「家のWi-Fiがなんだか遅い…」。これにはさまざまな対処法がありますが、まずはWi-Fiルータを見直してみてはいかがでしょうか。さて、最新の選択肢としてはどのようなものがあるのでしょう? 気になるルータ選びのツボを探っていきましょう。
AirMacの魅力ってどんなところ?
純正ならではの使い心地
Wi-Fiルータ(無線LANルータ)には数多くの製品がありますが、アップルユーザが最初に思い浮かぶ選択肢といえば、やはり純正のAirMacベースステーションではないでしょうか。AirMacベースステーションは、さまざまな高速接続テクノロジーを搭載したAirMacエクストリームや、ハードディスクを内蔵しネットワークストレージとしても使えるAirMacタイムカプセル、コンパクトなボディのAirMacエクスプレスという3つのラインアップで展開されています。いずれもアップルならではのシンプルなデザインで、どんな空間にも馴染む上品な佇まいは、サードパーティ製ルータに対する大きなアドバンテージだといえます。
しかし、「今AirMacベースステーションを買っても(使っていても)大丈夫?」と不安に思う人もいるのではないでしょうか。AirMacベースステーションは4年間(エクスプレスは5年間)刷新されていないため、性能面で見劣りするのでは? と不安を抱く人がいるかもしれません。
実際、現行のAirMacエクスプレスは、対応するWi-Fi規格が「IEEE 802.11n(以下、11n)」と1世代前のもので、規格上の速度も低く抑えられてしまいます。しかし、現行のAirMacエクストリームは登場時から先進的な技術を搭載しており、その性能は今となっても決して色褪せることはありません。
そのうえ、アップル製品との親和性が極めて高いのも、AirMacベースステーションの魅力です。MacやiPhoneがあれば、誰でも簡単にセットアップを済ませられるうえ、「プリンタやハードディスクをつないでワイヤレスで使う」という一歩進んだ活用ですら、簡単に実現できます。
つまり、AirMacベースステーションが提供してくれるのは、シンプルでストレスフリーなWi-Fi生活。デバイスもルータもアップル製品で統一することで、見た目も使い勝手もスッキリとした環境が構築できる。それこそが、アップル純正ルータを選ぶ理由の本質なのです。
MacユーザがAirMacを使うべき4つの理由
省スペースでミニマルなボディデザイン
Wi-Fiルータはリビングや部屋の一角に置かれるもの。だからこそ、佇まいの良し悪しはとても大切です。AirMacベースステーションは、いずれも無駄な凹凸をなくしたミニマルなデザイン。マットな白いボディはどんな空間にも馴染んでくれます。そのうえ、設置面積が少ないので、場所を選ばずにどこにでも置くことができます。
AirMacファミリーとMac、iPhoneの設置面積の比較。AirMacファミリーの設置面積は、すべて98ミリ四方で同じです。
快適な接続速度を実現する高速テクノロジー
AirMac Extremeは、現行のMacや最新のiPhoneなどが採用している「IEEE802.11ac(以下、11ac)」規格に対応。複数のアンテナを使って通信速度を高めるMIMO技術により、3ストリームのアンテナを使って最新のMacのWi-Fi性能をフルに引き出します。また、デバイスの位置を感知し、狙いを定めてWi-Fi信号を送る「ビームフォーミング」など、快適で高速なネットワーク環境を実現するためのテクノロジーが凝縮されています。
AirMac Extremeのアンテナは、ボディ内部の上側に格納されています。2.4GHz帯用に3本、5GHz用に3本、計6本のアンテナを搭載しています。
セットアップが簡単ですぐに使い始められる
MacやiPhoneユーザなら、AirMacベースステーションの設定はいたって簡単。iPhoneは「設定」から、Macは「AirMacユーティリティ」から、自動的に新しいAirMacベースステーションを見つけ出し、ネットワーク名とパスワードを設定するだけでセットアップが完了します。さらに一歩踏み込んだネットワーク設定を行いたいときも、グラフィカルなインターフェイスで直感的にできるのが魅力です。
AirMacシリーズなら、Macからでも、iPhoneからでも簡単にセットアップできます。
プリンタもストレージもワイヤレスで使える
AirMacベースステーションは、プリンタやストレージを接続するためのUSBポートを備えています(AirMac Expressはプリンタ専用)。プリンタをつなげばそのままワイヤレスのネットワークプリンタとして使えますし、ストレージをつなげばあっという間に家庭内でデータを共有できるネットワークスストレージとして使えます。AirMacがあれば、ストレスフリーのワイヤレス生活が簡単に送れるようになるのです。
