選ぶことで、ページ全体を指定した言語に翻訳できます。また、Webページ内のテキストをドラッグで選択して、コンテクストメニュー([control]キーを押しながらクリックするか、マウスの副ボタンクリックで表示可能)を開くことで、選択部分を素速く翻訳可能。翻訳に対応する言語がかなり多岐に渡っているところもSafariの特徴です。

※本記事は「Mac Fan 2023年7月号」に掲載されたものです。
著者プロフィール

山本敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ITからオーディオ・ビジュアルまでスマート・エレクトロニクスの領域を多方面に幅広くカバーする。最先端の機器やサービスには自ら体当たりしながら触れて、魅力をわかりやすく伝えることがモットー。特にポータブルオーディオ製品には毎年300を超える新製品を試している。英語・仏語を活かし、海外のイベントにも年間多数取材。IT関連の商品企画・開発者へのインタビューもこなす。