自分の体臭の種類と強さを計測できる世界初のニオイ見える化チェッカー。デバイスを頭や脇、耳の裏、足の裏にかざすことで、デバイス内に組み込まれた4つのセンサが3大体臭である「汗臭」「ミドル脂臭」「加齢臭」を判別し、専用のスマートフォンアプリに計測結果を表示してくれる。
体臭や口臭などの臭いによって、周囲に不快感を与える「スメルハラスメント」。自分がもし周囲の人に「臭い」と思われていたら…と不安を抱える人も多いだろう。化粧品メーカー・マンダムの調査では、職場の人の容姿や身だしなみにおいて「どうにかしてほしい」と思うことの1位はニオイ(体臭)だという結果が出ている。一方、同じ調査では「もっとも指摘しにくいこと」の1位もニオイ(体臭)。気になるけれど、言い出しづらいのがニオイなのだ。さらにこの問題を複雑にしているのが、ニオイは疲労性があり、嗅ぎ続けると慣れてしまうこと。そのため自分の体臭は気づきにくい。
そんな問題を解決するために誕生したのが、ニオイ見える化チェッカー「クンクンボディ(Kunkun body)」だ。開発のきっかけは、コニカミノルタ株式会社の新規事業開発組織、ビジネスイノベーションセンターにおける会議だった。開発メンバーの1人である甲田大介氏はこう語る。
「時期が初夏だったんですよね。40歳前後の男性ばかりがぎゅうぎゅうに集まった会議室で、ふとメンバーが“夏になると、自分が臭ってないか気になる”と言い出したんです。それを皮切りに、皆が口々に自分の体臭についての不安を口にし始めました」
その場で調べたところ、口臭をチェックする製品はあっても、体臭チェッカーはないことがわかった。闇雲に不安になっているだけで、本当に臭っているのか、どのくらい臭っているのかを測る指標も機器も存在していなかったのだ。またアンケートを実施したところ、首都圏在住の30代以降の男女で自分のニオイが気になる人は、約7割も存在していた。
体臭チェッカーのニーズを確信した開発チームは、まず既存のニオイセンサを1つ組み込んだ簡単な試作品を作ってみた。
「それだとニオイの強弱しか判定できず、いい匂いだとしても数値が高く出てしまいました。そこで、ニオイを”嗅ぎ分ける”技術が必要だと気づいたんです」
調べる中で見つけたのが、大阪工業大学の大松繁教授だ。大松教授が研究していた、コーヒーやワインの香りを産地ごとに嗅ぎ分ける技術を体臭に応用できないかと考えた。
そうして共同研究が始まった。まずは体臭を、「汗臭」「ミドル脂臭」「加齢臭」に分けるところからスタート。この3つのニオイのサンプルをセンサに感知させ、電圧値の変化を測定した。すると、センサによって3つのニオイに対する反応が変わることがわかった。そのデータを大量に集めて機械学習させることで、ニオイの嗅ぎ分けに成功。これは、人間の嗅覚と同じ構造になっている。
2016年の8月にプロトタイプが完成。それをもとに大阪駅前で行ったタッチ&トライは大盛況だった。
「確かな手応えを感じたものの、タッチ&トライは無料だから人気が出たのかもしれない。そう考え、次はクラウドファンディングで、価格を含めて世の中に価値を提供できる製品なのか確認してみました」
クラウドファンディングで市場のニーズを調査
日本最大級のクラウドファンディングサイト「Makuake」にて市場の反応を調査したところ、目標金額225万円に対して最終的に4830万6000円の資金が集まった。調達金額やサポーター数、話題性などを考慮して選出される「Makuake Award 2017」も受賞。同サービス内では、「MXPソックス」などのニオイマネジメント・ツールとのセット販売も実施された(現在は販売終了)。
すると、製品価格が2万5000円以上と高額だったにもかかわらず、1800人以上の支援者、そして約4800万円が集まった。一般発売は未定だが、クラウドファンディングの支援者には今月から製品が届く予定だ。
今後はクンクンボディで培った「ニオイ検出標準プラットフォーム」の技術を多方面に応用する事を考えているという。
「たとえば、ホテルやタクシーなどの空間のニオイの見える化。また、ゴミ処理場などの臭気を客観的に数値化できれば、周辺住民との話し合いもスムースに進むと思われます」
ニオイの見える化の可能性は、悩める中年男性の救済から社会問題の解決まで幅広く広がっている。
手のひらサイズだから持ち運びにも便利
ニオイチェックに必要なのは、本デバイスとiPhoneなどのスマートフォンのみ。本体も約108.5(H)×53.5(W)×22.5(D)mmと手のひらに収まるサイズに設計されており、重量も約100gと持ち運びにも最適。この小型な筐体の中に、ニオイの種類・強さを判別するためのセンサが4つ組み込まれている。
頭、脇、耳の裏、足の裏の4箇所にデバイスをかざしてニオイチェック!
ニオイの計測方法は、専用アプリを起ち上げて本製品とスマートフォンをBluetoothでペアリングしたあと、アプリで計測する部位を選択し、中央の白いボタンを押してデバイスをかざすだけ。計測可能な部位は、頭、脇、耳の裏、足の裏の4箇所から選択できる。
ニオイの測定結果は10段階で評価
本製品では、独自のシステムによって、今まで測ることができなかった「汗臭」「ミドル脂臭」「加齢臭」といったニオイの種類とその強さを測定できる。アプリの測定結果画面では、3つのニオイが10段階で評価されるのに加え、ユーザがわかりやすいように総合的な評価が表示される。また、測定した場所やそのときの温度、湿度なども記録。過去の測定履歴を遡ることも可能だ。