トヨタとの提携を発表するなど、グラフィックチップだけでなく、AIの分野でも注目を集めている半導体メーカー・NVIDIA(エヌビディア)。台湾で開催された「COMPUTEX TAIPEI 2017(コンピュテックス台北2017)」で同社が示した「今後のゲーミング・ノートPCのトレンド」をレポートする。
注目を集めるGPUメーカー
去る5月30日~6月3日、台湾・台北で「コンピュテックス台北2017」が開催された。コンピュテックスは、その名のとおりコンピュータやパソコン、その関連製品においてアジア最大規模の展示会だ。このイベントに合わせて、インテルが新しいCPUを正式に発表するなど、次世代PCのトレンドがアップデートされる場でもある。
そんな中、会場内に自社のブースを構えていないにもかかわらず、大きな存在感を放っていた企業がある。それはGPUメーカーの大手・エヌビディアだ。
エヌビディアは、コンピュテックス台北2017に合わせて、独自イベントを開催。エヌビディア創業者でCEOのジェン・スン・フアン氏が行った基調講演で、ゲーム用ウィンドウズPC(以下、ゲーミングPC)の新しいノート型リファレンスデザイン(半導体メーカーが提供する、半導体を利用した製品の設計図)「Max-Q Design(以下、Max-Q)」を発表した。
Max-Qの標準仕様は「(同社のハイエンドGPUである)GeForce GTX 10シリーズを搭載」「画面を閉じた状態の本体の厚さが18ミリ程度」「40デシベル以下の静音性」などと、これまでにないスリムなボディにハイエンドなグラフィックス性能を備えたノートPCとなっている。
拡大するゲーミングPC市場
日本国内では今ひとつ盛り上がりに欠けるゲーミングPCだが、海外では世界トップレベルのPCゲームプレーヤが競い合う競技「eスポーツ」が若者を中心に高い人気を誇っている。その市場規模は2017年には800億円にも達し、さらに拡大するという予測もある。
PC全体の市場が低迷する中、ここ数年急成長しているゲーミングPCの分野で、コンピュテックス会場でも各PCメーカがその展示に力を入れている。エヌビディアも自社ブースはなくても、同社GPUを搭載されているマシンが各PCメーカのブースで多数展示されていた。
ゲーミングPCは高性能を追求した結果、排熱処理のために筐体サイズは大型になる傾向があり、特にノートブックでは分厚く重いものが多かった。そこに、高性能かつスリムな筐体を提案したのが、Max-Qだ。Max-Q準拠マシンは、GPUのピーク効率、筐体の冷却機構、対応ゲームの最適化などを行うことで、従来のゲーミング・ノートPCより高いパフォーマンスや静音性を発揮できるようになるそうだ。
これらのMax-Qの持つ性能や特徴が求められているのは、実はゲームプレイだけでない。4K映像の編集、3DCGの制作、VRコンテンツの制作/視聴環境、ネット映像配信などのクリエイティブの現場のニーズとも一致する。
Max-Q準拠のノートPCは、2017年6月27日から米国などで出荷予定(日本国内の発売は未定)。エヌビディアによると、20社以上が順次提供していく予定だ。ゲーマーだけでなく、クリエイティブ関係者も今後のゲーミング・ノートPCの動向には注目する必要がありそうだ。
ASUSのMax-Q準拠ノート「ROG Zephyrus」。厚さ16.9~17.9ミリと、6月初旬時点でもっとも薄い本体を実現。パームレストがなく、キーボードが本体手前に配置されている。【URL】https://www.asus.com/us/Laptops/ROG-ZEPHYRUS-GX501VI/
AcerのMax-Q準拠ノート「Predator Triton 700」。厚さは18.9ミリで、ROG Zephyrusと同様に手前に配置されたキーボード上部に透明パネルのタッチパッドを搭載している。