M4シリーズとはどんなAppleシリコンなのか
M3シリーズの登場からほぼ1年。5月に先行してiPad Proに搭載されたM4と合わせて、M4シリーズを搭載した3モデルのMacが出揃った。今回はM4シリーズが新しいMacにどのような貢献をもたらしたのか、見てみよう。
M4シリーズはiPhone向けのA18シリーズと同じTSMCの第2世代3nmプロセスルール「N3E」で製造されるAppleシリコンだ。M3シリーズで採用された第1世代3nmプロセスルール「N3B」と比べて動作速度が向上し、エネルギー効率が改善。また歩留まりが大きく向上しているという。
M4シリーズの特徴は、CPUコアの再設計による性能アップとメモリ帯域およびNeural Engineの強化、そしてインターフェイスの機能と性能の向上にある。M4シリーズでは特に高性能CPUコアが大幅に強化され、10ワイド命令デコーダの採用や分岐予測の改善が行われ、演算結果を格納するリオーダバッファが40%向上した。
これらはいずれもCPUコアが同時に並列処理できる命令数を増やすもので、結果として高性能CPUコアのIPC(クロックあたりの処理性能)が大きく向上し、シングルスレッド性能で他社のあらゆるプロセッサをも凌駕する史上最速のCPUコアとなっている。
CPUやGPUの性能向上はメモリ帯域への要求が高まることから、メモリシステムにも改良が加えられた。M3シリーズではすべてLPDDR5-6400 SDRAMが採用されていたが、M4ではLPDDR5X-7500の採用で20%、M4 ProとM4 MaxではLPDDR5X-8533の採用で33%メモリ動作速度が向上している。
また全モデルでメモリ容量の下限が16GBに設定され、同時に現行モデルであるMacBook Airも16GBに引き上げられた。Apple Intelligenceの動作要件はM1搭載モデル(メモリ8GB以上)以降だが、今後のApple Intelligenceの機能強化に備えてメモリ容量に余裕を持たせたものと考えられる。
Neural EngineはA17 Proで初めて採用された次世代コアに更新され、その性能が38TOPSへと倍増した。これはApple Intelligenceのユーザエクスペリエンス向上のために、AI処理の応答速度を引き上げるのが目的と考えられる。
iMacのアップデート
新しいiMacの外観はM1搭載モデル以降ほとんど変わっていないが、その中核であるAppleシリコンは着実に進化してきた。iMacのM4搭載による恩恵は、なんと言っても処理性能の向上だろう。
CPU性能はM3に対して25%アップし、M3 Proに肉薄する性能になった。GPU性能も20%アップしているが、M3に比べて2倍のレイトレーシングアクセラレータを搭載しており、AAAゲームプレイ時のフレームレートや解像度を大きく向上できるようになっている。
Neural Engineの性能が向上しメモリ容量が倍増されたことで、Apple Intelligenceの応答速度が上がり、将来の新しいAI機能への対応力も向上している。
インターフェイスでは背面のUSB-CポートがすべてThunderbolt 4に対応した(M3モデルは4ポートのうち2ポートはUSB 3.1 Gen 2だった)。
また外部ディスプレイのサポートが1台から2台に増え、本体ディスプレイと合わせて合計3台のディスプレイが使えるようになった(一部のモデルを除く)。
Mac miniのアップデート
今回の新製品で、唯一その姿が変貌したのがMac miniだ。2010年にユニボディを採用した薄型モデルになって以降、Appleシリコンに移行してもそのデザインは長らく継承されていたが、実に14年ぶりにデザインが更新された。
新しい筐体は大幅に小型化され、Apple TVよりひとまわり大きいユニボディとなった。フットプリント(設置面積)は従来比で約42%となっている。これこそがAppleシリコンの優れたエネルギー効率を象徴する容姿だと言えるだろう。
M2およびM2 Proを搭載していた前モデルからの性能向上は著しく、M4搭載モデルのCPU性能はM2搭載モデルより50%アップし、M2 Pro搭載モデルのCPU性能を超えている。さらにM4 Pro搭載モデルのCPU性能は50%以上アップし、M2 Ultraを搭載するMac StudioやMac Proに匹敵する性能となった。
GPU性能はCPU性能に比べると向上は控えめだが、Pro Class GPUに更新されたことで3Dグラフィックス性能が著しく向上し、特にレイトレーシングのレンダリング性能が飛躍的に向上している。3Dアプリのレイトレーシング表示が高速化され、AAA級ゲームを高画質でスムースにプレイできる。
インターフェイスも強化され、M4搭載モデルでは背面にThunderbolt 4を3ポート、前面にUSB 3 10Gbpsが2ポート搭載された。さらにHDMIポートと合わせて最大3台のディスプレイをサポートする(従来モデルは2台まで)。さらにM4 Pro搭載モデルではMacでは初の採用となるThunderbolt 5ポートが3基搭載された。
MacBook Proのアップデート
新しいMacBook Proの外観は、M2シリーズ/M3シリーズ搭載モデルとほぼ同じだ。搭載するAppleシリコンは毎年最新のものに更新されてきたが、今回のM4シリーズの採用は歴代でもっとも大きな進化となっている。
特に機能向上が著しいのがM4搭載モデルで、CPU性能はM3搭載モデルに対して25%アップし、M3 Pro搭載モデルに匹敵する。GPU性能はM3に比べて約20%向上している。
またインターフェースがThunderbolt 3/USB 4からThunderbolt 4に更新され、ポートも2基から3基へと増加した。ディスプレイエンジンが2基から3基に強化されたことで、内蔵ディスプレイと合わせて最大3台のディスプレイに表示できるようになった。
M4 Pro搭載モデルではCPU性能がM3 Pro搭載モデルより約50%向上し、M4シリーズ中もっとも大きな伸び幅を示すと同時に、従来の上位モデルであるM3 Max搭載モデルに匹敵する性能となった。GPU性能はM3 Proに比べて約30%向上している。またインターフェイスがThunderbolt 4からThunderbolt 5に更新され、将来的な拡張性に余裕がもたらされた。
M4 Max搭載モデルではCPU性能がM3 Max搭載モデルより約25%向上し、過去最強のAppleシリコンだったM2 Ultraを20%以上超える性能を持つに至った。GPU性能はM3 Maxに比べて約25%向上しているが、こちらはM2 Ultraには及ばない。
インターフェイスはM4 Pro搭載モデルと同じくThunderbolt 4からThunderbolt 5に更新された。内蔵ディスプレイを含めて最大5台のディスプレイに表示できる。
Thunderbolt 5がもたらすもの
Thunderbolt 5はIntelより2022年10月に「次世代Thunderboltテクノロジー」として発表された。これはその発表の前日にUSB-IFからリリースされたUSB4 Version 2.0と同じ技術を用いたフル規格で、2023年9月に正式に「Thunderbolt 5」のブランド名でリリースされている。
Thunderbolt 4は送受信双方向最大40Gbpsの伝送規格だが、Thunderbolt 5では双方向最大80Gbps、または送信最大120Gbps/受信最大40Gbps(帯域ブースト機能)での接続が可能となっている。
Thunderbolt 5はUSB4 Version 2.0の上位規格の位置づけとなり、USB4 Version 2.0ではオプションに設定されている機能の多くを標準でサポートする。
今後Thunderbolt 5やUSB4 Version 2.0対応の周辺機器が充実してくれば、より高速な外付けストレージや、より多くのデバイスが接続できるドッキングステーション、より解像度やリフレッシュレートの高いディスプレイが利用できるようになるだろう。