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「EGWORD」がmacOS High Sierraで動き出す

著者: 氷川りそな

「EGWORD」がmacOS High Sierraで動き出す

古くからMacを使っている人ほどよく知っているであろうワープロソフト「EGWORD」シリーズ。2007年に最終版が販売されて以来アップデートがなく、このまま消えていくのだろうか…と思っていたところ、2017年9月に再び開発が始まったとの朗報が届いた。現在までの情報をまとめてチェックしてみよう。

開発資産を取得

本誌の読者であれば、「イージーワード(EGWORD)」という名前を覚えている方も多いのではないだろうか。1984年から開発・販売されていたエルゴソフト社の日本語ワープロ・ソフトウェアで、Macユーザにとっては縁の深い製品の1つといってよいだろう。

イージーワードは、長らくMac向け製品として不動の人気を誇り、堅実にバージョンアップを重ねながら販売を続けてきた。しかし、競合他社の台頭やソフトビジネス全体の縮小化などさまざまな情勢も影響し、2008年に販売を終了した。翌年1月にはすべてのユーザサポート業務も終了し、会社自体も解散。多くのファンに惜しまれつつも、25年という歴史に幕を閉じたのだった。

しかし、そんなイージーワードが、2017年9月に開発再開されるというニュースが入り、多くのMacユーザを驚かせた。表明したのは、日本語入力ソフト「かわせみ」やiOS向け辞書アプリ「大辞林」などで有名な株式会社物書堂。この会社は、エルゴソフトで働くエンジニアたちがイージーワードの販売終了を契機に独立して生まれた経緯を持っている。今回物書堂は、株式会社コーエーテクモゲームス(エルゴソフトの親会社)から開発資産(ソースコードや開発資料)を譲り受ける形で取得。再び自分たちの手で蘇らせようと、再スタートを果たしたのである。

実は、イージーワードの最終版である「イージーワード・ユニバーサル2(egword Universal 2)」は2007年の最終アップデートまでにmacOSの標準フレームワーク「ココア(Cocoa)」を使ったものに改修されており、可能な限りモダン化された状態になっていた。これが幸いし、macOSシエラまではアップデートなしにそのまま使えていたのだ。

非常に筋の良い設計によって生き永らえ、会社がなくなっても愛用し続ける人がいたイージーワード。だがついに、macOSハイシエラでは正常に動作できないことが発覚。これを解消するにはアップデートを実施するしか方法がないと考えた物書堂が、今回の資産譲渡と開発の再開につながったのだという。

egword Universal 2.1

【発売】物書堂

【価格】未定

【URL】http://www.monokakido.jp/

今回取得した開発資産は、egword Universalだけでなく、ライセンスを受ける形で開発を続けていたかわせみの母体となるegbridge Universalも含まれている。かつての開発メンバーが再びアップデートに取り組む、というストーリーは古くからMacを使っている人ほど深い感動があるのではないだろうか。

日本語文章への細かい対応

現在イージーワード・ユニバーサルは、すでにバージョン2.1として改修に着手されている。現時点ですべての作業が終わっているわけではないが、開発中のものがアプリのベータ版の配布やクラッシュレポートを収集できるプラットフォーム「ホッキーアップ(Hockey App)」を通じて配布されている。試用できる期間が限定されていること、またアルファ版(開発途上かつ動作の安定が保証されていないもの)という制約はあるものの、誰でも自由にダウンロードして使うことができる。

テキストエディタは、ソフトの数こそ多いものの、縦書きや禁則処理、原稿用紙モードへの対応といった日本語特有のニーズにきめ細かく対応したものとなるとほとんど見当たらないのが現状だ。

使いやすい日本語ワープロを望む声は多いが、ソフトを開発する人がいないーそんな現状をイージーワードはきっと変えてくれるのではないだろうか。そのためにも、ぜひ実際に使ってみてフィードバックをしたり、機能要望をしてみたりして、1人でも多くの「生の声」を開発元である物書堂に届けて支援してほしい。

アルファ版はHockey Appを通じて配布中。かなり細かにアップデートが提供されているので、頻繁にチェックするのがおすすめ。また、機能不全をフィードバックするフォームもあり、ここから報告すると修正完了時にリリースノートに記載される可能性もある。【URL】https://rink.hockeyapp.net/apps/63f85999214140a9a459f204675e9fbc

EGWORDといえば、やはりこの「原稿用紙」モード。単に縦書きができるというだけでなく、行あたりの文字数もカウントしたい、というニーズ(筆者のような雑誌系の仕事にはすごく重要)に応えられるソフトというのは本当に貴重な存在だ。