Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日:

【WWDC2017】iMac①

【WWDC2017】iMac①

【販売】アップルジャパン

【価格】

21.5インチ/2.3GHzプロセッサ/1TBストレージ:12万800円(税別)

21.5インチRetina 4Kディスプレイ/3.0GHzプロセッサ/1TBストレージ:14万2800円(税別)

21.5インチRetina 4Kディスプレイ/3.4GHzプロセッサ/1TBストレージ:16万4800円(税別)

27インチRetina 5Kディスプレイ/3.4GHzプロセッサ/1TBストレージ:19万8800円(税別)

27インチRetina 5Kディスプレイ/3.5GHzプロセッサ/1TBストレージ:22万800円(税別)

27インチRetina 5Kディスプレイ/3.8GHzプロセッサ/2TBストレージ:25万3800円(税別)

同梱物

標準構成で同梱されるのは本体用の電源ケーブルのほかMagic Keyboard(テンキーなし)とMagic Mouse 2、Lightning to USBケーブルと前モデルからの変更はない。

期待どおり、予想以上

WWDCで発表されたハードウェア新モデル製品群の中で、もっとも多くのユーザから待望されていたものはiMacだったのではないだろうか。実はiMacは1998年の初代モデル以降、毎年必ず新しいモデル(もしくは追加ラインアップ)を発表していた。唯一、昨年だけが何も更新されなかったという異例の年だったのだ。

今回のモデルチェンジは実に1年8カ月。十分な準備期間を経て更新された新しいiMacは、CPUやGPU、メモリ、ストレージといった世代交代に伴う恒例のアップデートはもちろんだが、これ以外にも注目するべきポイントが数多くある。

たとえば、背面のポートに高速インターフェイス「サンダーボルト3」が採用されている。さらに2014年モデルからレティナ対応になったディスプレイもさらに明るく、より豊かな階調表現が可能なものにアップデートされている。また、入力デバイス「マジックキーボード」にテンキー付きモデルが登場するなど、簡単に挙げただけでも今まで以上に変更点が多いことに気づくだろう。

こういった一見、同じようでも実際にはアップデートされている箇所が随所にあるのも今回の特徴だ。ここまでくるとどこが変わったのか、というより「すべてが新しくなっている」と表現するほうが相応しいだろう。

 

[Design]基本形は継承しつつ、細部の使い勝手はアップデート

継承されるデザイン哲学

今回のモデルチェンジでは全体の意匠に大きな変更はなかったが、これを「大きな変更は加えられていない」と取るのは早計だ。後述するがハードウェアのスペックはほぼ2年ぶりの更新ということもあり、性能向上は著しく、それに伴うように内部の熱量も以前にも増して高くなっている。にも関わらず2012年に大幅に薄型化されてから、一度も厚みを増やしていないというのは、この筐体が数年におよぶ耐アップグレード性能を織り込んで基礎設計されている「素性の良さ」を表す1つのベンチマークと言っても良いだろう。

とはいえ、まったく手を加えていないというわけではない。背面のポート類はサンダーボルト3が採用されたことで形状が若干変更になっていたり、今まで本体上部に設置されていたデュアルマイクが底面へと移動している。また、今回新たに入力デバイスとして「マジックキーボード」に新たにテンキー付きモデルのオプションが用意されたことも朗報だろう。表計算ソフトを多用するユーザにとっては待望のリリースといえる。

見た目やカタログ上では気づきにくい変更点だが、細部でも機能向上できる部分関してはきちんと見直しを図っている。これらこそ、良いものは継承しながらも「より良くできる部分は小さなものでも改善を」というアップルならではのこだわりだろう。

27インチと21インチ

モデルは大きく分けて2タイプ。高いパフォーマンスと大画面が魅力の27インチモデルと、コンパクトながらノートを超えるディスプレイサイズとコストパフォーマンスを両立する21インチモデルが用意されている。

細部には改良点も

デザイン面では大きな変更は加えられなかったため、全体の印象は以前のモデルと変わらないだろう。しかし、ヘッドフォンや背面ポートなど細部では変更があるので、注意深く見れば外観で以前のモデルと区別ができる。筐体上部についていたマイクは底面へと移動している。

 

[Display]高精細が当たり前になった次は「明るさ」と「色彩」が技術焦点に

誰にとっても「良い」クオリティを

アップル製品を代表する技術でもあり、高精細な描画を可能にした「レティナディスプレイ」はiPhone 4を皮切りにiPadやMacBookファミリー、そしてiMacへと徐々に普及し、現在ではどの用途でもレティナディスプレイを選択できるのが当たり前になっている。

しかし、これはすべてのディスプレイが同じ品質であることを示しているわけではないのをご存じだろうか。同じレティナでもより広い色域「P3」をサポートするか、階調表現が10億色を超える「10ビット」モードが使えるか、そしてディスプレイがより明るく表示できるかなどの諸条件でさらに世代が分かれているのだ。

従来のiMacも、レティナディスプレイを搭載したモデルはP3色域をサポートし、10ビット階調表現が可能(OS X 10・11・1以降へのアップデートが必要)だったが、今回新たに500ニト(カンデラ毎平方メートル)という従来比で43%も明るいパネルを採用したことで、よりクリアで正確な色彩表現が可能になっている。

このアップデートが重要な理由はほかにもある。まず、iMacが「プロユースでも多用されている」ということだ。一体型というと多くはコンシューマ向けのイメージがあるが、高いパフォーマンスと優れた特性を持つディスプレイの両方を持ち合わせているiMacは、クリエイティブ用途でも十分に耐え得るため近年ではプロの現場での高い採用実績を誇っている。

