Appleの昔を振り返るこのシリーズ企画。第三弾は、「懐かしのApple周辺機器」です。近年のAppleは、純正の周辺機器をあまり多くリリースしていませんが、遡ってみると昔は実にさまざまなアイテムが存在しました。中にはデジタルカメラやPDA、マルチメディア機など、今では到底考えられない意欲的な製品も…。Appleがどんな道を歩んできたのか、その一端を見ていきましょう。
5.25インチのデュアルフロッピードライブ
Disk II[1978年夏発売]
Apple IIはデータ記録用にカセットレコーダを内蔵していましたが、読み書きに時間がかかりました。そこでAppleは独自に「Disk II」という5.25インチのフロッピーディスクドライブ・システムを設計。それによってApple IIが愛好家向けのデバイスからコンピュータに進化し、表計算ソフト「VisiCalc」などを利用できるようになったことが同モデルの成功につながりました。
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マウス登場前のコントロールデバイスの傑作
Apple II用ジョイスティック[1983年冬発売]
1977年に発売開始されたApple IIは、当時としては高い解像度でカラー表示をサポートしていたことからテレビゲームファンを惹き付けました。ゲーム用のジョイスティックやパドルは基板上のコントローラ用端子に接続するようになっていましたが、1983年に登場したApple IIeで背面に専用ポートが用意され、簡単に着脱可能に。そのゲームポートに対応する純正コントローラとして、Appleが用意したコントローラの1つが「Apple II用ジョイスティック」です。Apple IIe、Apple IIc、Apple IIGSで使用できます。
Appleのドットマトリックスプリンタ
Imagewriter[1983年冬発売]
故スティーブ・ジョブズ氏はグラフィカルインターフェイス(GUI)とともに、ディスプレイで見たものを見たまま得るWYSWIG(What You See Is What You Get)にも強いこだわりを持っていました。今でこそドットがわからないような高解像度で高精細なディスプレイに美しい文字やグラフィクスを表示できますが、かつては印刷しなければただの電子的なデータでした。初代Macintosh発表前の1983年後半に登場したシリアル接続のドットインパクトプリンタである初代Imagewriterの頃から、WYSWIGの実現を目指していたのです。
DTP革命を起こしたプリンタ
LaserWriter[1985年春発売]
LaserWriterは、LBP-CXというキヤノン製レーザプリンタ・エンジンとAdobe Systemsのページ記述言語・ポストスクリプト(PostScript)を組み合わせて、300dpi程度の解像度で緻密な印刷を実現しました。初代モデルの価格は6995ドル。高額でしたが、LocalTalkによって1台のプリンタを複数のMacで共有できます。LaserWriterとともにアルダスがレイアウトソフトのPageMakerをリリースし、パソコンでデザインしたままの印刷を得られるWYSWIGが出版社やデザインオフィスに浸透、デスクトップパブリッシング(DTP)というデジタル革命が瞬く間に広まっていきました。
プラットフォームの垣根を越えた周辺機器
Apple 3.5" Disk Drive[1986年秋発売]
コンピュータ向けに5.25インチのフロッピーディスクが普及したあと、Appleはよりコンパクトで十分な容量があり、信頼性の高い3.5インチの採用に積極的でした。1984年に登場した初代Macintoshは3.5インチ(400Kバイト)のフロッピーディスクドライブを搭載しています。それから2年の間に、同社は3種類の3.5インチ(800Kバイト)の外付けフロッピーディスクドライブをリリースしました。1つはApple IIシリーズ向けの「UniDisk 3.5」、次にMacintosh向けの「800K External Drive」。そしてApple IIGSと共に発売した「3.5" Disk Drive」です。最大の特徴はApple IIシリーズとMacintoshで共有できることです。1986年にAppleは周辺機器のプラットフォーム依存をなくし、広く共有できる方向に舵を切り始めました。3.5" Disk DriveはApple IIの機能であるディジーチェーン(複数機器の数珠つなぎ)接続に対応し、Macintosh 128Kや512Kでは400Kバイトのみになりますが、Macintoshでもネイティブに動作しました。
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元祖ドッキングステーション
Duo Dock[1992年秋発売]
1992年10月に登場した初代PowerBook Duoのインターフェイスは貧弱でした。代わりに、背面に152ピンというドッキング専用コネクタを搭載しており、このDuo Dockの中にすっぽりとPowerBook Duoを入れ込むことでインターフェイスを拡張することができました。液晶ディスプレイを閉じた状態で、本機のスロットに入れてドッキングするという実にユニークなスタイル。室内ではデスクトップタイプとしてDockに収めてまったく性能の異なるマシンに、外出時には軽量なノートブックとして使用できました。
“未来のメディア”用専用ドライブ
Apple CD 150 External CD Rom Drive[1992年発売]
3世代目の外付けCD-ROMドライブ。音楽用だったCDというメディアがコンピュータの記録媒体としても使われるようになったのが1990年の初頭。1.4MBのフロッピーディスクと比較して、540MBの容量を記録できるCD-ROMは夢のようなメディアでした。CD-ROMの読み込み速度は1倍速。
PDAという言葉を生み出したハンドヘルド端末
Newton MessagePad 100[1993年夏発売]
「Newton MessagePad 100」は、1993年から1998年にかけて販売された世界初のPDA(個人用携帯情報端末)です。ディスプレイは336×240ピクセル、モノクロLCDでバックライトはありません。プロセッサはARM 610、640KBのRAMと4MBのROMを備えます。メモ帳を意識したスクリーンサイズで、片手で持ってペン入力しやすいデザイン。第二世代のMessagePad 110では、Appleに入社したジョナサン・アイブ氏がデザインを担当し、持ちやすさに磨きがかかりました。しかし、当時は胸ポケットに入るような手帳をイメージした人たちから大きすぎると酷評されました。
機能的にも、赤外線を使った名刺情報の交換、パソコンとの情報同期など、PDAとして時代を先取りしていました。アプリケーション開発も参入しやすい環境ではありませんでしたが、Newtonに興味を持った数多くのサードパーティがソフトを出してきました。それでも商業的に失敗したのは、値段が高く、また売りであるペン入力の文字認識精度が低かったからでしょう。期待を喚起できたものの、実際の利用体験で満足させることはできませんでした。
エルゴノミクスを最大限重視
Apple Adjustable キーボード[1993年発売]
人間工学に基づいて設計されたMac用キーボード。本体が分割でき、右手と左手の部分を最大30度広げて操作しやすい位置に調整可能なほか、パームレストが取り外しでき、タイピングしていないときは手のひらをのせて手の疲労を軽減できました。拡張キーパッドも標準装備。価格は219ドル(5万円前後)と高価でした。
