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Apple Store全店で新プログラム「Today at Apple」スタート

著者: らいら

Apple Store全店で新プログラム「Today at Apple」スタート

Apple Store全495店において、音楽やアート&デザインなどの幅広い分野を、数十種類の実践的な講座で学べる新たな無料体験プログラム「Today at Apple」が始まった。キックオフとなるApple銀座のフォトウォーク講座に参加し、プロからiPhoneカメラの撮影技術を楽しく学ぶ現場を取材した。

現代版の公共広場を目指して

「アップル製品の中で、今一番ワクワクさせられるものは?」

もしそんな質問をされたら、新型iPadプロでもスマートスピーカ「ホームポッド」でもなく、私は「アップルストア」と答えるだろう。2013年、アップルの小売部門を統括する上級副社長に、元バーバリーCEOのアンジェラ・アーレンツ氏が就任して以降のアップルストアは面白い。特に2015年、アーレンツ氏と最高デザイン責任者のジョニー・アイヴ氏が協力し、アップルストアのデザインを見直す取り組みを始めてから、ハード・ソフトの両面で革新が起きている。

彼らの手腕により、今やアップルストアは直販店の枠を超え、教育や学術、文化を学ぶ場に変貌を遂げつつある。ハード面の変化は、禁煙オープンした旗艦店を見るとわかりやすい。2016年リニューアルのアップルユニオンスクエア(米サンフランシスコ)など、一部の旗艦店には、地域住民が自由に利用できるコミュニティスペースが設けられ、住民が集う憩いの場としての役割も担う。さらに2016年にアップルは、直営店名から「ストア」を取り、「アップル銀座」といった「社名+地名」の名称に改めた。以前からワークショップ等は行われていたが、それらの学習体験の場をより全面に押し出していくよう方向転換が始まっている。

ソフト面でその(革新の)中核を担うのが、新体験プログラム「トゥデイ・アット・アップル(Today at Apple)」だ。開始にあたり、各アップルストアには可動型スクリーンのフォーラムディスプレイが新たに設置されるほか、座席や音響も新しいものになる。スクリーンは、今回のためにアップルのデザインチームが特別に制作したというから、彼らがいかにこの取り組みに力を入れているかがわかる。

アーレンツ氏はトゥデイ・アット・アップルのリリースで、アップルストアが目指す未来の姿を「現代版の公共広場」と表現した。アップル製品による体験に加え、人および新たな趣味との出会いや、スキルアップの機会を提供し、顧客の感動を生み出す。その結果、顧客も企業のファンとなり、パートナーシップを感じるようになる。アップルストアをとおして、顧客と健全かつ良好な関係を築くことができるのだ。

銀座店限定プログラムも

そういった背景があり、新たにスタートしたトゥデイ・アット・アップル。具体的には、写真、音楽、プログラミングなどをテーマに、クリエイティブなスキルを学べる60以上の教養講座を無料で提供する。以前からあったプログラムを再構築し、実施店舗を世界495カ所のアップルストアに拡大した。合わせて公式サイトも一新され、講座をテーマごとに一覧表示できるほか、ユーチューブ公式チャンネルではプロモーションビデオが公開された。

講座の一部を紹介しよう。「スタジオアワー」は、大学の講義のようにアートやデザイン、プレゼンのテクニックなどをプロフェッショナルから学べる90分のプログラムだ。自分の作品を持ち込んでフィートバックを受けることもできる。「プロシリーズ」は上級ユーザを対象としたより専門的な講座で、ファイナルカット・プロ(Final Cut Pro X)やロジック・プロ(Logic Pro X)などについて深掘りする。

特に注目すべきは「パースペクティブ」なるプログラムだ。「パースペクティブ」は「物事の見方、将来の展望」などの意味で、有名ミュージシャンやアーティストをゲストに迎える特別なセッションを指す。世界中のアップルストアの中でも、ごく一部でしか開催されない貴重なプログラムで、日本ではアップル銀座のみが対象に選ばれた。