USBケーブルでストレージをAirMacにつなげば、あとは特別な設定は不要。Macから[ネットワーク]を覗けば、そこにAirMacにつないだストレージを見つけることができます。
AirMac ExtremeとTime Capsuleの高速化テクノロジー
複数のアンテナを使って速度を高めるMIMO
現行のAirMac ExtremeとAirMac Time Capsuleは3ストリームへの対応を謳っていますが、この「〇ストリーム」というのは、複数のアンテナを使って一度に多くのデータを送受信する「MIMO」技術のこと。3ストリームというのは、送信側と受信側で3本ずつのアンテナを使うということです。規格上は、11nでは4ストリームが上限、11acでは最大8ストリームまで対応します。
なお、この技術を最大限に有効活用するためには、送信側と受信側でそれぞれ同じ数のアンテナを搭載している必要があります。現行のMacでは、MacBookとMacBookエアが2ストリームまで、それ以外のマシンは3ストリームに対応しています。つまり、仮に8ストリームに対応したWi-Fiルータが登場しても、MacやiOSデバイス側がその数に対応しなければ、8ストリームの恩恵は享受できないのです。
左の図は、3ストリームの場合の模式図です。送信側と受信側で3本のアンテナを使い、同時に3本のデータ通信を行います。もっとも、受信側には3つの電波が混ざった信号が入るため、電波をきれいに分離できるかどうかが、実行速度の鍵になります。
複数のチャネルを束ねるチャンネルボンディング
チャンネルボンディングとは、隣り合う複数の通信チャンネルを複数束ねて、1度に送受信するデータ量を増やす技術のこと。原則として、5GHz帯のみで利用できます。このチャンネルボンディングの技術も、AirMac ExtremeとAirMac Time Capsuleに搭載されています。
5GHz帯の通信では20MHzごとの幅でチャンネルが分かれていますが、チャンネルボンディングで2つのチャンネルを束ねることで、40MHzの幅を使って送受信ができるというわけです。たとえるなら、自動車が1車線から2車線に増えることで、一定時間に通れる自動車の量が増えるのと同じです。
1つ前のWi-Fi規格である11nでは、2つのチャンネルを束ねた40MHzまで対応していましたが、最新規格の11acでは束ねられる幅がさらに増え、理論上では最大160MHzまで拡張できます。現行のAirMac ExtremeとAirMac TimeCapsuleでは、80MHzまで束ねることが可能です。
ただし、チャンネルボンディングを利用すると、当然ですがその空間で利用できるチャンネル数が減ってしまいます。そのため、多くのデバイスが通信する環境でチャンネルボンディングを多用すると、通信速度が低下する場合もあるので注意しましょう。
チャンネルボンディングで通信チャンネルを複数に束ねることで、一度に送受信できるデータ量が増加します。「IEEE802.11a(以下、11a)」のときは20MHz、11nのときは40MHzでしたが、最新の11acでは80MHz(理論上は160MHz)までチャンネルを束ねることができるようになりました。これにより、快適なネットワークが利用できるのです。
デバイスの場所を探し出すビームフォーミング
ビームフォーミングは、デバイス側からの電波を読み取り、そのデバイスに向けて最適な電波を届けます。その結果として、送受信の速度と安定性が向上するという技術です。
ビームフォーミング非対応のWi-Fiルータは、全方位的に一定の電波を送り出します。一方、ビームフォーミングでは、ルータ側からデバイスに向けて特別な信号を送信しています。デバイス側はその信号に応答することで、位置を推定できるようになるわけです。つまり、ビームフォーミングを利用するためには、デバイス側も対応している必要があります。アップルは現行デバイスのWi-Fi機能について詳細な仕様を公開していませんが、使用されているコントローラチップなどから判断すると、iPhone 6/SE以降のiPhone、現行のほとんどのMacが対応していると考えられます。
ビームフォーミングは、デバイスの位置を推定し、周りの電波の反射を計算に入れて送信のタイミングを細かく制御することで、通信の安定性を向上させます。AirMacベースステーションの中では、AirMac ExtremeとTime Capsuleに搭載されています。サードパーティ製Wi-Fiルータにも、この機能を搭載したモデルが数多くあります。