iPadシリーズの心臓部になる可能性も
M3ファミリーのベースモデルである「M3」チップは、MacBookシリーズやiMac、Mac miniなどのエントリーモデルのためのAppleシリコンであると同時に、今後登場するiPadシリーズ(iPad ProやiPad Air)の心臓部としての採用も予想される。そのため、M3には高い性能と同時に、長時間のバッテリ駆動を実現するための優れた省電力性能も要求される。
Appleは、M3は「M1と同じ性能をわずか半分の消費電力で実現」すると言及している。これは高効率コアの性能向上と、3nmプロセスの採用によるエネルギー効率改善の恩恵と考えられる。このため一般的なカジュアルな使い方であれば、M3搭載モデルはバッテリ駆動時間の向上が期待できる。
気になる処理性能については、「Geekbench 6」によるCPUベンチマークにおいて、シングルコア性能(高性能コア1基の性能)でM2の約20%アップ、M1の約30%アップが確認された。またCPU全体の性能(マルチコア性能)では、M2の約20%アップ、M1の約65%アップとなっている。ちなみにこのスコアはM1プロの8コアモデルを上回っており、M1 ProやM2 Proの10コアモデルに匹敵する。
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GPU性能はソフト次第?
一方で、Geekbench 6のメタル(GPU)ベンチマークの結果はM2と比べて数%の向上に留まった。8コアGPUのM1と比べても20%程度の向上で、これは今のGeekbench 6が次世代GPUの新機能に対応していないためと考えられる。ちなみにMaxonがリリースした最新のベンチマーク「Cinebench 2024・1」(以下、Cinebench)はM3の新機能に対応したレンダリングエンジン「Redshift」を搭載しており、M3はそこでM2の2倍近いGPUスコアを叩き出している。
今後ソフト側の次世代GPUへの対応が進めば、M3は本来のGPU性能をフルに発揮するだろう。特に3Dソフトでは、モデリングやレンダリングの処理速度や品質が大きく向上すると考えられる。
また、10月にリリースされたWindowsゲームをmacOS上に移植するためのツール「ゲームポーティングツールキット」は、メタルに対応しており、M3の次世代GPUのアクセラレータによりゲームのグラフィック処理が加速される。つまり、M3搭載Macは今後移植される数多くのWindowsゲームで高フレームレート化および高画質化が期待できる、というわけだ。
※この記事は『Mac Fan』2024年1月号に掲載されたものです。