Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日:

忙しいときはゆったりと映画に浸って

著者: 三橋ゆか里

忙しいときはゆったりと映画に浸って

昨年のこの時期のコラムでは、最近読んだ書籍について書いたように記憶しています。不思議なもので、基本的には読書好きなのですが、その時々で無性に本を読みたいときと、ただ映像を観たいときとに分かれます。考えてみると、仕事を含む生活全般が忙しいときは映像、気持ち的な余裕があるときは本を手に取っているのかも。

引っ越し、英語本の執筆、ロサンゼルス取材が必要な雑誌の仕事などが重なったためか、最近はもっぱら映像に偏っています。というわけで、ジャンルはまったく異なりますが、自宅または映画館で観たものを含めて最近触れた映画について少し。1つはイマイチだった作品、もう2つは何度でも観たい作品です。

1963年にオープンしたハリウッドのドーム型映画館「アークライトシネマズ」で観たのが、日本では12月8日に公開された「オリエント急行殺人事件」。アガサ・クリスティーのミステリー小説の映画版で、主人公はシリーズ化されている名探偵エルキュール・ポワロ。豪華列車という逃げ場のない空間では、乗客全員が容疑者。この点は、アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」と似ています。

結論から言うと、一本の映画として楽しめるものの、主に2つの理由で好みではありませんでした。まずは、映像を美しく見せるためにかなりCGが使われていること。たとえば、山腹の高架橋で立ち往生してしまうシーンは、本物の風景であれば圧巻なのでしょうが、CGだと一目でわかるため白けてしまいました。CGが気にならなければ、映像はきれいでおすすめです。

また、これはわたしだけなのかもしれませんが、名探偵エルキュール・ポワロのテレビシリーズは子どもの頃に大好きだった番組。卵型の頭は禿げ上がっているものの、左右と後ろに残った髪は漆黒。同じく、黒くて美しく整った髭がトレードマークでした。見た目や話し方を含め、わたしの中ではこのポワロこそポワロなため、今回の俳優さんはどうも受け入れられず…。とはいえ、全体的に豪華キャストなのは間違いありません。

最近観た2本目の映画が、1976年制作の「大統領の陰謀」。アメリカのウォーターゲート事件の真相をワシントン・ポスト紙の2名の社会部ジャーナリストが追っていく実話に基づいた映画です。映画があまりにも気に入って、彼らが書いた書籍も購入してしまったほど。記者役を演じるのは、ダスティン・ホフマンとロバート・レッドフォードという名俳優。新米記者と先輩記者が、とある不法侵入事件をきっかけに粘り強く事件の真相を追いかけていく様子がリアルです。

だいぶ前に、カトリック司祭による性的虐待事件を題材にした映画「スポットライト世紀のスクープ」も観ましたが、これも中心人物はボストン・グローブ紙の取材班。2つの映画とも歴史的事件を題材にしていて、古き良き時代のジャーナリズムを知ることができ、とても感銘を受けました。今、このような取材に耐えられる体力を持つメディアは残っているのでしょうか。インターネットで調べたりメールで済ませてしまう時代に、地道に足を使って取材をすることの大切さをリマンインドしてくれました。

最後に、観た人をすごく温かい気持ちにしてくれる家族ドラマが、「リトル・ミス・サンシャイン」です。子ども用のミスコンにどうしても出場したい!という7歳の娘オリーブのために、オンボロ車に乗って家族みんなでカリフォルニアまで旅する物語。ミスコンに出るにはちょっぴり太っちょさんなオリーブがなんとも愛くるしく、ぶつかりあっても、やっぱり家族っていいなと思わせてくれます。幸せな気分になりたいときにぜひ観てほしい作品です。

©Tiko Aramyan

Hironori Fukuda

企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。【URL】www.too.com/apple