アップストアの大改革が始まる
中国のスマートフォン市場で中国メーカーが台頭し、iPhoneは販売台数を大きく落としました。ところが、アップストアでは中国が売上を伸ばし、米国を抜いて最大市場になっています。ティム・クックは中国への取り組みを強化する理由のひとつとして「スキルを持ったソフトウェア開発者」を挙げます。そうした開発者がアップストアに参加する効果が、中国市場からグローバルに波及することを期待しているのです。
一方、日本や米国などiOSデバイスユーザが多い成熟市場では、ダウンロード数の伸びが横ばい傾向に。しかし、アプリの利用時間や売上は引き続き良好で、カテゴリ別では写真・ビデオ、旅行、ファイナンスなどが伸びています。成熟市場ではWEBサイトを閲覧したりSNSだけではなく、スマートフォンがユーザの生活に深く根づき、よりアクティブなことに活用されていると推測できます。
同年6月にアップルはアップストアの改革策を発表しました。まずは審査プロセスの迅速化。すべての種類のアプリでサブスクリプションを利用できるようにし、契約2年目からの開発者の取り分を85%に引き上げました。そして検索広告の導入です。ほかにも64ビット非対応の古いアプリの削除と、iAdの終了計画も打ち出しました。アプリ数の減少はアップルにとっても痛みとなりますが、ユーザビリティに優れたストアを取り戻す改革に踏み出したのです。
GPS、磁気センサ、カメラ、ジャイロなどスマートフォンの機能を利用し、プレー中に絶えずサーバとやり取りする「ポケモンGO」。立ち上げを安定させるために、ナイアンティックはiPhoneからサービス提供を開始しました。
ユーザの「発見」を促す
Appfiguresの調査によると、アップストアの改革によって配信アプリ数が2017年に約5%減少しました。しかし、アップストアを中心にアップルのサービス事業は二桁の健全な伸びを続けています。開発者が人々のためになる高品質なアプリをアップストアで提供し、ユーザが必要とするアプリを見つけて活用するという改革は順調なスタートを切ります。
また、App Annieによると、2015年と比較してアプリのダウンロード数が60%増加し、消費支出は2倍以上に。さらに利用時間は30%増加しました。また、中国に続いてインドがダウンロード数で米国を上回っています。成長著しい新興市場ではゲーム、SNSやメッセンジャなどコミュニケーション関連のほか、決済や個人間決済などファイナンス分野のアプリが人気の傾向があります。
成熟市場ではアプリの収益力の向上が続いています。主要市場のiPhoneユーザは100本を超えるアプリを所有し、毎月40本を超えるアプリを使用しています。音楽を聴く、映画を観る、旅行の計画を立てて予約、夕食の食材を配達してもらうなど、あらゆる消費活動にアプリが浸透し、人々の日常生活を変え始めたのです。
さらにiOS 11でアップルは、アップストアのデザインを刷新。もっとも人気の高い「ゲーム」の専用タブを用意し、おすすめのアプリやゲームを独自コンテンツで紹介する[Today]タブを追加しました。アップデートに合わせARプラットフォーム「ARキット(ARKit)」対応アプリも登場しています。
App Storeをデータで読み解く
すべての調査期間を通じたランキングトップの開発元は米国と中国の企業が占めています。(出典:App Annie)
世界を動かしたベストアプリ
2016
Suica
【開発】East Japan Railway Company 【価格】無料
【場所】App Store>ファイナンス
Apple Payの登場によって、iPhoneにも「おサイフケータイ」の時代が到来しました。とくにSuicaに対応したことは大きく、モバイルSuicaの利用者数はiPhoneの対応によって加速度的に増え続けています。
Pokémon GO
【開発】Niantic, Inc. 【価格】無料
【場所】App Store>ゲーム
爆発的人気で社会現象ともなったのが「Pokémon GO」です。ボールを投げてモンスターを捕まえるというシンプルながら楽しいゲームで、実際の地形やランドマークがふんだんに使われています。この仕組みを支えているのは前身にあたる「Ingress」によって蓄積されたデータによるものです。
NOISE
【開発】ROLI Ltd. 【価格】無料
【場所】App Store>ミュージック
楽器アプリも既存の楽器シミュレータから次世代へと進んでいます。「ROLI」ファミリーはiOSに最適化されたタップによる演奏法を取り入れ、新しい音楽表現と制作を可能にしました。
2017
Elk
【開発】Clean Shaven Apps 【価格】無料
【場所】App Store>旅行
国が違えば文化も制度も変わりますが、通貨換算アプリの「Elk」もその“翻訳”を手助けしてくれます。国外への旅行が手軽になった現在、必要となるグローバルサポートは言語だけでなく、こうした「文化の翻訳」も求められています。
Clips
【開発】Apple 【価格】無料
【場所】App Store>写真/ビデオ
親しい人と共有するモーメントは今や写真だけでなく動画にも及んでいます。「Clips」はその動画の作成を「簡単」かつ「楽しく」実現できます。これからのアプリに求められるテクノロジーを知るにはApple製品を触ってみるのが一番だというのがわかります。
中国パワーの象徴
2016年にはBaidu(百度)傘下の動画ストリーミングサービスである「iQiyi(愛奇芸)」が消費支出ランキングの7位に入りました。グローバルで展開されているストリーミングサービスが居並ぶ中で、中国市場の利用者中心でこの売上を実現するのは驚異的です。さらに翌2017年にはさらにこの傾向が進み、ダウンロード数のトップ10に「WeChat」「QQ」「Taobao」「Tencent Video」がランクインを果たしました。