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“Sticky”さで米国浸透中のMercari

著者: 三橋ゆか里

“Sticky”さで米国浸透中のMercari

アメリカの東海岸に住む友人から「メルカリすごく売れるよ」と聞いたのは、たしか1年ほど前のこと。でも、当時は着なくなった洋服は古着屋さんで売ったり寄付したりしていたので「へー、それなりにユーザがいるんだ」程度にしか思っていませんでした。

2017年末のメルカリのダウンロード数は世界で1億を突破。これは日本・アメリカ・イギリスの合算値で、内訳は日本が6000万件強、アメリカが3000万件(2014年9月リリース)。ゲームなどを除くと、日本の消費者向けプロダクトがアメリカで成功した例は皆無に等しいため、快挙です。

特にここ半年くらいで、メルカリのキテる感を感じるようになりました。ユーチューブでメルカリのコマーシャルを頻繁に見かけるようになったのです。気をつけて見ていると、メルカリのプロフィールページへのリンクを貼っているママブロガーなどが目立ってくるように。

ユーチューブでMercariと検索すると、メルカリのレビュー動画がいくつも投稿されており、中にはアメリカ発の人気ファッションフリマアプリ「Posh

mark」とメルカリの比較動画まで。Posh

markはファッションに特化しているため、メルカリの魅力は“何でも売れる”ことのようです。

遠方にいる人と物の売り買いができる手軽なアプリは、これまで存在しませんでした。ユーズド商品の売り買いには老舗のeBay(イーベイ)がありますが、厳密にはオークションで、かつPCからスタートしたサイトです。その他の物の売り買いアプリには「OfferUp」や「let go」など、商品を手渡せる近所の人との取引に特化したものが目立ちます。

これは自分で試してみるしかないと思い、さっそくアカウントを開設。セットアップはとても簡単。売りたい商品の写真をスマホで撮ったら、あとは商品説明や価格などを入力するだけ。送料は、メルカリのシステムを使えば、重さをベースに該当する送料を算出してくれます。価格設定を迷った場合も、類似商品との比較で適正価格を提案してくれるので参考にすることも。

メルカリ人気について教えてくれた友人によると、売れやすい商品は化粧品やガジェット類。一方で売れにくいのは、東急ハンズで売っていそうな便利系の特化型調理/家電グッズだそう。彼女は、日本の商品を販売していることを全面に押し出しており、日本に関心がある人、またジャパンクオリティーの商品を求める人などが購入していくといいます。

わたしが売りに出しているナチュラルコスメ系(パラベンなど人体に有害だとされる成分を含まない)はブランドの知名度が低いため、すぐには売れません。とはいえ、アイテムをお気に入りにしたり、質問をしてきたりする人はチラホラ。最速で売れたのは、人気の洗顔器で、出品後1時間ほどで買い手がつきました。

ユーザが増えてきたことで「出品した商品が売れる」という成功体験を早々に味わうことができ、俗にいう“スティッキー”(ユーザを捉えて離さない)なプロダクトになりつつあるメルカリ。おもちゃの箱を連想させる可愛らしいイメージの日本のロゴに代わって、アメリカ版のロゴは最近シンプルなMマークのデザインに刷新されました。

今年4月に古着のフリマサービス「Thredup」が公開した調査結果によると、ユーズドアイテム市場は2020年までにファーストファッション市場を上回る見込みとのこと。大量消費や環境へのインパクトを懸念するミレニアル世代を筆頭に、メルカリのようなアプリにとって絶好のタイミングが訪れているのかもしれません。

Yukari Mitsuhashi

米国LA在住のライター。ITベンチャーを経て2010年に独立し、国内外のIT企業を取材する。ニューズウィーク日本版やIT系メディアなどで執筆。映画「ソーシャル・ネットワーク」の字幕監修にも携わる。【URL】http://www.techdoll.jp