ベッドから落ちて…
先日、就寝中にベッドから落ちた。幸い大したことはなく、腕に小さな青アザができた程度だったが、おかしなもので落ちたあとは、いつになく熟睡することができた。多分、全身を打ったことで、体の余計な力が抜けたんじゃないかと思う。翌日、久しぶりにすっきりした頭で朝を迎えることができて、たまにはベッドから落ちるのも悪くないなと思ったが(それくらい清々しい朝だった)、そう何度も落下するわけにはいかない。ここはひとつ、ベッドから落ちるよりも、もっと手軽にリラックスできるアプリを探してみることにした。
今回注目したのは「ASMR」というワードだ。「ASMR」とは「Autonomous Sensory Meridian Response」の略で、日本語では「自律感覚絶頂反応」と、取りようによってはちょっとエッチな響きがしなくもない名称になる。見て、聴いて、触れて、刺激を受けたとき、それが引き金となって、ゾクゾクっとしたり、心地よさを感じる生理的反応のことである。
ASMRの引き金は人それぞれで、ある人にとっては心地よいものが、他の人にはそうでもないことがある。たとえばワタクシはアニメ声が苦手なので、あの手の声で囁かれても少しも心地よくないが、好きな人にはそりゃーもうたまらないことは想像に難くない。逆に女性のハスキーボイスが個人的には引き金なのだが、魔女や老女みたいと嫌う人もいるだろう。
また美容室や理髪店で顔や髪にタッチされるとゾクゾクッとしたり、心地よさのあまり寝てしまうのもASMRなんだそうである。女性の理髪師に顔を当たってもらうとき、胸のあたりが触れてドキドキするのは、単なるスケベ心かもしれないが。
動く音に引き込まれる
このASMRを好きなときに感じてリラックスするためのアプリが「スリープ・オービット(Sleep Orbit)」だ。Orbitは天体の軌道を意味するので、直訳すると「睡眠軌道」。その名のとおり、自分を中心にその周りをASMRサウンドが人工衛星のように周回(あるいは反転、停止)して聴こえるというアプリだ。睡眠と銘打っているが、就寝時に限らず、リラックスしたいとき全般に使用できる。いや、アプリの能力を十二分に引き出すにはヘッドフォンの使用が推奨されているので、就寝時以外のほうが使いやすいかもしれない。
操作は簡単で、〈水・雨・動物・囁く・音楽・プラス思考・キャンピング…〉などにカテゴライズされたサウンドの中から好きなものを選ぶ。たとえば〈囁く〉ならさらに「空」「リラックス」「眠り」「大丈夫」「吐息」…などの項目がラインナップされている。デフォルトは英語だが、日本語、スペイン語、ポルトガル語、中国語を選択することができる。同じ意味の囁きでも言葉が違うと味わいが異なる。
選ばれたサウンドはアイコンで表示され、ユーザを表す頭部の周囲を円に沿って動く。アイコンが頭部の耳に近づけばサウンドは大きく、耳から遠ざかれば小さくなる。この「音が動く」のがミソで、それによって生まれる音の強弱が、聴く者を心地よい世界に引き込む。そのふわふわした感じは、眠りにつく寸前のうつらうつらした感覚に似ていて甘美である(あくまでも個人的な見解です)。
またサウンドは自由に組み合わせることが可能で、「穏やかな波」と「(散髪の)はさみ」を聴きながら、「リラックス」と日本語と英語で交互に囁いてもらう、なんてことができる。惜しむらくは日本語の声がアニメ声なこと。もっと大人の声だと、言うことなしなんですけどねぇ。
無料版でもけっこー楽しめるヨ
人の囁きや波の音、焚き火、ものを書く音、あるいはホワイトノイズなど、自分にとって心地よい音を好きなだけ組み合わせて聴くことができる音アプリ。自分の周りを動くそれぞれの音をコントロールすることで、奥行きのある本当にリラックスできる世界を生み出すことができる。操作性に若干難アリなのがマイナス0.5。