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Appleが発信し始めた 「実りある豊かな生活」という理念

著者: 永川りそな

Appleが発信し始めた 「実りある豊かな生活」という理念

社を飛び出したフレーズ

アップルの企業理念を表す代表的な言葉に「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」がある。これは先代のCEO、故スティーブ・ジョブズが好んで用いたフレーズのひとつで、単に技術を追いかけるだけでなく、豊かな教養に基づいた哲学も存在するのがアップルという企業であることを言い表したものだ。

今でも事あるごとにアップルはこの言葉を発信し続けているが、今年のWWDCの「Platform State of the Union」というセッションでは、新たなメッセージが開発者向けに伝えられた。それが「実りある豊かな生活(Enriching lives)」である。

アップルは単にハードウェアやソフトウェアといった「製品」を販売したいわけではない。その先にいる購入者(ユーザ)がそれを使ってどれだけ便利に、快適に、実りのある生活を送れるか。それを実現することが、アップルの真のゴールだと定義しているのだ。技術は日進月歩であり、どの会社が先にそれを採用したとしても別の会社が追いつき、時には追い越してしまうのがこの業界の常である。そんな中、アップルが多くのユーザを引きつけて離さないのは「一度使うとほかには戻れない、手放せない」という言葉では形容しがたい魅力を持っているからだ。

実はこの新しい理念は、アップル社内では数年前から共有されてきたという。ついに開発者へもこの理念を伝えることを決断したのは、これから先、このフレーズこそがアップルという企業を体現するものになるからなのかもしれない。