良きコンサルタントは解決法を提示しない
重要なのは質問力と傾聴力
コンサルタントといえば、ある課題についての解決法を与えてくれる人、というイメージがあります。しかし、それはコンサルタントの正しい姿ではないと本書の著者、エドガー・ シャインは指摘しています。
優秀なコンサルタントは、的確な質問をし、相手に考えさせて、答えを導き出すもの。それができているコンサルタントは、案外少ないのかもしれません。
優秀なコンサルタントの役割は「答えを提供する」ことから「答えを見出せるよう支援する」ことに変化してきているようです。クライアントを真に支援するためには、自身の中に答えがないことを自覚し、謙虚な姿勢になって、クライアントともに答えを見つけることが重要なのだといいます。
クライアントを前進(行動)させるための問いかけができなければ、優秀なコンサルタントとはいえないでしょう。そうした問いを生み出すには、クライアントの本当の考えを突きとめなければなりません。そのためには、誠実な好奇心をもって対応する必要があります。相手の話をよく聞き、そのうえで「なんとしてでもあなたの役に立ちたい」という熱意を見せること(もちろん見せるだけではダメですが)、それが良きコンサルの出発点なのです。そうでなければ、クライアントは少しも動いてくれません。私も起業家のコンサルをするときに、相手に動いてもらうため、プライベートなことを聞いたりしながらいくつかの質問を重ね、打ち解けてもらうようにしています。相手の懐に入ることで、クライアントの課題がようやく見えてくるのです。
また、クライアントの思いを積極的に突きとめるためには、相手への思いやりを持つことも大事だと著者は指摘します。
思いやりは態度に表れます。そこに堅苦しさがあってはなりません。クライアントとの距離感があっては何も生み出せず、引き出せないので、良きコンサルタントは初対面でも率直に話のできる関係を築きます。「上から目線」はご法度、友人のように語り合うのがコンサルタントの真の姿といえるでしょう。
とはいえ、仲良くなりすぎるのも禁物です。「馴れ合い」は良い結果をもたらしません。適切な距離感で“個人的な関係”を築ければ、クライアントの本当の考えを突きとめられます。すると、クライアントは自ら動き始めるのです。
謙虚なコンサルティングには、積極的な気持ち(Commitment)、クライアントへの思いやり(Caring)、そして真摯な好奇心(Curiosity)の3Cが欠かせないといいます。それらはコンサルタントでなくとも、すべてのビジネスパーソンに必須のものでしょう。本書の豊富なケーススタディを読むと、質問力と傾聴力を身につけられますよ。
徳本昌大
iPhoneやソーシャルメディアのビジネス活用を絶えず考える読書ブロガー。複数の広告会社勤務後、コミュニケーションコンサルタントとして独立。現在は、株式会社Ewil Japan、株式会社ビズライト・テクノロジー、GYAKUSAN株式会社の取締役としても活動中。【URL】http://tokumoto.jp/