iPad活用の代表例として挙げられるペーパレス化。実際に浸透している現場はどれだけあるだろうか? 会議のたびに資料を印刷したり、顧客向けのプレゼンのために何十部もカタログを印刷したりする現場はまだまだ多いはずだ。業務の現場において100%紙がなくなることはないだろうが、これから先、紙を使った業務がこれ以上増えることもないだろう。
最近では、紙の資料は受け取らない企業も増えている。PDF等の電子データでの共有を望み、打ち合わせ時にはパソコンやタブレットを持ち込む。本来、資料の準備は相手に合わせて行うものだが、デジタルトランスフォーメーションやテレワークといったキーワードを掲げ、働き方を変えていこうという時代の流れにおいて、紙を使った業務というのはもはや非効率なものとなっている。たとえば、上司の捺印をもらうだけのためにPDFファイルを印刷し、捺印後に再度スキャンして申請・承認等のワークフローを行っているケースなどはその典型である。
業務変革のためのiPad導入やモバイル化を検討するのであれば、何よりも先に目の前にある紙の資料に目を向けてみてはいかがだろうか? 自分が印刷したもの、社内で共有されたもの、顧客等の相手から受け取ったもの、イベント等で配布されたもの、さまざまなシーンで紙の資料を受け取っているはずだ。
そこに業務変革のヒントは溢れている。印刷する必要のあるデータはPDF化してクラウドストレージに保存しておけば、手元のiPadでいつでもどこでもセキュアに呼び出すことが可能だし、メール返信に対してもマークアップ機能で直接PDFファイルに書き込むことで効率化が図れる。社内で共有された書類や顧客から受け取った資料は、即座にiPadのカメラ機能を活かしてデータ化する。
データ化するうえでは、さまざまなサービスがあるが、セキュリティが保たれているサービスを選ぶことが企業利用では大前提である。データの改ざんや流出を防ぐためにも、特定の場所にデータを集約して、守れる環境を作ることを同時に行う必要がある。手元のiPadに保存したままでは、デバイスのセキュリティがいくら高くても、MDM等を使って強固なセキュリティ環境が築けていなければ、ユーザが簡単にデータを利用することができてしまう。
今でもその多くが紙で配布されているイベント等のカタログは、競合他社と比較していかに目立ち、目に留まるかを第一に考えたものでしかなく、もらった側があとで見返すときには、どこの誰からもらった資料なのかを思い出すことが難しい。このような場合は、iPadのカメラ機能とQRコードを併用することで、簡単にペーパレス化が実現できる。興味・関心のある人には、手元のカメラでQRコードをスキャンしてもらい、必要情報を入力してもらうことで製品情報を渡すことができる。こうすることで製品に興味があるユーザは必要な情報を的確に収集できるし、カタログを配布する側も、関心のあるユーザのデータを取得することが可能だ。
デジタルトランスフォーメーションやテレワークといった言葉に惑わされてiPad導入やモバイル化を進め、大掛かりな取り組みをスタートする前に、まずは目の前にある紙の資料を見直すことが業務変革の第一歩となる。日々当たり前に行っている作業の一つ一つに対して現場が意識することで、経営全体の業務改革の土台ができる。そうすることで企業のデジタル化は今以上に一歩先に進むはずだ。
Hironori Fukuda
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。【URL】www.too.com/apple