【PROFILE】
1975年塩尻市生まれ。千葉大学工学部応用化学科卒業後、地元に戻り塩尻市役所職員となる。現在は地方創生推進課シティプロモーション係長。
当初はごく普通の公務員だったという山田氏だが、松本広域連合へ出向したことが転機となり、従来の公務員のイメージを覆す独自の活動を開始。中でも注目を集めたのは2012年からスタートした「nanoda(ナノダ)」。シャッター商店街になりつつあった地元、大門商店街に賑わいを取り戻すため、塩尻市役所職員の有志が自腹で月額1000円ずつを出し合って空き家を借り、さまざまなイベントを仕掛けるというプロジェクトである。
皆で集まりワインを飲む「大門商店街でワインなのだ」や、朝食を食べる「朝食なのだ」など、現在までに数えきれないほど多くのイベントを実施してきたnanodaは大いに話題となり、市役所職員によるユニークな取り組みとして各メディアで紹介され塩尻市のプロモーションにつながった。
山田氏はまた、2016年より民間企業とともに地方創生に取り組むプロジェクト「地方創生協働リーダーシッププログラムMICHIKARA(ミチカラ)」をchangeWAVE代表・佐々木裕子氏とともに始動。ソフトバンクと協力して起ち上げた次世代をつくるリーダーを育てるインターンシップ・プログラム「TURE-TECH」や、総務省が後援となる官民協働のためのイベント「ミチカラ地方創生官民協働フォーラム」など、精力的に活動を行っている。
副業や働き方改革といったトレンドもあり、公務員の枠に収まらない山田氏の活動は全国的に注目を集めている。現在、殺到する講演依頼に応えて全国を飛び回る山田氏。昨年の講演回数は197回を数えたという。最近ではテレビ番組のコメンテーターなど新たなフィールドにも活躍の場を広げており、今後の活躍がますます期待される。
INTERVIEWER
Appleユーザの中には、未来を形づくるすごい人がいる。本連載は、人脈作りのプロ・徳本昌大氏と日比谷尚武氏が今会いたいビジョナリストへアプローチ、彼らを突き動かす原動力と仕事の流儀について探り出すものである。
徳本昌大
ビジネスプロデューサー/ビズライト・テクノロジー取締役
日比谷尚武
コネクタ/Eightエバンジェリスト/at Will Work理事/ロックバー経営者
地域の課題を当事者として考える異色な公務員
徳本●山田さんといえば今、日本でもっともホットな公務員ですよね。それにしても、雰囲気が公務員っぽくないですよね(笑)。
山田●ははは(笑)。
日比谷●山田さんは公務員以前に、何かされていたんですか?
山田●21年間、ずっと公務員です。
徳本●へー! そうなんですね。
日比谷●公務員でありながら本当にいろいろな活動をされていますよね。空き家プロジェクトの「ナノダ(nanoda)」や、民間企業と一緒に地方課題の解決に取り組む「ミチカラ(MICHIKARA)」などは全国的に注目を集めています。
徳本●特に、ナノダは公務員である山田さんが仕掛けたというところまで含めてすごく画期的です。
日比谷●どうして空き家に目をつけたのですか?
山田●長野県塩尻市は2005年頃から人口が減っていて、シャッター街になっている商店街もありますし、空き家も増えているんです。そんな市の状況を何とかしたかったのですが、公務員として外から見ているだけでは問題の本質はわからない。だから、地域の課題を想像で捉えるのではなく、自分が当事者になろうと思ったのです。有志の塩尻市役所職員を募り、自腹で月1000円ずつを出し合って空き家をレンタル。そこで、商店街に賑わいを取り戻すためにさまざまなイベントを行うことにしたのです。
徳本●ものすごい行動力ですね。
山田●ナノダをスタートしたのには、もう1つ背景があるんです。当時、私はワールドカフェの方法を取り入れた「しおラボ」というプロジェクトに取り組んでいました。
日比谷●ワールドカフェは、カフェみたいなオープンな空間を使うことでクリエイティブに討論するという方法ですよね。
山田●はい。塩尻市役所の若手職員を中心に15名ほどで毎月集まって、50年後の塩尻を豊かにするための教育再生や農業再生を話し合っていたんです。これは4年間で50回くらい続けました。
徳本●すごいですね。いろいろな刺激がもらえそうです。
山田●17回目からは商店街に場所を移して、ゲストも呼んで盛り上がりました。ただ、結局対話を続けても社会を変えることができていないというモヤモヤがあったんです。ナノダを提案したのは、そうした現状を打開するために変化を起こしたかったこともあります。
「nanoda(なのだ)」は空き家を借りてさまざまなイベントを仕掛けるプロジェクト。シャッター商店街や空き家の現状を把握し、解決するための施策として実験的にスタートした。取り組みは全国的に話題になり、塩尻のプロモーションにもつながっている。【URL】https://www.shiojiring.jp/