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Pixelmator Proで一歩上のグラフィック編集を

著者: 小平淳一

Pixelmator Proで一歩上のグラフィック編集を

Macの定番グラフィックソフト「Pixelmator」から、「Pixelmator Pro」というプロ向けツールが登場した。インターフェイスも機能も大きく刷新したこのソフトは、まさに画像を扱う「プロ」の要求にも応える、頼り甲斐のあるツールに仕上がっている。使い勝手も良く、あらゆるMacユーザにおすすめしたいソフトだ。

新たなプロ向けの定番

Macで写真を細部まで補正したいときやWEB・SNS用に画像を加工したいというとき、どんなソフトを使っているだろうか。

画像を加工するためのツールといえばアドビシステムズのフォトショップがメジャーだが、業務でグラフィックデザインをしている人でなければ、アドビのツール群は少々ハードルの高い選択肢になる。そんなフォトショップに代わるものとして、今ぜひおすすめしたいのが「ピクセルメーター・プロ(Pixelmator Pro)」だ。

ピクセルメーターは、もともとMacのハードウェア性能を十分に引き出せるツールとして定番グラフィックソフトの地位を築き上げてきた。そして昨年末、インターフェイスを一新し、まったく新しいソフトとしてリリースされたのがピクセルメーター・プロだ。単に見た目が変わっただけでなく、写真の補正・編集・加工からグラフィックデザイン、ドローイングまで多様なクリエイティブ用途に使える高品質な機能を搭載し、これまで以上に「頼れる存在」へと進化している。

Pixelmator Pro

【開発】UAB Pixelmator Team

【場所】Mac App Store>グラフィック&デザイン

【価格】7400円

【URL】http://www.pixelmator.com/pro/

プロ向けツールとして登場したPixalmator Proは、見た目の進化だけでなく、高度な画像処理・グラフィックデザインを望むユーザに応えられる機能も数多く搭載している。なお、公式サイトでは30日間の試用版も公開中だ。

非破壊へのこだわり

まずは、大きく変わったインターフェイスについて注目してみよう。ピクセルメーター・プロは、今どきのソフトウェアインターフェイスの考え方を取り入れ、シングルウインドウのシンプルなインターフェイスを採用。しかも通常版の使い勝手に引きずられることなく、ユーザにとって使いやすい画面構成をいちから編み出している。

ピクセルメーター・プロの画面構成は、ウインドウの右端にツールアイコンが置かれ、その隣にツールの設定エリア、キャンバスエリア、そして左端にレイヤーエリアという順序で並んでいる。選択したツールに応じて、隣の設定エリアに表示される項目が切り替わる仕組みだ。たとえば[カラーを調整]を選べば、設定エリアにはホワイトバランスや露光量といった調整スライダが表示されるし、[ペイント]を選べば、ブラシサイズを変えるスライダやブラシ形状の種類が表示される。どんな設定ができるのかが瞬時にわかる、非常に合理的なインターフェイスだと感じる。

すっきりとしたシングルウインドウに変貌

これまで複数のパレットによって構成されていたインターフェイスから、シングルウインドウへと刷新。シンプルになったことで、どんな機能があるのか、どのような設定ができるのかもわかりやすくなった。

一方、機能面にも大幅な改良が施されている。先に述べたとおり、ピクセルメーター・プロは画像加工に関する多彩な機能を揃えているが、それらの機能を「非破壊編集」することにとことんまでこだわって実装しているのだ。

たとえば、風景写真に別カットの人物を合成する作業を考えてみよう。まずは風景の上に別のレイヤーとして人物写真を配置し、大きさを縮めたり傾きを調整したりして配置を決めたあと、カラーバランスや明るさを調整していくという流れになるだろう。このとき、もし途中で人物の大きさを変更したいと感じた場合、ほかの多くのグラフィックソフトでは人物を配置する段階まで作業を遡らなければならない。なぜなら、一度小さく配置してしまったものは本来存在していたピクセル情報が失われてしまい、再び拡大するとぼやけたり輪郭がガタガタになってしまったりするからだ。