その視点で見ると、iMacのディスプレイはガラス面との距離を限界までなくす「フルラミネーション」やコーティング剤を「プラズマ蒸着」手法でガラス処理することで従来よりも75%も反射(写り込み)を低減させているなど、傍目からみれば「やりすぎでは」と思うくらいディスプレイの質やユーザの作業環境(見やすさ)にこだわってきた。つまり、近年のiMacが持つコンセプトとは「プロでも使えるプロダクト」もしくは「機能面でプロ・アマを問わない仕上がり」を目指し続けていると考えるほうが自然だろう。

同様の理由で輝度がMacBookプロと同じになったことも大きい。2016年にタッチバーを搭載して発売になった新しいMacBookプロ以降のモデルでは、このiMacと同じP3色域と500ニトの明るさを持つディスプレイパネルが採用されている。これによって、MacBookプロからiMacにストレスなく作業が切り替えられるだろう。

そしてこれは恐らく次世代Macプロとともに現在開発中の「ハイエンドでプロ向けの新しいディスプレイ」のスペックを予測する意味でも重要なポイントになるだろう。P3、10bit、500ニトと同等かそれ以上のクオリティが期待できるはずだ。

史上最高に鮮やかな大画面

P3色域をサポートするのはiMacに限らず、MacBook ProやiPad Pro、そしてiPhone 7など多岐にわたる。しかし、500ニトを超える輝度と10Bitの階調表現を内臓ディスプレイでサポートしているのは現時点ではiMacのみとなる。加えて20インチ以上の4K(もしくは5K)解像度のディスプレイ単体で考えても極めて高性能で、コストパフォーマンスの面で見ても非常に優位な立場にある。

非Retina版iMac

21インチモデルのiMacには継続してRetinaディスプレイではない、通常解像度モデルがより安価に提供されている。これは教育機関などで大量導入することを想定したモデルで、クリエイティブユースをメインにしないような環境がメインターゲットだといわれている。

 

[Performance]最新世代アーキテクチャを積極的に採用し、より高速に

出し惜しみなしの真っ向勝負

今回のモデルチェンジでもっとも喜ばしいのはパフォーマンス、つまり内部ハードウェアの刷新が大きかったことだろう。これは前世代のiMacにも搭載されていた第6世代インテル・コアプロセッサに採用された「スカイレイク(Sky Lake)」マイクロアーキテクチャがようやく更新され、第7世代の「ケイビーレイク(Kaby Lake)」が出荷開始されたことで、ようやくモデルチェンジできたという事情もある。

長らく待たされただけの甲斐もあり、スペックの伸び代も大きいのが今回のアップデートだ。まず、すべてのモデルがケイビーレイク世代のCPUに統一され、クロック周波数も平均で1割程度底上げされたことから体感速度は全体的に向上している。また、ビデオ向け機能としてH・264や次期OSハイ・シエラから採用されるHEVCのハードウェアエンコード/デコードがサポートされていることも重要なポイントだ。

MacBookプロと異なるのが、引き続き標準構成で選べるCPUはすべてコアi5モデルに限定されているという点だろう。上位であるi7との基本的な差はCPU内のタスク同時処理を向上させる「ハイパースレッディング・テクノロジー」を積んでいるかどうかだが、結論から言えば一般的な用途では差が出ないと考えて良い。

そもそもこの技術は仮想的にタスク処理のためのスレッド数を倍増させてはいるが、だからといってすべての処理速度が2倍になるわけではない。主にビデオや音楽編集といった特定の作業にのみ相性が良い傾向にあるのだ。加えてデスクトップ向けのCPUはモバイル版より30%近く性能の高いものが搭載できるので、ほとんどの人は実効値としての差異は感じられないだろう。

CPU以上に恩恵が大きいのは、GPUのアップデートだろう。今回搭載されたRadeon Pro 500シリーズはiMacの発売と同時にリリースされたAMDのクリエイター用製品の最新版だ。同社が開発を進める「グラフィックスコアネクスト(GCN)」アーキテクチャの第四世代を採用したこの製品のポテンシャルは最上位のiMacが搭載するRadeon Pro 580には、現時点では数える程の製品にしか認証が降りていない「VR Ready」が与えられている。そのため、iMacには極めて高い演算と描画性能が組み込まれていることが窺い知れる。

また、今回は21インチモデルにもディスクリートGPUが搭載されたことは大きなチェックポイントだ。CPU内蔵型GPUの性能も向上しているが、今後のOSアップデートで機械学習やAR/VRといった技術が積極的に取り入れられていくことを考えると、GPGPUが使えるマシンのほうがより有利になるのは間違いないだろう。

CPUが刷新

今回リリースされたMacBookシリーズも、iMacもすべてCPUはKaby Lake世代に統一された。開発が遅れている次世代CPU「Cannon Lake」に対する中継ぎとも言われているこのアーキテクチャだが、最適化されたことで熱量が下がっていることや、新実装されたHVECへのハードウェアコーデック対応などを搭載していることを考えると、High Sierraにアップグレードされたときに真価を発揮するハードウェア構成になっているのは間違いない。

GPUも性能向上

大きく性能向上しているのはGPUも同様だ。これは前回、カスタマイズでしか選べなかった最上位モデル「Radeon R9 M395X」とほぼ同等の性能をミドルモデルの「Radeon Pro 575」が実現していることからも明らかだろう。ここ数年WWDCではGPUをフル活用する方向にOSの開発を進めていることをアナウンスしているが、この構成はまさにその方向性を裏付けるものと言えるだろう。写真のオレンジ色の枠の中がGPUだ。