[Storage&Memory]より速く、より大きくというニーズをバランスよく実現
コストの考え方で選び方も変わる
ストレージの世界ほど性能と価格差に悩まされる分野はないだろう。現在、アップル製品のほとんとがフラッシュストレージを採用しているが、これがシステム全体を高速化するための大きな下支えになっている。ハードディスクはその構造の特性上、ディスクの読み書き性能の向上に限界がある。一方でフラッシュストレージはまだまだ成長の伸びしろがあり、今回のモデルでは前世代比で最大50%も高速化しているというのだから驚きだ。加えて可動部分のないフラッシュメモリは衝撃や消耗耐性といった製品寿命に関わる点で見てもハードディスクに比べて強く、次世代のストレージを牽引する存在に相応しい。
しかし、容量あたりの単価は依然まだ高くハードディスクと比べて1TBあたりの価格差は約7万7000円にもなる。今回のモデルチェンジから、iMacでも2TBのSSDが選択できるようになったが、この変更だけで15万4000円をためらわずに出費できる層はごくわずかだ。写真やムービーといったデータを多く溜め込む可能性が高まった昨今のことを考えるとやはりまだ価格面でハードディスクを選択せざるを得ない状況にユーザも少なくないだろう。
そこでアップルが推し進めているのが、フラッシュストレージとハードディスクを組み合わせたソリューションである「フュージョンドライブ」だ。OSや頻繁に使うアプリケーションデータなどを高速なフラッシュ側に配置しながら大容量のハードディスクと上手に同居できるこの仕組みは、27インチモデルでは標準化されるほどiMacファミリーの中ではスタンダードになった。
近年では4TBクラスのフラッシュストレージも登場し、容量的な制約は減りつつある。しかし、常識的な価格面で考えれば今後数年もハードディスクの容量あたりの単価の優位性は続くと考えて間違いないだろう。その点から見てもフュージョンドライブは息の長い技術として今後も成熟していく可能性はある。
また、容量面で悩ましいのはストレージだけでなくメモリも同様だ。27インチモデルは今回のアップデートで最大64GBまでメモリを搭載できるようになった。さらに、それ以上に喜ばしいのが今回は21インチモデルも最大32GBまで増設が可能になったことだろう。
ただしこれには注意が必要で、最大にするにはオンボードメモリをまず16GB(通常モデルは8GB)のCTOモデルにすることと、さらに残りの16GBに関してもあとでアップグレードする場合には正規サービスプロバイダ(ASP)に持ち込んで分解して組み込んでもらう必要がある。ユーザ個人での増設ができないという点で、購入前のプランの立て方が重要になる。
Fusion Driveが主流に
iMacのストレージ構成は6モデル中4つがFusion Driveになったことからもしばらくはフラッシュストレージの価格が下がらないことを予感させている。CTOオプションとしてはFusion Driveは最大3TBまで、フラッシュドライブ単体での構成は256GBから2TBまでの選択が可能になっている。
メモリの選択も柔軟に
ユーザ自身でメモリの拡張可能な27インチのiMac。標準では8GB(4GB x 2スロット)だが最大で64GB(16GB x 4スロット)まで対応になったことは大きい。また21インチモデルもオンボードは最大16GBまでと以前と変わらないが、最上位モデルのみさらに16GB(8GB x 2スロット)の拡張が可能になった。
[Interface]サンダーボルト3の採用で最先端の環境を構築可能に
最先端だけが最良の選択肢ではない
背面インターフェイスの変更点でもっとも大きなトピックは、やはりサンダーボルト3の搭載だろう。MacBookプロに次ぐ形にはなったが、デスクトップモデルでは最初の採用となった。ポータブルとは異なる運用を想定しているのか、iMacでは従来のサンダーボルト2のあった箇所を丸ごと置き換える形で2ポートで実装しているのが特徴だろう。
ヘッドフォンジャックやUSB3.0、SDXCカードスロット、イーサネットポートなどといった従来まで使われていたものはそのまま残された。さらにサンダーボルト3はディスプレイポートやサンダーボルト2(要変換アダプタ)の上位互換としても利用できるだけでなく、USB 3.1としても機能する。つまりこのiMacはUSBを6系統扱うことができる初のMacと呼ぶこともできる。しかもこの2つポートは最大15Wまでの給電が可能だ。
拡張性の面で考えれば、モダンとレガシーの両デバイスにバランスよく利用できるこのスタイルでの採用はプラスでこそあれ、マイナスに取る必要はないだろう。もし仮にMacBookプロと同じように2系統4ポートのサンダーボルト3が必要なハイエンドユーザであれば、年末発売予定のiMacプロを待つという選択肢も幸いしにて存在する現状だ。その点でもノートブックのように「より薄く」という制約のないデスクトップでは合理的な判断をした結果がこのポートとなったと推測できる。
ポートはよりモダンに
背面のポート群はThunderboltを2から3に変更したものの、並び順や位置といったデザインそのものは前世代までを踏襲している。この「今までと位置が同じ」というのは以前のiMacから乗り換えるユーザにとって追加コストがかからない大きなメリットだ。
Thunderbolt 3
Thunderboltは3になることで、今までの2倍の転送速度になる最大40Gbpsのデータ通信が可能になった。加えて、新たにUSB3.1(最大10Gbps)として利用できるオルタネイティブモードに対応したことで、その活用範囲は大きく広がったのもポイントだ。【URL】https://thunderbolttechnology.net
ターゲットディスプレイモードは復活しないのか?
