Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日:

MacBookかiPad Proか究極の選択

著者: 栗原亮

MacBookかiPad Proか究極の選択

大都会の片隅で、深夜にだけ営業する喫茶店“真夜中のジーニアス”がある。そこには夜な夜なさまざまな客が訪れ、モバイルに関する相談が繰り広げられる。マスターとアシスタントがおすすめの“裏メニュー”で問題を華麗に解決します。今夜のお客様は、MacBookとiPad Proの選択でお困りとのこと。

悩める文学青年現る

(カランカラン♪)

ユミコ●いらっしゃいませ~

客●こんばんは。あのーこの店ってモバイルの相談ができるって本当ですか?

マスター●はい、3つまでなら質問にお答えしますよ。

ユミコ●「裏メニュー」なのにいつのまにか口コミで広がってるようね…。でもドリンクも注文してくださいね!

客●あ、はい。じゃあブレンドで。

ユミコ●ブレンドですね、承知しました。さて、お客さんはどういったことでお悩みですか?

客●はい、今は5年くらい前に買ったiMacを使っていて、そろそろ買い換えようと思ったのですが、最近って外で使う人が増えてますよね。そうすると12インチのMacBookか、iPadプロになるかと思うんですが、どちらを選べばよいのかこの半年決めかねていまして…。

ユミコ●半年も悩んでたんですか!? いくらなんでも悩み過ぎ! それにしてもMacBookはわかるとして、もう1つの選択肢はiPadプロなんですか? iPadっていう選択もあるんじゃないかと思いますけど。

客●確かにそうですよね。ですが、私は小説を書いてまして、キーボードが接続できるモデルでないと使いにくいのかなと。

ユミコ●お兄さん小説家なんですか? すごーい。確かにスマートキーボードがあれば文章書くのも捗りそうですね。ブルートゥースは接続にタイムラグがありますし。でも悩むまでもなく好きなほう選べばいいんじゃないかと思いますけど。

客●ええ、そのとおりなんですけど、優柔不断でして…。ネットを見ても「どちらを選ぶかはあなた次第」と言われてしまいますし、そろそろ第三者の心強いアドバイスをいただきたいなと思ってました。そんな折、モバイルに詳しい喫茶店があると耳にしたので来てみたのです。

ユミコ●ええー、私のアドバイスが参考になるのかしら…。

客●もう悩むのに疲れましたので、バシッと決めていただけると助かります。

そろそろ決着をつけよう

ユミコ●なんか、とんでもない相談な気がしてきたな。でも、確かに最近はMacBookじゃなくてもいいんじゃないかなと思ってきたし、せっかくなので調べてみることにしますか! ちなみに両方買うっていう選択肢はなかったんです?

客●いえいえ、さすがにそんなお大尽ではありませんので。

ユミコ●それではまず、状況を整理するために基本的なスペック表を並べてみますね。細々していますが、比べると見えてくるものもあるんです。

iPadプロのほうがMacBookより高性能?

客●私の場合、価格や重さで比較すると、アップルペンシルやスマートキーボードを加えた場合で考えないといけませんね。

ユミコ●そうです。たとえば、本体サイズではiPadプロはスマートキーボード装着時には全体的に約13ミリくらいになりますので、薄い部分もあるMacBookよりも持つと大きく感じられます。

重さも12.9インチのiPadプロでは1キロ超えになるので、MacBookよりも重くなります。お値段もフル装備の12.9インチだと11万6400円からになるので、それほどは変わりませんね。

客●MacBookはちょっと高いと思っていましたが、比べればそうでもないですね。

ユミコ●性能面では、iOSとmacOSでは種類が違うので単純に比較はできないのですが、ベンチマークの数値などを見る限りではiPadプロのA10フュージョンはMacBookのコアi3よりも性能は高いと言われています。グラフィックス性能が高いので、体感速度はiPadプロのほうが上といった印象ですね。

客●え、MacよりもiPadプロのほうが速いんですか!

