ピクセル解像度はiPhoneの約8倍
Vision Proのようなゴーグル型のデバイスで鮮明なディスプレイを実現するには、高解像度かつ極めてコンパクトなサイズのディスプレイが求められます。Vision Proの場合、両目で約2300万ピクセルという膨大な画素数を実現するためには、片目で約1150万ピクセル、すなわちiMacが搭載する24インチ4.5Kディスプレイ(1129万ピクセル)に匹敵する高解像度のディスプレイが必要です。
しかも、それをわずか1インチのサイズに凝縮しなければなりません。そのためVision Proには、専用に開発された超高精細OLED(有機ELディスプレイ)が両目用に2つ搭載されています。
WWDC(世界開発者会議)23では、Vision ProのディスプレイはiPhoneに採用されているOLED=Super Retina Displayと比べて、その1ピクセルサイズに64個のピクセルを持つ、と説明されました。逆算すると、Vision Proのディスプレイのピクセル解像度はiPhone(460ppi)の約8倍となる、およそ3600ppi(インチあたりのピクセル数)という桁外れの超高精細ディスプレイであることがわかります。
Vision Proのディスプレイは目から十数ミリの距離に配置されるため、このレベルの精細度がないと緻密なイメージを得ることができないのです。Vision Proは「空間コンピュータ」と呼ばれるとおり、眼前のディスプレイ全体に外部カメラの映像から生成された実空間イメージが表示され、そこにシステムやアプリケーションによる複数の仮想イメージがマッピングされます。
つまり仮想イメージはディスプレイの一部に表示されるため、そのウインドウ内で十分な視認性を得るためには全体で4K以上のスクリーン解像度が必要なのです。一方、ディスプレイ全体を使って楽しむコンテンツやゲームでは、その超高精細を活かして高い臨場感を得ることができます。
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日本メーカー製のmicroOLED
ここまで解説してきたような超高精細なOLEDは、microOLEDと呼ばれており、量産できるメーカーが限られています。そして、Vision Proに搭載されているmicroOLEDは、各色のピクセル形状や配列がソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社のmicroOLEDと非常に似通っていることから、同社の製品とみて間違いないでしょう。
ソニーセミコンダクタソリューションズは、古くからEVF(電子ビューファインダ)用のディスプレイとしてmicroOLEDを開発してきたメーカーです。現在もなお、多くのメーカーのデジタルカメラやビデオカメラのビューファインダにそのmicroOLEDが採用されています。また最近では、VR/ARヘッドマウントディスプレイ(HMD)向けのmicroOLEDもラインアップしています。
Vision Proが実現する極めてリアルな空間コンピュータの体験は、このような超高精細microOLED技術に支えられているのです。
※この記事は『Mac Fan』2024年5月6月合併号に掲載されたものです。