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第28回 群れない/野呂エイシロウのケチの美学

第28回 群れない/野呂エイシロウのケチの美学

※この記事は『Mac Fan』2019年9月号に掲載されたものです。

ボクにはたくさんの友だちや仕事仲間、有能なアシスタントがいる。けれど、群れるのを良しとしない。「自分たった一人」と考えると、いろいろなことをどんどんやろうと思うからだ。誰かに相談をしなくていいのだから、決断も当然一人だ。「課長がやってくれるのではないか?」「部下がやってくれるのではないか?」などと思っていると、自然と甘えなどが出てしまう。

いろいろな組織に顔を出して思う。大きくなればなるほど、「誰かがなんとかするからまあいいや」という空気があって、それで全員が自分の能力の6割とか、場合によっては3割程度しか力を発揮していない。そんな企業が山のようにある。

きっとそれが日本の生産性の低下というものの一端なのだろう。一人だと、サボれはすぐにそれは結果に結びついてしまう。全責任が自分に降りかかるのだ。でも、まあ日本のことはどうでもいい。ボクは自身のことだけで精一杯だ。

仕事をしていて、「この人は真剣にやればもっと力を発揮できるのに」と思ったりもするが、そんなときは、その言葉をそのまま自分に投げかける。そして、「よし、ボクこそ今すぐもっと真剣にやろう」と行動に移す。

今は、東京の街のど真ん中で次々といろいろな会議に出て楽しんでいる。その一方で、心の奥底では「この意識ではダメだ」といろいろな人を反面教師として学び、自分をパワーアップさせているのだ。

おかげでiPhone XSのリマインダーには次から次へとやることが加わる。そして、それを消すために懸命に行動をする。一人なので、誰も助けてくれない。iPhoneとボクの1対1の関係だ。iPhoneはボクにいろいろな行動をさせる良い相棒なのだ。

この間、ある有名経営者に会ったが、60代のその紳士はボク以上に働いていた。分単位で物事をジャッジしているのだ。そんなように、ボクのiPhoneのリマインダーも分単位でセットするようにしている。

毎週金曜日の夜にテニスを始めて1年になる。なぜか? それは全責任が自分に降りかかるスポーツをやりたかったからだ。テニスは1対1のスポーツで、ネットを挟んだ格闘技とも呼ばれる。特に、シングルスは全責任が自分に降りかかるから向いている。

あともう1つは、「金曜日飲みに行こうよ」と誘われたとき、「すみません、テニスなんで」と断ると格好良さげに思ったからだ。そして皆が酒を飲んでいる間、ボクは直径約6.5センチの黄色のボールを懸命に追いかける。汗だくになりながら、何度もコートに倒れながら這い上がり、何度も挫折しながら空振りを繰り返す。

コートの上では全責任が自分にある。仕事もテニスも、“群れない”。それがボクをさらに強くする。孤独ではない。寂しくもない。せっかくの人生、自分自身と向き合ったほうがいいとボクは思う。

ゴムボートの試乗会でアキレスの伊藤守社長と筆者。東京湾を激走中。

著者プロフィール

野呂エイシロウ

野呂エイシロウ

放送作家、戦略的PRコンサルタント。毎日オールナイトニッポンを朝5時まで聴き、テレビの見過ぎで受験失敗し、人生いろいろあって放送作家に。「元気が出るテレビ」「鉄腕DASH」「NHK紅白歌合戦」「アンビリバボー」などを構成。テレビ番組も、CMやPRをヒットさせることも一緒。放送作家はヒットするためのコンサルタント業だ!と、戦略的PRコンサルタントに。偉そうなことを言った割には、『テレビで売り上げ100倍にする私の方法』(講談社)『プレスリリースはラブレター』(万来舎)が、ミリオンセラーにならず悩み中。

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