ユミコ●ディスプレイの面でも違いがありますね。マルチタッチかどうかはいったん置いておくとして、表示エリアはMacBookのほうが広めです。ただし、色域はP3に対応したiPadプロのほうが広いですね。あと、リフレッシュレートが120HzとMacの2倍になっています。

客●エクセルとか事務作業ならMacBookのほうが広くて使いやすいかもしれないですね。

ユミコ●あと、搭載されているカメラ、スピーカはiPadプロの圧勝ですね。写真や映像コンテンツなどを楽しむならiPadプロのほうが有利です。

客●MacBookのほうが優れていることはないんでしょうか…?

ユミコ●最初からキーボードやトラックパッドが付いているので、パソコンに慣れた人なら操作しやすい点と、USB-Cのほうがライトニングよりは拡張性が高い、外部ディスプレイでデスクトップを拡張できるといったところでしょうか。あと、地味にキーボードバックライトは便利です。

客●そうか、これから新しく選ぶのであればiPadプロでも問題ないんですね。マルチタッチだったりマウスが使えないなんてのは慣れの問題でしかないですし。

ユミコ●でも、これはハードウェア的な比較をした場合ですので、使い勝手にまで話を広げるとまた違ってくるかもしれませんよ。次はOSやソフトの違いについて考えて行きましょう。

12インチのMacBookとiPadプロの基本性能を比較してみました。

Smart Keyboardは12.9インチ用と10.5インチ用に販売されています(【価格】10.5インチ:1万7800円、12.9インチ:1万8800円)。キータッチはMacBookよりはやや硬めですが、長文の入力も可能です。設置角度の自由度は低めです。

Touch IDはiPad Proには搭載されていますが、MacBookシリーズには搭載されていません。ただし、MacBook ProのTouch Bar搭載モデルにはTouch IDも備わっています。

ソフトの利便性もiPadプロが上回る?

ユミコ●お客さんはMacの使い勝手で優れているところってどの辺にあると思います?

客●そうですね…やはり「コンピュータ」ならではの汎用性や拡張性の高さ、つまるところ“柔軟性”でしょうかね。もちろん最近のiPadもほとんど同じことはできるとは思うのですが。

ユミコ●柔軟性というのはいいポイントですね。最終的にそれを決めるのは、それぞれのOSやアプリだったりします。ただし、使いたいソフトがMac専用というのでもない限りMacBookを選ぶ理由は少ないと思いますよ。お客さんは小説書くのがメインのお仕事ならば、iPadプロで充分ではないですか?

客●ええ、だいぶ心はiPadプロに傾いてはいるのですが、完全にiPadプロに移行するには、まだ少し不安があるんですよね。たとえば、これまでのMacで書いた作品や登録したユーザ辞書をちゃんと引き継げるのかとか、日本語入力ソフトのフィーリングが変わってしまったら使いにくくなるのではないか、とかです。

ユミコ●5年前のiMacをお使いだったんですよね。macOSのバージョンは新しくしてます? あと、アイクラウドは設定済み?

客●それは一応、最新のバージョンにしています。ちょっと遅くて使いにくいですけど。

ユミコ●そうであれば、問題ありませんね。アイクラウド・ドライブに保存してあれば、Macで書いたテキスト書類はiPadでも問題なく開けます。iOS 11ではさらに「ファイル」アプリでドロップボックスやグーグル・ドライブに保存したファイルも開けるので確実に引き継げます。辞書についても、標準の日本語入力ソフトであればアイクラウド経由で同期できます。もし、サードパーティの日本語入力ソフトをお使いでも、ATOKであれば問題ありません。グーグル日本語入力はクラウド辞書同期機能が廃止されてしまいましたが、こちらも辞書をドロップボックスに置くなどの裏ワザを駆使すれば対応可能です。