一方ピクセルメーター・プロの場合、配置した画像を変形したり、角度を変えたり、色調補正やフィルタをかけたりしたあとでも、元画像のピクセル情報が保持される。この例でいえば、色調補正をしたあとであっても再度大きさの調整ができるというわけだ。

ただし、修復ブラシなどで画像の一部を描き換えてしまうと、元の情報は失われてしまう。ブラシ系のレタッチまで含めて非破壊編集が実現できれば申し分ないが、その点は今後の進化に期待したいところだ。

徹底した非破壊編集

色調補正はもちろん、各種フィルタやゴミ除去といった処理も含め、すべて非破壊で編集が可能。いつでも(保存して再度開いたあとでも)元の状態を取り戻せる。

レイアウト機能も充実

レイヤーの整列などレイアウト機能も充実しており、WEBバナーなどのデザインにも役立つ。また、レイヤーの回転や拡大なども非破壊編集で、変形前の状態を取り戻せる。

ドローイングソフトとしても活躍

豊富なブラシプリセットが搭載されており、ドローイングツールとしても活躍する。大きなキャンバスでも、レスポンスは極めて軽快だ。

AIを使った画像処理

また、「AI」をさまざまな機能で取り入れていることも大きな変更点だ。修復ブラシではAIによって自然に不要物の除去が行えるようになっているほか、トリミング時にAIが画像の水平線を見つけて提案してくれたり、画像にほかの画像をレイヤーとして追加したときには、そのレイヤー名をAIが自動で付けてくれるといった機能もある。

今のところ、AIを活用したこれらの機能にありがたみを感じることはあまり多くないが、取り組み自体は大いに評価したい。

AIを活用したレタッチ機能

修復ブラシツールは、AIを活用することによりインテリジェントに不要物を除去することができる。簡単な操作で美しいレタッチが実現する。

ピクセルメーターというのは以前からMacのハードウェア性能を十分に引き出せることが特長であり、macOSが持つグラフィックAPIの「メタル(Metal)2」や「コアイメージ(Core Image)」を活用することで、負荷の高い処理をストレスなく実現できるのが強みだった。しかし、コンピュータのCPUやストレージの性能が上がってきた昨今、既存のレタッチ・デザイン作業で発生する処理が高速であることは、もはや大きなアドバンテージではなくなってきている。こうした状況において、ピクセルメータ・プロはAIを積極的に活用して、複雑な処理を自動化できるような機能を強みにしていくのではないだろうか。今後AIを活用する機能が増えていけば、従来人間の勘や経験が必要だった作業もピクセルメーター・プロなら一瞬で行ってくれる、といった進化が期待できる。

ハードウェア性能を有効に引き出す

Metal 2やCore Imageなど、Macのハードウェアが本来持っているグラフィック機能に対応しているため、複雑なエフェクトも高速で処理できる。

傾き補正もAIを活用

また、傾き補正にもAIが活用されているという。自動で水平線などを判断し、補正案を提示してくれる。

プロの名は伊達じゃない

「プロ」という表現は、ソフトの上位版を示す言葉として安易に使われがちだ。しかしピクセルメーター・プロは、安易な上位版としての「プロ」ではなく、真にクリエイティブプロのニーズに応える存在に仕上がっている。

非破壊編集は、クライアントの要求によってビジュアルの変更が発生するプロの現場には大きな恩恵であり、また、大量のレイヤーがあるような画像もMacのハードウェア性能を十分に引き出すことでストレスなく扱えるという点も、プロのニーズに合致する。

そんなツールが7400円という価格で手に入るのは魅力的なことであり、極めてコストパフォーマンスの良いグラフィックツールだと感じる。公式サイトには30日間無料で使える試用版も公開されているので、ぜひ多くのMacユーザに試してみてほしい。