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メッシュWi-Fiの基本的な仕組みと特徴を理解しよう

メッシュWi-Fiの基本的な仕組みと特徴を理解しよう

Wi-Fiをリードしたアップル

すでに生活の一部となり、欠かせないインフラであるWi-Fiをいちはやく導入したのは、周辺機器メーカーではなくアップルだったのは有名な話です。1999年に登場した輝くシルバーのUFOのようなデザインはインパクト満点。世間に無線LANという言葉を知らしめました。デザインだけでなく、無線LANカードが6万円という時代に、AirMacカードは1万円台という価格にも驚かされました。

2003年には11gの採用で54Mbpsに達し、2007年で11nが登場すると100Mbpsを突破。これと前後して、MacにはAirMacが標準搭載されるようになります。

11acを採用した立方体デザインのAirMacの登場は2013年のことでした。ビームフォーミングやiPhoneによる初期設定など今では当たり前の機能がすでに搭載されていました。

このように市場を牽引してきたアップルのAirMacですが、11adや11ac Wave2などの新規格が登場する中、新製品が出ないまま5年が過ぎ、そしてついに、在庫限りで販売が終了することがアナウンスされたのです。

一方、メッシュWi-Fiというキーワードが2017年中ごろから登場してきて、4月末からはグーグルの対応製品の国内販売が開始されました。家庭内で増え続けるWi-Fi機器に対応するべくいよいよメッシュネットワーク時代が始まろうとしています。

複数で「網の目」を構築

従来のWi-Fi環境では、1台のWi-Fiアクセスポイント(親機)に対して複数のMacやiPhoneなどのWi-Fi対応デバイス(子機)を接続する「インフラストラクチャ」と呼ばれる接続方式でネットワークが構成されていました。この接続方式では、アクセスポイントとデバイスの距離が遠くなったり、同じアクセスポイントに接続しているデバイスの数が増えたりすると、通信速度が大幅に低下し動画配信が途切れるなどの弊害が出るケースもあります。

そこで登場したのが「メッシュネットワーク」という新しい接続方式によるWi-Fiルータ製品群で、インターネットに接続された「ルータ」機と1つ以上の「サテライト」機とでメッシュ(網の目)状のネットワークを構築するところからこの名があります。もともとは公衆Wi-Fiなどの業務用システム向けに開発された技術ですが、最近になってこの技術を導入した家庭向けのWi-Fi製品がいくつかリリースされて脚光を浴びています。

メッシュWi-Fiでは、複数のWi-Fi端末が1つの大きなWi-Fiネットワークを構築するのが大きな特徴で、ユーザが特に設定を行う必要なくデバイスが自動的に最適なWi-Fiデバイスに接続され、このデバイスが移動してもこれに追従して最適なWi-Fi接続を維持し続けることができます。

また、サテライト機を必要に応じて複数台追加することも可能で、簡単な初期設定のみでWi-Fi環境のサービスエリアを拡大できるメリットがあります。さらに、周辺の無線状態などの変化に応じてWi-Fi端末同士が自動的にメッシュネットワークを再構成するため、場所を選ばず常に安定した通信環境が得られるメリットがあります。

従来のWi-Fi

メッシュWi-Fi

一般的なWi-Fi製品では、各デバイスはすべてWi-Fiルータに無線接続します。これに対してメッシュWi-Fiではルータとサテライトがメッシュネットワークで相互接続され、デバイスは自動的に最適なWi-Fi端末(ルータやサテライト)と接続されます。

Wi-Fiリピータとの違い

Wi-Fiのサービスエリアを拡大し電波状態を改善するという意味では、メッシュWi-FiはWi-Fiリピータ(中継器)とよく似た機能に見えますが、その実態は大きく異なります。Wi-Fi中継器はWi-Fiアクセスポイント(親機)から見るとWi-Fi子機(デバイス)に見えると同時に、デバイスからはアクセスポイント(親機)として見えます。これによってWi-Fiのサービスエリアを「中継」することから、リピータ(中継器)と呼ばれます。ただし、デバイスの移動に伴ってメッシュWi-Fiのように接続先がシームレスに切り替わるわけではありません。また、Wi-Fi中継器へのアクセスはすべて親機に中継されるため、親機のネットワーク負荷は減りません(むしろ増えます)。