客●おお…これはすごい。iPadプロに移行する障壁がどんどん取り払われていく。

ユミコ●あとは、どんなソフトで小説を書いているかですね。慣れているものが一番使いやすいと思うので。

客●それについては標準の「テキストエディット」で書いているので問題ないかもしれません。まあ、本当にこのソフトが一番自分に合っているかはこれもまだ悩んでいますね。

ユミコ●ああっ、やっぱりそこも悩むんだあ。

iOS 11ではファイルブラウザに対応しました。iCloud Driveのほか、Dropboxに保存したファイルなどもファイル単位で取り扱えます。

iOS版の「テキストエディット」アプリはリリースされていませんが、iCloud Drive経由で作成したテキストファイルは移行できます。また、一般的なテキストファイルはiOSのアプリでも開けます。

Macの日本語入力ソフトで登録した辞書データは、iCloud経由で同期されますので、小説を書く際に必要な固有名詞や独自の用語などを移行できます。

Mac版もあり、Dropboxにも対応するiPad用のテキストエディタはいくつかあります。「iA Writer」もその1つで、markdown形式の見出しを付けて文章を構造化することも可能です。

iA Writer

【開発】iA Labs GmbH

【価格】600円

【場所】Mac App Store>仕事効率化

もしかして比べるべきデバイスを間違っていた?

ユミコ●どんなタイプの小説を書いてるのか知りませんが、テキストエディタで書くのが本当にいいのかなあ?

客●確かに、シンプルな画面のほうが集中力は出ますし気分はアガリますけどね。ただ、私の書くのは登場人物が多くて比較的設定が込み入った作品が多いので、人物設定のメモなども参考にしますね。いろいろ調べ物をしたりしますし。

マスター●なるほど。もしそういう書き方であるならば「スクリブナー(Scrivener)」のようにアウトラインプロセッサ機能が強力なソフトを選ぶといいのではないですか? Mac版とiOS版があるのでどちらを選ぶのかという意味では決め手にはならないかもしれませんが。

客●おお…メニューが英語で覚えるのに時間がかかるかもしれませんが、長文を書くのであれば同時にいろんな情報を参照できるのはいいですね。iPad版のアプリもあるのは魅力ですが…。

ユミコ●どうですか? Mac BookとiPadプロどっちにするか決まりましたか?

客●すいません、やっぱり決まりませんでした…。

ユミコ●ええ~どうして?

客●どちらのよさもわかったのですが「どちらを選ぶかで悩んでいる」という時点で自分はまだiPadプロを選ぶことに不安を感じているんです。それが何かは今はわかりませんが、小説家はそういうちょっとしたところを大事にしないといけないと思いまして。

ユミコ●なんだか面倒臭い考え方する人ですね~。iPadプロ推しだったけど、今回は降参だ~。

マスター●お客さんの迷いも何となくわかります。おそらく、機能面でMacBookではiPadプロを上回ることはできない。ですが、これまでの使い勝手を維持したいならMacのほうが不安が少ないということなのでしょう。そこで、どちらでもない第3の提案なのですが、いっそのこと13インチのMacBookプロにしてしまうというのはどうでしょう?

ユミコ●おおっ?

客●突拍子もないですがそれって悪くないかもしれません。私はどこかでMacBookに物足りなさを感じていたのかも。

Mac用のテキストエディタは多数ありますが、シンプルな日本語エディタというのは意外に種類は多くありません。図は10月にリリース予定の縦書き対応で期待されるエディタ「stone」です。【URL】https://stone-type.jp

短いエッセイから長編小説、学術論文に至るまで自在に扱える強力なライティング専用ソフトです。

Scrivener

【開発】Literature & Latte

【価格】5400円

【場所】Mac App Store>仕事効率化

MacBook Proであれば、拡張性などiPad Proを上回る面も多くなります。構成モデルによっては価格は高くなりますが、Touch Bar非搭載のモデルであれば14万2800円~と、12インチのMacBookと変わらない価格で購入できます。

ユミコの日誌

今日のお客様はMacBookかiPad Proかでお悩みのお兄さんでした。3つのオーダーは

・MacBookとiPad Proの違いを知りたい

・使い勝手の違いを知りたい

・小説を書くのに適したソフト

についてでした。ちょっと意外なアイデアが出てきましたが、悩んでいるときには、立っている前提が間違っていることが多いというのはよくあることですね!