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新MacBook Proの驚きの性能&機能?

新MacBook Proの驚きの性能&機能?

今の「プロ」の実態

新しいMacBookプロは13インチ、15インチモデルの2サイズで提供される。13インチモデルはタッチバー(Touch Bar)あり/なしの機種が存在し、タッチバーなしのモデルは今回アップデートされていない。そのため、新モデルとなるMacBookプロは2.3GHzプロセッサを搭載した13インチモデル2機種、2.2GHz/2.6GHzの15インチモデル2機種となる。カラーはそれぞれシルバーとスペースグレイが用意されている。カラーリングに関しては従来のモデルから変更はない。

今回の新しいMacBookプロは昨年6月に発表されて以来の1年ぶりのアップデートとなる。インテルの第8世代Coreプロセッサ搭載による処理能力の向上が注目されがちだが、実はそのほかにも細かな変更点は多い。また、昨年のモデルでも従来から比べるとさまざまな面で進化を遂げている。

まずは今のMacBookプロを知るための勘所を下にまとめたので、MacBookプロの全体像をまずは理解したうえで、今回のアップデートの詳細を確かめてほしい。

サイズ

13インチ

15インチ

KEY FEATURE(1) [ CPU ]

6コア&4コアが標準に大幅にアップしたCPUパワー

新MacBookプロでは、CPUが第8世代インテルCoreプロセッサ「コーヒー・レイク(Coffee Lake)」に刷新。そして世代の変更以上に大きいのが、CPUのコア数が4→6(15インチモデル)、および2→4(13インチタッチバー搭載モデル)と増加した点だ。これは、動画のエンコード速度や、音楽制作の音源・エフェクトの同時使用可能数といった、プロセッサのパワーがダイレクトに反映される分野では特に大きな効果を発揮する。また、15インチモデルでは、搭載可能なメモリの最大量が32GBと一気に倍増し、こちらも処理速度のアップに大きく貢献している。メモリを大量に消費する動画編集などの分野では特に要望の大きかったポイントなので、歓喜しているユーザも多いはずだ。

処理性能のアップに伴い、バッテリ容量も83・6ワット(15インチモデル)、及び58ワット(13インチタッチバー搭載モデル)に増加している。新MacBookプロではディスプレイの最大輝度がアップししているが、そこで増えたバッテリ消費量も増加分でかなり吸収できるはずだ。

CPUのベンチマーク(Geekbench 4)

パフォーマンス計測ソフト「Geekbench 4」による新MacBook Pro(2.9GHzのカスタムモデルを含めた5機種)と前モデルのCPUスコアの比較。15インチも13インチも大幅に処理性能が向上していることがわかる。

「Adobe Media Encoder CC」にて、CPUのみを使う設定で30秒の4K動画をH.264形式に変換してみた。2017年の13インチモデルで88秒かかった処理が、新13インチでは55秒と約6割の時間で完了。コア数増加の恩恵は大きい。

KEY FEATURE(1)[ GPU ]

標準でグラフィックスメモリ倍増一層ゆとりを持ったGPU性能

新しい15インチモデルのGPUは、グラフィックスメモリ4GBのラデオン・プロ(Radeon Pro)555Xとラデオン・プロ560Xにアップグレードされた。動画編集やゲームといった分野のパフォーマンス向上はもちろん、描画性能はユーザの体感的な速度にも直結するので、より余裕を持った仕様になったのは大きなメリットだ。また、13インチモデルもアイリス・プラス・グラフィックス(Iris Pro Graphics)655に刷新され、キャッシュメモリが前モデルの64MBから128MBへと倍増された。

検証して印象的だったのが、13インチモデルのグラフィック性能向上だ。13インチモデルは専用のグラフィックスプロセッサを持たず、CPU内蔵のアイリス・プラス・グラフィックス655で処理を行うが、ベンチマークではラデオン・プロ450を搭載した2016年の15インチモデルに近い数値を示した。2016年の15インチモデルはプロの映像クリエイターが今でも現役で使っており、新しい13インチモデルも、同様なハードな使われ方に耐えうるポテンシャルを持ったといえる。

