市場の不足を補う製品
ゴープロ(GoPro)といえば、スポーツ選手や乗り物などに装着して迫力ある映像を撮影できる「アクションカメラ」の代名詞的存在。その新製品である「フュージョン(GoPro Fusion)」は、上下左右全方位を撮影できる360度カメラです。実は360度専用カメラが少なかった時期は、ノーマルのゴープロを複数台組み合わせて撮影するケースが多く、本製品はある意味満を持して登場した「王道の直系」ということもできます。
360度カメラはリコーの「シータ(THETA)」シリーズが有名ですが、シータの(手軽さと引き換えの)弱点に「バッテリやメモリが内蔵のみで交換できない」というものがあり、本格的に長時間撮影するのは難しい面があります。一方、業務用の360度カメラは数十万円以上と大変高価。運用も難しいものが多く、バランスのとれたミドルクラスの機種が少ない状態でした。
その点、本製品はアマチュアでも手の届く価格。さらにマイクロSDカードへの記録や交換式のバッテリといった仕様も備えており、市場に不足していたポジションにピタッとはまるプロダクトなのです。さらに、ハウジング等不要で5メートル防水を実現するなど、ゴープロの売りである堅牢さも備えているので、ハードな環境にどんどん持ち出したくなります。
本製品は多くの小型360度カメラと同様、2つのレンズが各々180度+αの映像を撮影し、最終的にそれをステッチ(つなぎ合わせ)して全方位の映像に仕上げます。特徴的なのは、各レンズの映像を2枚のマイクロSDカードに分散して記録するという仕様。カードが2枚必要なので出費は増えますが、それと引き換えに小型カメラで一般的な4K(横3840ピクセル)を超える5.2Kでの記録が可能で、特にVRゴーグルで視聴した際により高精細な映像が楽しめます。
撮影は本体ボタンや音声操作に加え、iOSアプリ(Wi−Fi接続)で離れた場所からも行えるので、自分が映らないよう隠れてからのスタートも簡単に行えます。
360度動画だけじゃない!
撮影した映像は、本製品をUSBタイプC端子(タイプA変換ケーブルが付属)経由でMacにつなぎ、専用のユーティリティ「GoPro Fusion Studio」を利用して取り込みます。このとき、ステッチ作業も自動的に行われますが、5.2Kという解像度もありかなりの時間がかかります…(1分の映像で数十分、といった感覚)。処理品質は良好なものの、正直時間がかかり過ぎの感は否めないので、是非バージョンアップによるスピード向上を期待したいところです。
本製品のすごいところは、360度映像だけではありません。実は筆者が一番ハマっているのは、360度映像から自由にアングルを選んで普通の2D映像を切り出せる「OverCapture」という機能。たとえば、撮影中に自分の背後にあったものに“編集で”アングルを振るなど、普通のカメラでは絶対に実現できない演出を行えます。また、普通の広角レンズでは不可能な超ワイドの画角を作れるので、車のダッシュボードにセットして前方と車内を同時に映すような常識破りの映像も実現可能です。なお、PCのほうがスティッチ精度が高いので、こだわりたい人はMacの「Fusion Studio」で、手軽に「OverCapture」を楽しむのであれば、より高速な専用iOSアプリを使うのがおすすめです。
また、Mac取り込み時に超強力な手ぶれ補正をかけられるので、手持ちで走りながら撮った映像も、まるでジンバル(ブレを吸収する装置)を使ったようにピタッと安定した状態になります。「360度映像を作りたい」という人はまだまだ少ないと思いますが、「OverCapture」機能を活用すると、ゴープロが元々得意としている映像を、まったく新しい感覚で撮影できます。本製品は、プロからアマチュアまで多くの映像クリエイターを虜にできる魅力を備えているのです。
iPhone内蔵なども含め、多くの人が「十分にきれいに映るビデオカメラ」を持っている現在。本製品は、新しい映像体験を味わいたいという好奇心旺盛な方に、是非触って頂きたい1台です。
USB Type-CでMacと接続
Macとの接続や充電は、搭載されているUSB Type-Cコネクタ経由で行います。本製品には、USB Type-C to USB Type-Aケーブルも付属しています。
Adobeソフト用のプラグインで編集
「GoPro Fusion Studio」には、「Adobe Premiere Pro CC」および「Adobe After Effects CC」用のプラグインが用意されています。これを使えば、アングルを選んで2D映像に変換する作業も効率的に実行可能。
[SPEC]
[360度カメラ]GoPro Fusion
【発売】GoPro
【価格】8万9800円
【Size】74(W)×75(H)×40(D)mm
【URL】http://www.tajima-motor.com/gopro/product/fusion/index.html
【主なスペック】
【重量】220g(本体のみ) 【備考】デジタルビデオフォーマット:H.264、最大ビデオ解像度:5228×2624、ビデオ解像度:5.2K(5228×2624)-30fps、3K(3000×1504)-60fps、高精細ビデオサポート 5.2K、インターフェイス:USB Type-C、センサ:加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ、ビデオカメラのセンサ解像度:18.0MP、その他の機能:タイムラプス撮影、音声制御、防水、360度撮影/360度オーディオ、OverCapture機能、ナイトモード など
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大須賀 淳
テクノロジーを遊びつくす映像作家・音楽家。【URL】https://junoosuga.com