Macには、さまざまなモデルがありますが、現行製品のすべてがおすすめとは言えません。Mac miniやMacBook Airのようにリリースされてからかなりの時間が経ち、スペックやコンセプトが時代遅れになっているモデルもありますし、そろそろ大幅なモデルチェンジが行われる可能性があるMac Proというモデルも存在しています。ほかにも「おすすめしない」理由にはさまざまな点がありますが、該当するモデルを購入しようと思っていた人は、これを読んでもう一度考えてみてください。一方、「Macは買いたいときが買いどき」であり、「製品選びで何が大切か」も人によって変わってきます。本記事はあくまでMac Fanの見解であり、すべての人に当てはまるわけではありません。用途によっては、ここに取り上げたマシンがベストチョイスになる場合だってあります。肝心なのは自分の使い道を想定すること。あれこれ思いを巡らすことで、必要なMacが見えてくると思います。
iMac Pro
価格:55万8800円(税別)~
SPEC(標準モデル)
●3.2GHz 8コアIntel Xeon Wプロセッサ
●27インチ 5K Retinaディスプレイ
●32GB 2666MHz DDR4 ECCメモリ
●1TB SSDストレージ
iMacのデザインをほぼそのまま引き継ぎつつ漆黒のカラーを身にまとったAppleの新しいフラッグシップマシン、それがiMac Proです。外観こそ従来のiMacを踏襲しているものの、内部はこれまでとは一線を画すレベルのものです。最大18コアまで選択可能なワークステーションクラスのCPU、最高レベルのGPU、エラー訂正機能つきDDR4メモリなどモンスター級のテクノロジーを備え、それらのパフォーマンスを最大限に発揮できるよう、冷却機構も一から見直されています。まさに究極のオールインワンと呼ぶにふさわしい存在です。
限定されたターゲット
iMacプロが圧倒的な性能を備えていることは、もはや疑念の余地がありません。それでも、あえて「おすすめしない」とする理由は、ほとんどの人にとってオーバースペックだからです。「プロ」の領域には、デザイナーやフォトグラファー、アプリ開発者など、さまざまな人が含まれると思いますが、たとえばグラフィックデザインの分野において、iMacの上位モデルでも満足できない状況は極めて限られるでしょう。
iMacとの差を感じられるか
iMacでは、ストレージ速度がボトルネックになると考えるのなら、カスタマイズでSSDを選択する手もあります。iMac 5Kの最上位モデルに1TBのSSDを搭載し、さらにメモリ容量を32GBにアップグレードを施しても、価格は38万5800円(税別)で収まります。こうしたiMacのカスタマイズモデルと比べてなお、55万8800円(税別)からというiMacプロでなければ性能が不足するケースは非常に限られています。
もちろん、VRコンテンツやHDR/5K動画の編集、3DCGの作成といった用途でより高速な処理を望む人にとって、iMacプロは十分検討に値します。スペックに対するコストパフォーマンスもけっして悪いものではなく、負荷の高い処理では費用に見合った効果を上げてくれるはずです。
Mac Pro
価格:29万8800円(税別)~
SPEC(標準モデル)
●3.5GHz 6コアIntel Xeon E5プロセッサ
●16GB 1866MHz DDR3 ECCメモリ
●256GB SSDストレージ
ハイエンドマシンとは思えないほどのシンプルでミニマルなフォルム。今のMac Proのデザインは、ハイエンドマシンのまったく新しい形として2013年に登場しました。光学式ドライブの廃止やSSDへの完全移行などにより、従来のMac Proに比べ圧倒的なコンパクトさを実現。筐体内部にはロジックボードなどがヒートシンクを囲むように配置され、その革新的な冷却機構が高パフォーマンスを支えています。汎用のSSDやGPUの交換・増設といった内部拡張は不可能ですが、豊富なポートによって外部拡張性を高めているのもMac Proの特長です。
進化の遅れが課題
2013年の登場当時は革新的だった現行Macプロも、今やアップルの標準的な技術進化から取り残されつつあります。
その最たるものが、サンダーボルトです。Macプロには6基のサンダーボルト2ポートが搭載されていますが、iMacなど現在のMacラインアップではサンダーボルト3が主流になっています。転送速度に注目すると、サンダーボルト2が最大20Gbpsなのに対し、サンダーボルト3は2倍の40Gbps。4Kビデオ編集などでは高速な外部ストレージの利用が求められますが、現行のMacプロではその最適解が得られないという事態が発生しています。
また、メモリ規格に関しても、現行iMacに比べると一世代前のもの。Macプロは、アーキテクチャ刷新の必要性を指摘されながら、長い間その声に応えられていない現状があるのです。
異例のロードマップ発表
アップルは、こうした世間の指摘に対し、「設計を根本的に見直した新しいMacプロを2018年にリリースする」とアナウンスしています。製品のロードマップを前もって発表するというのは、アップルとしては極めて異例なことですが、それだけユーザからの反発を重く受け止めたということでしょう。
こうした背景を踏まえると、Macプロが視野に入ってくるプロユーザはiMacプロを検討するか、新Macプロの登場を待つべきでしょう。
Mac mini
価格:4万8800円(税別)~
SPEC(標準モデル)
●1.4GHzデュアルコアIntel Core i5
●500GB HDD
●4GB 1600MHz LPDDR3メモリ
現状もっとも低価格なMac、それがMac miniです。わずか19.7cm四方、高さ3.6cmのコンパクトなボディで設置場所に困らないというのも特長で、ちょっとしたメディアサーバや、テレビにつないでリビングMacとして使うという運用も考えられます。キーボードやマウス、ディスプレイは付属していないため追加で購入する必要がありますが、これまで使っていたものをそのまま引き継いだり、Windows PCのデスクトップ機と1つのディスプレイを共用で使えるのもメリットの一つだといえるでしょう。
数世代前のスペック
Macプロと同様、Macミニもテクノロジーのアップデートが遅れています。現行モデルのスペックは2014年当時のもの。プロセッサは第5世代インテル・コアですし、メモリ規格、そしてサンダーボルト3に未対応な点など、アーキテクチャは数世代前のものだといわざるを得ません。
メールやWEBブラウジングが中心であればこのスペックで構わないかもしれませんが、文書作成やデザイン用途を行おうとすると、細かなところでストレスを感じる可能性があります。
コストメリットがあるか?
