今年2月渋谷にオープンした、ロボットがドリップコーヒーを入れてくれるカフェ「変なカフェ」。足を運んでいないのでその美味しさのほどは不明ですが、サードウェーブ系のコーヒー店に比べれば、各種ドリンクが100円ほど安く提供されているようです。
コーヒーといえば、サンフランシスコで3店舗展開するのが、コーヒーバー「Cafe X」。無人のコーヒーバーでは、地元のロースターの豆数種を選べるだけでなく、ラテや抹茶ラテなどカフェの人気メニューを網羅。物価が高いサンフランシスコで、ラテが3ドルはかなりリーズナブルです。
人間の労働を置き換えるロボットの導入は、雇用が奪われるという文脈で語られがち。でも最近、人材不足という課題解決の策としてロボットを導入する動きがあります。時間をかけて育てても短期間で辞めてしまい、人材の維持に悩むファーストフード店がロボットを活用し始めているのです。
この課題は、マクドナルドのような大手チェーンだけでなく、ファーストフード業界全体に共通している模様。たとえば、常時20名のスタッフが必要な店舗では、高い離職率によって年間30名を雇用しないと回らないんだとか。1995年以来の離職率の高さで、ファーストフード店は対策を急がれています。
人材が離れる理由は、給与はそのままに作業量ばかりが増えているため。モバイルアプリ、タッチパネルキヨスクを使った精算機、オンデマンドフードデリバリーサービスなど、 店舗来店者だけに対応していた時代に比べて店員のやることが増えています。
店舗の人材不足によって一番影響を受けるのは、ほかならぬ顧客です。少ない人材でオペレーションを無理に回そうとすれば、当然顧客の待ち時間は増えます。ブルームバーグによると、マクドナルドのドライブスルーの待ち時間は2016年に比べて30秒長い、239秒だそうです。
このような状況への救世主として、今年3月頭に導入されたのが「フリッピー(Flippy)」というハンバーガー調理ロボット。フリッピーを導入したのは、ロサンゼルスの内陸に位置するパサデナという地域の「Caliburger」というチェーン店です。
ハンバーガーをつくる作業は人間とロボットの共同作業。フリッピーの役割は、パテを焼くこと。味付けしたパテをスタッフがトレイに並べると、フリッピーがそれをひとつずつ取り出して温度調整をしながら焼き上げていきます。1台10万ドル(1ドル100円の単純換算で1000万円)のハンバーガーロボットは、1日最大2000個に対応しています。
ロボット導入で同じ品質の商品が提供されるなら、導入に賛成する顧客も少なくないはず。というのも、少なくともこちらではブルーボトルのような人気店ですら、作った人によって飲み物や食べ物の出来にバラツキがあるからです。
ファーストフード店を辞めていく人員は、スーパーの会計やアパレルショップで働くほうがいいと考えているそう。それこそ、サージ(需要に応じて乗車料金が高くなる配車サービスの仕組み)の時間帯を狙って運転手として働くほうがより稼げるかもしれません。
でも、そんなことを言っていられるのも今のうち。今後、ファーストフード店に限らず、とりわけ単純作業の自動化は加速の一途をたどります。自動運転車や衣類をたたむ専用ロボットなどが進化すれば、あらゆる作業を人間よりうまくこなしてくれるはず。こうしてロボットが人間の仕事を着々と肩代わりしていった未来に、人間に仕事を選り好みする贅沢は残されていないでしょう。
Yukari Mitsuhashi
米国LA在住のライター。ITベンチャーを経て2010年に独立し、国内外のIT企業を取材する。ニューズウィーク日本版やIT系メディアなどで執筆。映画「ソーシャル・ネットワーク」の字幕監修にも携わる。【URL】http://www.techdoll.jp