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Apple Watchでエクササイズ!ついに「Gym」ともつながる

著者: 松村太郎

Apple Watchでエクササイズ!ついに「Gym」ともつながる

Appleは、Apple Watch向けOSの最新版、watchOS 4.2を2017年12月6日にリリースした。このアップデートは、Apple Watchをジムで活用している人にとって、非常に重要なアップデートになる。Gymkitによってエクササイズマシンと連動することで、Apple Watchの利便性はさらに高まるだろう。

watchOS 4.2で追加されたGymkitにより、ジム内のエクササイズマシンとApple Watchが容易に連携できるようになる。カロリー、距離、速度、登った階数、傾斜、ペースなど、スマートウォッチとフィットネスマシンの間でこれまでやりとりされることのなかったデータがシームレスに同期する。 Photo/apple.com

ヘルスコンシャスの高まり

アップルは2017年6月に開催されたWWDC(世界開発者会議)で「ウォッチOS4(watchOS 4)」に搭載される新機能として「ジムキット(GymKit)」を披露した。このAPIはアップルウォッチ(Apple Watch)とジムにあるエクササイズマシンを連携させることによって、より正確な運動のデータをアップルウォッチに集めることができる仕組みだ。

アップルウォッチは2015年4月の発売以来、フィットネス用途に注力していた。ウェアラブルデバイスとしては非常に正確な心拍計やモーションセンサを内蔵し、アップルは運動による消費カロリーを算出するためのアルゴリズムを開発、アップルウォッチを身につける最初の動機を作り出した。

そしてアップデートによって防水対応することでスイミングの計測を可能にしたり、GPSを内蔵することで単体での屋外ジョギングやスキーの計測もサポートした。そして、最新のアップルウォッチシリーズ3ではセルラー(携帯電話通信機能)内蔵モデルを実現し、アップルウォッチだけを身につけてエクササイズに出かけても、通話やメッセージのやりとりを可能にした。もちろん、登場当初からアップルの電子決済サービスであるアップルペイ(Apple Pay)に対応しており、財布を持っていなくてもコンビニで買い物することだってできる。

エクササイズ中に音楽を楽しむ方法も拡がった。ウォッチOS4ではアップルミュージック(Apple Music)からのセルラー通信でのストリーミングをサポートし、あらかじめプレイリストを用意しなくても好きな音楽を自由に楽しめるほか、「ビーツ1(Beats1)」などのラジオも再生できる。

アップルウォッチはすでに、手首に身につけられるスマートフォンのような存在へと進化し、その多くの要素が、エクササイズを楽しむ人にとって快適なライフスタイルの実現へ振り向けられている。

ジムでの問題解決

アップルウォッチは屋外のジョギングやウォーキングなどでも非常に快適に利用できるが、もう1つのエクササイズの場所はスポーツジムだ。室内ジョギングや室内バイク、プールスイミング、筋力トレーニングなど、さまざまなメニューを一箇所で行える。

アップルはジムでのアップルウォッチ活用に対しても積極的に取り組んでおり、ここ数年で人気が高まっている「クロスフィット」のアルゴリズムも、ウォッチOS4で「高強度インターバルトレーニング」として採用された。

しかし、ジムの中で解決できていない問題が存在していた。それは、マシンとアップルウォッチの計測データがバラバラになってしまっている点だ。

たとえば筆者は、毎回こんな経験をしてきた。ジムにある室内バイクで30分間のトレーニングを行った際、アップルウォッチでは250キロカロリーしか計測されていないが、マシンの画面では300キロカロリーが計測されているのだ。せっかく頑張ったのに、50キロカロリー少ないカウントは、なんだか損した気分になってしまう。

この計測差異の原因は、アップルウォッチが心拍数だけを頼りにカロリー計算をしているからだ。一方で室内バイクマシンには、ペダルの負荷、回転数、擬似的な走行距離など、心拍数以外のさまざまなデータがあり、これらを元にカロリー計算をしている。室内ジョギングや室内ウォーキングでも、GPSによる距離の計測ができないため、少ないデータでのカロリー計算をせざるを得なくなっていた。

