AppleのAR(拡張現実)技術が加速している。iOS 11.3では、機能が大幅に拡張されたARKit 1.5が用意され、App StoreにはさっそくARKit 1.5を活用した魅力的なアプリが登場している。手軽にARの世界を体験できる国内外のアプリを紹介しよう。
個性的なARアプリを体験
アップルは3月下旬、ARのフレームワーク「ARKit」を強化したiOS 11・3をリリースした。最新バージョンのARKit1.5では、水平面に加えて新たに垂直面の検出に対応。現実世界の壁やドアなどを認識し、その上に仮想オブジェクトを配置できる。円形テーブルのような、不規則な形をした面へのマッピング精度も上がった。カメラで映し出される現実世界の解像度は50%向上したほか、オートフォーカス機能が追加され、よりシャープな遠近感が得られるようになった。
さまざまな機能が強化され、さらにインタラクティブなAR体験が可能になったが、言葉で説明したところで面白さは伝わりづらい。こういった類の技術は実際に試してみるのが一番だ。すでにアップストアには、ARKit1.5を活用したアイデア満載のアプリが続々と登場している。現実とデジタルデータが融合し、世界が拡張していくワクワク感を、ぜひご自身で体験してみてほしい。
ARアプリはiPhoneやiPadで手軽に体験できるが、世界のIT企業が見据える先は、メガネ型デバイスだろう。一部海外メディアは、アップルがARグラスの2020年リリースを目指していると予測している。手に端末を持つ必要がなくなれば、歩きスマホの問題が解消されたり、両手が塞がる現場での作業効率向上につながったりと、新たな可能性も広がる。ARKitの進化によって、SF映画のような体験は、実はすぐそこまで迫ってきているのだ。
未来のマイホームを覗き見!
建築前の自宅を探訪
近年は、住宅の建築前、日当たりのシミュレーションなどの目的で、図面から3Dモデルを製作することが多いという。そこで、そのデータを有効活用し、実寸大の住宅内を擬似的に歩けるようにしたのが「QHOME」だ。住宅の3Dモデルの中を歩いて確認できるので、よりリアルな自宅の完成イメージを共有できる。AR技術によって現実の景色と重ねられるため、窓からの景色をチェックし、窓の位置やサイズを変更するといった使い方も可能だ。工務店でCOLLADA形式の3Dモデルのデータをもらえば、自分でこのアプリに取り込んで使うことができる。
3Dモデルの中を自分で歩き回ることで、図面だけでは把握しづらい、部屋の体感的な広さなどを事前にシミュレーションできる。
印刷したマーカーを画面にかざすと、建設予定の住宅の場所や方角に沿った位置合わせが一瞬で完了する機能もある。
飛び出す絵画でアートを勉強しよう
目の前に絵画が現れる
ロンドンにあるナショナル・ポートレート・ギャラリーの世界的に有名なコレクションの絵画のひとつ、サー・ヘンリー・アントンの肖像画を目の前で鑑賞できるアプリ。ARKit1.5の垂直面の検出機能を活用しており、最初に床面を設定すると、壁を認識して空間内に作品が登場する。絵画の解像度は8Kなので、画面を近づけて細かな筆のタッチも見られる。
作品をタップすると、絵の要素ごとに分解されて飛び出してくる。インタラクティブにアートを学べる教育アプリだ。
iPadを仮想の絵画に近づけることで、細部までじっくりと作品を楽しめる。美術館と違い、仕切りを気にせず鑑賞できるのもARアプリのメリット。
現実世界に案内ルートが出現!
方向音痴の救世主
マップアプリでルート検索しても、正しい方向がわからず反対の道を進んでしまった経験はないだろうか。このアプリでは、現実の景色にルートを重ねて表示することで、より直感的に進む方向がわかるようになった。途中には「あと○m」といった案内看板が立っていたり、ゴール地点にヤフー!の公式キャラクター「けんさく」が待っていたりと、ARならではの細かな演出も用意されている。現在は歩きスマホにならないよう注意する必要があるが、ARグラス時代にはもっともニーズの多い機能のひとつとなりそうだ。
新宿パークタワーまでの道のりをARルート案内で体感。道の上に進行方向を示す青いルートが表示されている。どの方角へ進めばよいかひと目でわかり便利だ。
AR機能を使うには、目的地を設定し、画面右上の[ARモード]をタップするだけ。同じ方法でARモードから地図モードに切り替えることもできる。
歩いてきた道には足跡がつくため、来た道に間違って戻ってしまう心配も不要。足跡には、靴、裸足、動物の肉球など、さまざまなパターンがあり楽しませてくれる。
空中で一緒に落書き
空間を落書きで共有
ARを活用した新たなコミュニケーションの形を見せてくれるアプリ。相手とアプリ内でビデオ通話すると、自分の描いた絵が相手の画面上にも表示される。お互いの落書きを、リアルタイムに重ね合わせて楽しむことも可能だ。別々の場所にいるのに、まるで同じ空間をシェアしているような感覚を味わえる。落書きはアプリからそのまま、インスタグラムやツイッターなどのSNSにも共有できる。縦横だけでなく奥行きも認識するため、歩いて位置を変えると、落書きの形が違って見えるところもおもしろい。
空間上にペンで線を書いてみた。落書きした様子は動画で撮影し、シェアすることもできる。SNSでの反応もよさそうなアイデアアプリだ。
画面下には、相手のアイコンが吹き出しで表示されている。これは相手が今空間のどのあたりにいるかを表しており、同じ場所を向くことで落書きの“共同作業”もできるのだ。
開発者によると、わかりやすさと使いやすさを追求するため、あえてスタンプなどの機能を省いたという。
床を“掘って”宝探し
ありえない体験を楽しむ
子どものころに多くの人が経験したであろう宝探しゲームを、アプリで手軽に楽しめる時代になった。遊び方は、まず空間をアプリに認識させて、隠す側がお宝を埋める場所を指定する。画面上で床に穴を掘って宝箱を埋めたら、探す側にiPhoneをバトンタッチ。隠し場所までの距離のヒントを参考に、宝箱のありかを探し当てるゲームだ。外よりも屋内の床を使ったほうが、現実ではありえない体験ができるだけに面白い。
間違った場所ではシャベルが跳ね返り、正解であれば穴が掘られ宝箱が取り出せる。正誤判定が意外と厳しく、ピンポイントに位置を指定しないと正解にならない。
室内の床がバキバキに割られ、穴が作られるリアルなアニメーションに思わず笑ってしまう。子ども受けがよさそうなアプリだ。