商業的に成功しなかったデジタルカメラ
QuickTake 100[1994年冬発売]
デジタルカメラ黎明期のヒット製品になったカシオの「QV-10」が登場する一年以上も前に、Appleから発売されたのが「QuickTake 100」です。しかし、商業的な成功を収められず、わずか3年で同社はデジカメ事業から撤退。QuickTake 100は、8ミリ(35ミリ換算で50ミリ)の単焦点レンズを搭載し、記録画像は640×480ピクセル。1MBの内蔵ストレージに高画質設定で記録できるのは8枚だけでした。それでいて749ドルと高価。QuickTake 100が失敗した最大の理由を挙げると、デジカメを持つ理由を示せなかったことでしょう。
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Macithoshで昔はテレビを見られた
Appleビデオシステム/Apple TV/ビデオシステム[1995年発売]
Macintoshは単に使いやすいだけでなく、ベーシックなモデルにも高度なマルチメディア機能を実現することができました。「Appleビデオシステム」はビデオ機器やレーザディスクプレーヤなどの画像をMacintoshの画面上で表示するためのもの。静止画や動画の表示や取り込みを行うためのソフトウェアも付属していました。一方、「Apple TV/ビデオシステム」は、Appleビデオシステムの機能に加えて、Macintoshの画面でテレビを見るための機能を提供。付属するTVチューナカードで、VHF、UHF、CATVといった放送を受信できました。
ネット黎明期のカンファレスシステム
QuickTime Conferencing Kit1995年発売
Macintosh用のテレビ会議システムパッケージです。シリアルポートに接続するのではなく、AVMacintoshのビデオポートに接続して使用するカメラで、LANやInternetのネットワークに接続したQuickTime Conferencingのユーザ同士によるテレビ会議を実現。インターネットが加速的に普及してゆく中で、流行が廃り短命に終わった製品でした。
Power Macintoshをもっと高速に
Macintoshプロセッサアップグレードカード[1995年発売]
Macintoshを高速に動作させるためのプロセッサアップグレードガード。対象のMac(LC45、LC575、LC630、Performa 575、Peforma 630)のCPUソケットに取り付けることで、最適化されたアプリケーションでは最大2~10倍の処理速度を実現できました。また、使用するアプリケーションによってMac本来に搭載されているCPUプロセッサへ切り替えが可能。既存のシステムソフトウェアをMacintosh漢字Talk 7.5へアップグレードするCD-ROMも付属していました。
純正のカラースキャナ
Apple Color OneScanner 600/271996年発売
キヤノン製のスキャナをベースにして作られたApple純正のカラースキャナです。300×600dpiの光学解像度と27ビットの読み取り能力を持ち、最大1億3400万色を認識。「OneScannerディスパッチャー」というスキャナソフトに加え、OCRソフトウェアの「e.Typist/LE 2.0」が付属していました。
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Apple History(1)
1976 04・Apple Computer社設立
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1977 06・Apple IIを発売
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1980 07・Apple IIIを発売
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1981 06・スティーブ・ジョブズが会長に就任
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1983 01・Apple IIeとLisaを発表
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1983 04・ジョン・スカリーが社長兼CEOに就任
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1984 01・初代Macintosh発表
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1984 09・Macintosh 512K発表
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1985 09・ジョブズが退社、NeXT設立
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1986 01・Macintosh Plusを発表
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1986 01・漢字Talk1.0リリース
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1987 03・Macintosh SE、Macintosh II発表
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1987 08・HyperCard発表
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1989 01・Macintosh SE/30発表
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1991 10・PowerBook 100発表
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1992 03・Macintosh Quadra 950発表
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1993 06・スカリーがCEOを辞任
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1995 05・Power Macintosh 9500発表
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1996 01・マイケル・スピンドラーがCEO辞任
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1996 12・ジョブズが非常勤顧問として復帰
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1997 03・Twentieth Anniversary Mac発表
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1997 07・ジョブズ暫定CEOに就任
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1997 07・Mac OS 8発表