ジムキットの仕組み

アップルウォッチのジムでの活用における問題解決は、プライバシーに配慮しながらより正確な運動計測を行い、「ヘルスケア」アプリにエクササイズを記録できるようにすることだ。そこで、アップルウォッチとジムのマシンを連携させる仕組みを作るためのAPIとして誕生したのがジムキットだ。

ジムキットを利用するには、ウォッチOS4.2以降を導入したアップルウォッチと、NFCとブルートゥースが搭載され、ジムキットに対応するエクササイズマシンが必要となる。

アップルウォッチでワークアウトアプリを起ち上げ、マシンのNFCリーダにタップすると、アップルウォッチとマシンがブルートゥースで接続される。あとはいつものようにエクササイズを行うだけだ。すると、アップルウォッチにマシンからのデータが吸い上げられ、1つのワークアウトとして記録される。このデータは、iPhoneのヘルスケアアプリから確認できるようになる。非常にシンプルな仕組みとなっている。

他のマシンへ移る場合は、再びアップルウォッチをそのマシンにタップすれば、すぐに新しいエクササイズを始めることができる。

エクササイズマシンは、ライフフィットネス(LifeFitness)やテクノジム(Technogym)など、日本でも利用されている大手ブランドがサポートしており、最新モデルでなくても、NFCとブルートゥースを内蔵していれば、ソフトウェア更新でジムキット対応を行うことができるそうだ。

データ以上に体験が変わる

ジムキットによって、GPSが届かない室内環境であるジムにおいて、より正確な計測データの取得を行うことができるようになる。

ジムキットを使い始めた当初は、今までアップルウォッチで記録できなかった各種データがまとめられる点に面白さを感じていた。しかし慣れてくると、マシンに手首をタップするだけでそのエクササイズの計測を始められるシンプルな体験が、より重要であることに気づいた。トレーニングが1つ終わるごとに、小さなアップルウォッチを操作しながら次のエクササイズマシンを探さなくても、すぐにトレーニングをスタートすることができ、ペースやモチベーションが途切れなくなる点が素晴らしいのだ。

ジムキットによって、アップルウォッチでのワークアウト体験そのものが、より自然なものへと生まれ変わる。そんな効果があった。

手ぶらでスポーツジムへ

アップルウォッチはエクササイズの体験を屋外、ジムの中ともに変化させつつある。1日の運動を管理し、目標を達成していく、そんなワークアウトに関する充実したライフスタイルを提供してくれるパートナーとしての進化を、ジムキットから大きく感じることができるのだ。

そして、アップルウォッチにはできることがまだたくさんある。

たとえば、ジムに入るにはたいていの場合ICカードやバーコードが印刷された会員証が必要だが、アップルウォッチに会員証を入れられれば、ポケットがないスポーツウェアを着ていても不便にならないはずだ。アップルペイがSuicaに対応し、セルラー対応したおかげで、日本では公共交通機関を使ってジムに通うならば、財布もiPhoneも持たずにトレーニングに出かけることだってできるのだ。これは実に便利に違いない。

また、アプリを活用していくことで、決まったワークアウトのメニューをアレンジしたり、ストレッチのガイドを表示し、正しいトレーニングを実現できる。

アップルウォッチにはこれからも多くの機能が追加されていくことになるが、それらをいかにライフスタイルに取り込むか、という我々の創意工夫の要素もより大きくなっているのだ。

Gymkitには、Life FitnessやTechnogymなど世界的メーカーが対応している。トレッドミルやエリプティカル、インドアバイク、ステッパー等で運動したデータが、Apple Watchをタップ1つで簡単に直接ペアリング可能だ。日本国内でも対応マシンがジム内に増えてきそうだ。 Photo/apple.com