iMacの機能で、密かに人気が高いのが「ターゲットディスプレイモード」だ。これはiMacをコンピュータとして稼働させながら同時にMacBook Proの拡張ディスプレイとしても併用する…といったことができる非常に便利な機能である。
ところが、この機能に対応しているiMacは5Kレティナディスプレイになった2014年後期モデル以降はハードウェア的にサポートされなくなってしまった。これは5K解像度の出力を扱うのにはサンダーボルト2の持つ帯域では足りないのが原因かと思われていたが、今回のモデルでもサポートされないということが調査の結果明らかになってしまった。
長年愛用していたユーザからすれば、非常に寂しい話ではある。しかし、そもそもノートとデスクトップ両方を多用するユーザ層が少なくなってきていることもあり、サポートコストを考えるとターゲットディスプレイモードの復活はかなりのニーズがなければ難しいだろう。
New iMacをベンチマークで性能チェック!
Macのハードウエアアップデートは、大きく分けて2種類に分類できる。1つはデザインやハード構成などすべてを一新するもの、残る1つがプロセッサやグラフィックチップを変更して性能アップを図るものだ。今回のiMacは後者、いわばマイナーアップデートに相当するが、前モデルの「Late 2015」から1年半以上も経過しているため、21・5インチモデルでは搭載プロセッサが第5世代コア「ブロードウェル」から第7世代コア「ケイビーレイク」へと一気に2世代もグレードアップしている。
プロセッサ以外にもグラフィックチップが新しくなったり、フュージョンドライブ搭載モデルではSSDが最大50%高速になるなど全体がブラッシュアップされている。外観の変化はほとんどないものの、内部が大幅にアップデートされたことで旧モデルからの買い替えを検討しているユーザもいるはずだ。そこで定番のベンチマークソフトを用いて、新しくなったiMacのプロセッサ性能や描画性能、ストレージ性能の3点を測定してみた。
使用したのは、3.4GHzコアi5搭載の21・5インチ(レティナ4K)モデルと、同じく3.4GHz コアi5の27インチモデル(レティナ5K)の2つ。直近モデルで実測した内容を参考値として載せておくので、比較してみるとよいだろう。以下のマシンのプロセッサはすべて同じCore i5だが、「Late 2015」モデルは第6世代の「スカイレイク(Skylake)」、「Late 2013」モデルは第4世代の「ハスウェル(Haswell)」、「Late 2012」モデルは第3世代の「アイビーブリッジ(Ivy Bridge)」だ。どのベンチマークソフトも代表的なものに加え、ワンクリックで計測できるので、興味のある方はぜひ自分のiMacで実測して値を比べてみてほしい。
CINEBENCH R15でプロセッサ性能をチェック
3DCG作成ソフトの「CINEMA 4D」が元となったベンチマークソフト「CINEBENCH R15」で、プロセッサの性能をチェックしてみた。数値が大きいほどプロセッサ処理が高速なことを表している。同じ3GHz台のCore i5プロセッサでも、最新のKaby Lakeだとマルチスレッド/シングルスレッドどちらのスコアも大幅に向上していることがわかる。プロセッサパワーを重視するような処理を多用するシーンでは、最新iMacの性能は魅力的だ。
Unigine Heaven 4.0で描画性能をテスト
ゲームエンジンの「Unigine Engine」を使って3DCGのデモ画面を描画することでグラフィックス性能をチェックできる「Unigine Heaven 4.0」でフレームレートを測定してみた。数値が大きいほど描画性能が高いことを示している。21.5インチと27インチモデルでは、搭載しているグラフィックスプロセッサがRadeon Pro 560とRadeon Pro 570と異なる。どちらも3.4GHzのCore i5なので、GPUの違いが結果に表れたようだ。