このところ、iPhoneで撮影した映像作品やミュージックビデオを見かける機会が増えてきた。どれも「本当にiPhoneで撮ったの?」と疑ってしまうほど印象的な映像ばかりで、いったいどのように撮影されているのか不思議に思った人もいるだろう。実は、そうした映像のいくつかは「FiLMiC Pro」というアプリを使って撮影されている。
プロも認めるクオリティ
最近、一部の映像クリエイターの間で、「フィルミック・プロ(FiLMiC Pro)」というiOSアプリが話題を集めている。iOS標準のカメラアプリと違って多彩な設定ができる点が評価されており、世に出ているいくつかの映像作品はこのアプリで撮影したと明かされている。
フィルミック・プロと標準のカメラアプリとの機能差を挙げればキリがないが、筆頭に挙げたいのは動画のフレームレートを幅広い範囲から設定できる点だ。標準のカメラアプリでは30fpsと60fpsのみだが、フィルミック・プロでは24fpsから240fpsまでの8段階から選択できる(240fpsは最新機種のみ)。高フレームレートに設定すれば被写体の素早い動きも滑らかに捉えられるようになるし、映画の基本フレームレートである24fpsで撮影すれば、それだけで映画のような印象に仕上がってしまうから不思議だ。
また、より本格的な映像手法を使える点もフィルミック・プロの魅力の1つ。たとえばピント合わせでは、ビデオカメラや一眼レフカメラのようにピントリングを回す感覚でフォーカスすることができる。最初はあえてピントをずらしておき、徐々にピントが合っていくという演出が可能になるわけだ。
さらに、ズームスピードもコントロールできるので、一定速度でじわじわとズームするといった撮影もできてしまう。このように「意図に合わせてカメラをマニュアルコントロールする」といったことは、標準のカメラアプリには到底できない芸当である。
編集工程を考慮した撮影も
また、本格的な映像作品を作るなら、後工程でのカラーグレーディング(色調調整)も考慮して撮影したいもの。フィルミック・プロは、あとで色調調整しやすい「LOG撮影」というモードを備えている。LOG撮影では、白飛びや黒つぶれを極力排除し、全体的にフラットな状態で撮影を行う。撮影した映像素材だけを見るとメリハリがないと感じるが、映像編集をする際にはこの素材のほうが扱いやすい。色味や明るさを変えたいときに、階調が破綻するのを抑えられるからだ。iOS用の動画カメラアプリはほかにも多数リリースされているが、LOG撮影に対応したものは現状このアプリだけといっていいだろう。
フィルミック・プロはこれ以外にも、ホワイトバランス変更による色彩コントロールやISO感度/シャッター速度の変更など、多くの機能を備えている。1800円の有料アプリだが、その金額の価値は十分にある。このアプリを活用する人が増えていき、iPhoneを使った印象的な映像作品が次々と世に現れることを期待したい。