葬儀の準備でやるべきことはたくさんありますが、特に優先度が高い作業が「葬儀の連絡」です。誰が通夜・本葬に来るのか、人数を把握をしないと、香典返しの用意や、通夜振る舞い、精進落としの席数、お料理の手配、通夜の夜には誰が残るのか…さまざまなことが決められないのです。
筆者はまず、親の兄弟や従兄弟といった連絡先のわかる人たちに訃報を伝えました。しかし、連絡先がわからない遠い親戚がいたため、叔父や叔母に協力してもらいながら手分けをして親族全員に連絡を取ってもらうことに。葬儀の出欠を人づてに確認する「伝言ゲーム」さながらのアナログ戦術でした。しかも、交友関係が広かった父はSNSを駆使していたようで、そこでつながっている皆さんにはどうお伝えすればいいのやら…。
【解決のポイント】誰と仲が良かったのか確認する術を作っておく
故人と生前親しかった知人・友人の把握と連絡も、遺族を悩ませる問題です。故人の交友関係を熟知しておくというのは難しく、お互い離れて暮らしていた場合はなおさらです。
もし故人のMacやiPhoneが確認できる、もしくは先述のケース1で紹介した方法を使って端末にアクセスができるならば、連絡先や通話履歴、LINEやメールなどをチェックすることが可能です。ただし、チェックするのに大変手間がかかるうえに、何より連絡先ならまだしもLINEやメールといった私信にまで目を通す行為は避けたい場合もあるでしょう。
そこで、生前に設定しておかなければならない作業にはなりますが、もし「連絡先」で知人や友人の連絡先を管理しているのなら、「連絡先」のグループ分けをしておくのが得策でしょう。たとえば「高校」「大学」など、ある程度のくくりでグループを作っておくと、遺族目線でも交友関係を把握しやすくなります。すべての友人関係をグループ分けするのはとても面倒な作業なので現実的ではありませんが、この一手間が、残された遺族にとっての助けになるといえます。
(1)「連絡先」→[新規グループ]でグループを作成できます。連絡先から特定の人物を選択し[選択した項目からグループを新規作成]を選択することも可能です。
(2)iCloud.comの「連絡先」でも同様の作業を行うことができます。
【解決のポイント】大事な連絡先を共有しておく
いざというときに連絡先がわからない親戚というのも案外いるものです。親戚のように非常時にコンタクトをとることになる大事な連絡先は家族間で共有しておくことをおすすめします。それほど親交がなくても、連絡先に追加しておいて邪魔になるものでもありません。アナログに管理するより、検索もできるようになりますし、むしろデジタル化しておく恩恵があると思います。
もし共有したい人の数が多かったりして、新規連絡先の追加や編集が手間なのであれば、グーグルアカウントのように連絡先だけを同期できる「CardDAV」アカウントを専用に作って、家族や親族間で共有するのも便利です。この方法であればMacやiOSデバイスはもちろん、アンドロイドやウィンドウズでも利用できるのです。
また、連絡先のデジタル化で重宝するのが、自分のプロフィールの中の「関係と名前」という属性を持つ入力欄を埋めておくことです。連絡先を見たとき、名前だけだと「この人誰だっけ?」となりがちですが、父母兄弟・配偶者などの名前を入れておけば、どの親戚筋なのかが一目瞭然でわかります。
(1)たとえば、Googleアカウントのような「CardDAV」アカウントを作成しておきましょう。「連絡先」から[連絡先アカウントの追加]で簡単に追加もできます。
(2)Gmailであれば、「委任」機能を利用して連絡先を簡単に家族と共有できます。連絡先リスト上部の[その他]→[委任の設定を管理する]をクリックします。
(3)連絡先の共有設定画面にて、「招待」の入力ボックスに連絡先情報を共有したいユーザ名を入力し、[共有して保存]をクリックします。すると、連絡先の共有を招待されたユーザの連絡先画面左メニューに共有元のユーザ名が追加され、クリックすると共有元ユーザの「My コンタクト」の連絡先リストが表示されます。
(4)「連絡先」において、「関係と名前」を入力しておくと、後々役に立つことが多くあります。連絡先の編集で、「関係と名前」を追加しておきましょう。
【解決のポイント】SNSを使って交友関係を把握する
故人がSNSを利用していて、たくさんの人とつながっているケースも考えられます。その場合は、それが「連絡先」代わりとして、故人の交友関係を知る材料になるでしょう。特に実名登録が原則のフェイスブックの場合、その確度は上がります。もし故人のページが見られるのなら、そこでつながっている友だちを確認することで、おおまかな交友関係を把握できるでしょう。ただし、残念ながら誰とどれくらい仲が良かったのという「親密度」まではわかりません。
SNSは実社会よりも気軽に友だち申請(もしくは承認)ができるという側面があります。最近では友だち(フォロワー)を500人くらい抱えている人も珍しくないですが、こうなるとますます残された側は、誰に連絡すればいいのか判断できません。要は、古くからの友だちと、どこかで一度きりしか会ったことがないけど「友だち」になっている人との区別ができないのです。
そのため、葬儀への参加人数を把握するという目的で使うには不向きかもしれません。フォロワーに知らせる目的ならば、タイムラインで訃報を伝えるという方法が得策です。
(1)故人のフェイスブックアカウントに入れるのが前提になりますが、フェイスブックの友だち一覧は交友関係を把握する一助になります。
(2)SNSで訃報を知らせることも、場合によっては有用な手段です。ただ、SNSでの訃報告知に違和感を受ける人が多少なりとも存在するため、気を遣う必要があります。