さらに、Macミニのラインアップを眺めてみると、下位モデルの4万8800円という価格は魅力的ですが、1.4GHzのデュアルコアCPUや500GBのハードディスク、4GBの搭載メモリというのは、ハイ・シエラを起動したらほとんどゆとりがありません。このため、カスタマイズで8GBにするのは必須となっており、それだけで税込み6万円台になってしまいます。
最上位モデルを選べばスペックも上がり、特にフュージョンドライブが搭載されるため全体的なレスポンスも向上しますが、これだと価格が9万8800円に跳ね上がります。あと2万円ほど上乗せすれば、現行iMacの下位モデルに手が届くことになるのです。ディスプレイ一体型はどうしても避けたい、というなら話は別ですが、今あえてMacミニを選ぶメリットは少ないといえるでしょう。
Mac miniの歴史
インテルプロセッサ採用後のMac miniの歴史をまとめました。このようにアップデートのない年は過去2回あったものの3年以上もアップデートされないのは初めてのことです。このまま終息してしまうのか、フルモデルチェンジを暖めているのかはAppleのみぞ知るところですが、今買うのが得策ではないのは確かです。
MacBook Air
価格:9万8800円(税別)~
SPEC(標準モデル)
●1.8GHzデュアルコアIntel Core i5
●13.3インチディスプレイ
●128GB SSD
●8GB 1600MHz LPDDR3メモリ
2008年に「世界最薄」を謳って登場したMacBook Air。リリース当初はモビリティ重視のプレミアムモデルという立ち位置でしたが、その後、手頃な価格で購入できるエントリー向け製品として、Macのノートブック市場を長い間牽引してきました。後続の製品群によりすでに世界最薄ではなくなりましたが、サイズや重量のトータルバランスは今もなお高いといえます。また、最大12時間のワイヤレスインターネット閲覧ができるというバッテリ持続時間も、MacBookエアの魅力。出張時など電源が確保できない状況が続いても安心です。
MacBookの存在
現行のMacBookエアがイマイチおすすめできない要因の1つに、MacBookの存在が挙げられます。2015年に登場した現行デザインのMacBookは、Mac
Bookエアよりも薄くて軽いボディを実現しました。
リリース直後は搭載されている外部ポートがUSB│Cだけという点が不安視されましたが、今やUSB│C対応の周辺機器も増え、不安が払拭されつつあります。そんなMacBookに比べ、MacBookエアは価格が安い点やバッテリ持続時間が若干長く、コアm3やm5プロセッサより高性能というメリットはあるものの、独自の強みがすでに打ち出せなくなってきました。
そもそも「MacBook」という呼称は、ノートブック型エントリーモデルの代名詞として長い間使用され続けていました。ところが数年前にMacBookという製品がラインアップから一時的に消え、エントリーモデルの立ち位置をMacBookエアが埋めるという状況になっていたのです。しかし、MacBookが復活したことでお互いの立ち位置が重なっている状況であり、この先ラインアップが整理される可能性もあります。
そのとき、MacBookエアが新たな立ち位置を与えられて棲み分けがなされるのか、それともMacBookエアというラインアップが消えてしまうのか…。MacBookエアが置かれている状況は非常に不透明です。
イマドキのMacらしさが不足
また、MacBookエアは、レティナディスプレイに対応していないのも難点だといえます。レティナディスプレイは、写真はもちろん文字の美しさと読みやすさも格段に異なり、WEBブラウジングや文書作成など、あらゆる作業に大きく影響してきます。さらに、感圧タッチトラックパッドやシザー構造のキーボードも搭載しておらず、イマドキのMacBookシリーズらしい使い勝手が十分に得られないというのが残念なところです。
サブマシンとして割り切って使うなら選択肢になり得ますが、可搬性という面でもやはり12インチMacBookのほうが優れています。新たにMacライフをスタートさせるマシンとしては少々物足りなさを感じるのではないでしょうか。
MacBookがバタフライ構造の薄いキーボードであるのに対し、MacBook Airは従来からのパンタグラフ型キーボードを搭載しています。深い押し心地が欲しいならエアを選ぶという手もありますが、それだけでは決め手に欠けるのではないでしょうか。