GPUのベンチマーク(Geekbench 4)

Geekbench 4を用いたGPU性能の比較。こちらも15インチ、13インチともに性能アップしている。特に、新しいMacBook Pro13インチは、CPU内蔵グラフィックス「Intel iris Plus Graphics 650」しか搭載していない。しかしながらグラフィックス性能の総合スコア(図左)では、「Radeon Pro 450」を搭載した2016年の15インチモデルに近い数値が出た。新13インチのスコアは32780(上)、2016年の15インチのスコアは35630(下)。

TECHNOLOGY FOCUS(1)

第8世代Coreプロセッサ「Coffee Lake」の正体

多コア化で性能向上

従来のMacBookプロでは長らく、13インチモデルにデュアルコアのUプロセッサ、15インチモデルにクアッドコアのHプロセッサが採用されてきた。Uプロセッサは熱設計容量(DTP)が15~28Wクラスのモバイルノート向けのプロセッサで、CPUコアが2個と控えめな反面、統合グラフィックスに強力なIRISグラフィックスを備えたモデルが用意されており、ワンチップでオールマイティな用途に適応するよう設計されていた。一方、HプロセッサはDTPが35~45Wクラスの高性能ノート向けのプロセッサで、CPUコアを4個備える代わりに統合グラフィックスの性能は控えめに設定されており、ラデオン・プロなどの外部GPUと組み合わせてデスクトップマシンに匹敵する性能を実現するよう設計されていた。

昨年8月にリリースされた最初の第8世代コアUプロセッサ「カービー・レイクU」は、このクラスで初めてクアッドコアとなった画期的なUプロセッサだが、MacBookプロの搭載するレティナディスプレイに見合うIRISグラフィックスを備えていないため採用が見送られている。そして今年4月にリリースされた「コーヒー・レイクU」では、Uプロセッサにクアッドコア+IRISグラフィックスモデルが、そしてHプロセッサ「コーヒー・レイクH」にはインテルのモバイル向けプロセッサとしては初のヘキサ(6)コアモデルが用意された。

タッチバー搭載の13インチモデルにコーヒー・レイクUが採用されたことで、歴代の13インチモデルとしては初めてのクアッドコアとなり、従来の15インチモデルに匹敵する処理能力を手に入れた。実装されるグラフィックスも演算ユニット(EU)数こそ従来と同じ384個ながら、キャッシュメモリであるeDRAM容量を128MBに底上げし動作クロックを強化するなど、インテルのプロセッサ統合グラフィックスとしては最高クラスの性能を備えている。一方、15インチモデルは全モデルが6コアへとアップグレードされ、オプションでMacでは初のコアi9プロセッサを選べるようになった。

ウイークポイントが解消

今回のプロセッサ更新によるモデルチェンジで、ひっそりと改善されたポイントが存在する。従来のタッチバー搭載13インチモデルの右側のサンダーボルト3ポートは、カービーレイクUが提供するPCIeレーン数の制限から最大20Gbpsに制限されていた。コーヒー・レイクHではPCIeレーン数が従来より4レーン増加したことから、新しい13インチモデルの右側のサンダーボルト3ポートも15インチモデル同様、本来の性能である40Gbpsを発揮できるようになった。

また、15インチモデルではMacBookシリーズでは初めてメインメモリに32GBを搭載することが可能になり、よりハードワークにも耐えうるスペックを手に入れている。

13インチモデルに採用されている第7世代Core Uプロセッサ、同Touch Barモデルの第8世代Core Uプロセッサ(Coffee Lake U)、15インチモデルの第8世代Core Hプロセッサの内部構成。

●各モデルに採用されたプロセッサのスペック比較表