パースペクティブの記念すべき初回は、ビーツ(Beats by Dr. Dre)のルーク・ウッドCEOが来日。ゲストにm│floのVERBAL氏、EXILEのSHOKICHI氏を迎え、「音楽への情熱」をテーマにトークを繰り広げた。豪華メンバーによる無料かつクローズドなトークショーのため、チケットは超激戦だったに違いない。

iPhoneと“銀ブラ”

トゥデイ・アット・アップルが全世界でスタートした5月20日、アップル銀座では「キッズアワー」「フォトウォーク」「ライブアート」の3つのプログラムがキックオフイベントに選ばれた。フォトウォークは、アップルストア周辺を散策しながら、iPhoneやiPadカメラの撮影テクを学ぶことができる人気講座。

この日のゲスト講師は、ストリートフォトグラファーであるアンドリュー・カリー(Andrew Curry)氏。20名近い参加者は最初に簡単なレクチャーを受けたのち、2チームに分かれてアップル銀座を出発した。

Photo Walks

記念すべき「Today at Apple」初日の5月20日、銀座は雲一つない晴天だった。ゲストにストリートフォトグラファーのAndrew Curry氏を迎え、「街の静寂をとらえよう」をテーマに、参加者は3.2kmの距離を約1時間かけて歩いた。

天気は雲一つない快晴で、絶好のフォトウォーク日和。話題の大型商業施設「GINZA SIX」がオープンしたこともあり、休日の銀座は多くの買い物客で賑わっていた。しかし今回のテーマは「街の静寂をとらえよう」。まずは銀座三越そばの路地裏に入り、参加者は思い思いに気になる景色を切り取った。その後も“銀ブラ”しながら、iPhoneやiPadで撮影するカリー氏と参加者たち。街の風景をよく観察し、ピンと来たらあったらシャッターを押すことが重要だという。

取材で参加した筆者も「見上げるといつもと違う視点が生まれる」というカリー氏のアドバイスを参考に、iPhoneのカメラを上に向けてGINZA SIXを撮影。今まで気づかなかった建物の表情を切り取ることができ、思わず気分が高揚した。銀座を散策する楽しさも相まって、あっという間に1時間は過ぎていった。

3.2キロを歩きアップル銀座に戻ったあとは、画像編集アプリ「VSCO」の加工テクニックを学んだ。参加者はそれぞれお気に入りの写真を加工し、代表して数名か作品を発表した。どの作品も非常にクオリティが高く、カリー氏は「皆の写真が素晴らしい」と絶賛。「素晴らしいフォトウォークだった」とプログラムを締めくくった。

今回フォトウォークを行うコースは、アップル銀座を出発し、銀座三越そばの路地裏を入ったのち、オープンしたばかりの大型商業施設「GINZA SIX」周囲を回り、銀座の大通りに帰ってくるルートだった。

カリー氏はたびたび歩を止めながら、iPhoneのシャッターボタンを押す。「写真を撮る時は、いつも反射を意識している」そうで、ガラスに写った景色を生かし、左右対称の構図で日常の風景を切り取った。

Today at Appleのプログラム例

Live Art

アーティストがiPad ProとApple Pencilを使って、アートや音楽をライブパフォーマンスするプログラム。解説を聞いて作品への理解を深めたり、体験型のセッションで、iPad ProとApple Pencilを使ったデザインテクニックを学んだりすることもできる。

Photo Lab

フォトグラファーから写真のスタイルを直接学び、iPhoneの撮影技術を磨く体験型プログラム。同様に音楽テクニックを学べる「Music Lab」もある。なおPhoto labは一部店舗のみでの開催となる。

Sketch Walks

街を散策しながら、iPad ProとApple Pencilを使った絵の描き方を学べるプログラム。素描、水彩、絵筆の使い方などのテクニックを勉強できるだけでなく、他の参加者と一緒にコラボレーション作品を創作することもあるという。

Kids Hour

子どもを対象とした楽しいプロジェクト。プログラミングやクリエイティブな作品作りを体験できる。毎年夏に開催する3日間の「サマーキャンプ」や、ストアの機材を使った学習体験「フィールドトリップ」も組み込まれた。