これに対してメッシュWi-Fiではルータやサテライト間の通信は専用の無線バンドやLANケーブルを介して行われ、複数のサテライト機がある場合はメッシュネットワークによる負荷分散により単一のWi-Fi端末に負荷が集中しないように自動制御されます。さらに、すべてのWi-Fi端末が共通のSSIDを提供し、デバイスがメッシュネットワーク内で移動した場合には自動的に最適なWi-Fi端末へと接続が切り替わる仕組みになっています。

ユーザが選ぶ

自動的に切り替わる

Wi-Fiリピータは子機としてWi-Fiルータに接続され、ユーザはルータかリピータのいずれかを選んで接続します。一方メッシュWi-Fiでは特にユーザが接続先を意識することなく、最適なWi-Fi端末に自動的に接続され、移動時にも自動的に最寄りのWi-Fi端末に再接続されます。

メッシュWi-Fiのデメリット

メッシュWi-Fi製品は、その複雑なネットワーク構成を柔軟かつ自動的に構成する必要性から、詳細な設定項目をユーザインターフェイスから隠すことで容易なセットアップを実現しています。このため、サテライトを追加してサービスエリアの拡大や接続デバイスの増加に対応するといったことが容易に行えます。

その一方で、従来のWi-Fiアクセスポイントでは設定可能だった詳細項目の中には、メッシュWi-Fi製品では設定することができなくなっている項目が少なくないので注意が必要です。

つまり現在のメッシュWi-Fi製品は、初心者が初めて導入するWi-Fi環境としては最適ですが、ヘビーユーザが詳細な設定を施してバリバリ使いこなす、といった用途には不向きな仕様になっているといえます。

サテライトの追加

故障時の再構築

メッシュWi-Fiでは、サテライト機を追加購入してシステムに追加することが可能です。このうち1台が障害などでダウンしても、残りのWi-Fi端末が自動的にメッシュネットワークを再構築し、Wi-Fiサービスを継続することができます。

メッシュWi-Fi製品の多くは、スマートフォンやタブレットのみで簡単にセットアップが行えるようになっています。

その反面、従来のWi-Fiルータのような詳細な設定機能は提供されていないものが多く、さまざま機能をカスタマイズして使いたいユーザには不向きといえます。

Wi-Fiリピータで充分なケースも

このように現在のメッシュWi-Fi製品は、既存のWi-Fi環境に加えて使うというより、これらに置き換えて使うことを前提としたシステムになっています。このため、たとえば特定の部屋だけWi-Fi環境を改善したいといった場合や、同時接続したいデバイスが少ない場合など、Wi-Fiリピータのほうが安上がりに同じ効果を得られる場合があります。メッシュWi-Fi製品はWi-Fiリピータと比べると高価なため、目的と費用対効果を考えて導入を判断する必要があります。

ただし、メッシュWi-Fiもまだ製品化が始まったばかりの段階なので、今後さまざまなニーズに応じた特徴ある製品が登場してくるでしょう。エントリー向けの低価格製品から多機能な高性能製品まで、幅広いラインアップが用意されることが期待されます。

おすすめWi-Fiリピータ

I-O DATA WN-AC1167EXP

【開発】アイ・オー・データ機器

【価格】4000円強

【URL】http://www.iodata.jp/product/network/ck/wn-ac1167exp/index.htm

IEEE802.11ac/n規格の 2×2 MIMOに対応したモデ ルで最大867Mbpsの高速 伝送に対応。親機のSSIDと 暗号キーをそのまま中継する ことも可能で、その場合デバ イス側の再設定が不要です。

TP-Link RE305

【開発】TP-Link

【価格】4000円強

【URL】https://www.tp-link.com/jp/products/details/cat-10_RE305.html

IEEE802.11ac/n/g/a/b規格に対応したWi-Fiリピータで、信号状態で色が変わるシグナルインジケータと可動式のデュアルアンテナを備え、Wi-Fi環境の拡張に最適な設置場所の捜索をフォローしてくれます。

BUFFALO WEX-733DHP

【開発】バッファロー

【価格】5000円程度

【URL】http://buffalo.jp/product/wireless-lan/extender/wex-733dhp/

2.4GHz帯と5GHz帯のデュアルバンドに対応したWi-Fiリピータで、同社独自の「Smart ExRate」機能により、動画再生時のスループット低下を最小限に抑えることができるのが特徴です。