ニュースなどで、たびたび話題になる「歩きスマホ」問題。ダメだとわかっていても、ついやってしまう人も多いのではないだろうか。しかし、iPhoneの機能を使いこなせば、歩きスマホのほとんどは避けられる。iPhoneがあれば歩きスマホはなくなるのか? これが今回の疑問だ。
歩きスマホは自分自身の問題
たびたび話題になる「歩きスマホ」。多くの人が「ぶつかると危ないし、迷惑だ」と“迷惑”問題として捉えている。ところが、東京消防庁が公表した「歩きスマホ等に関わる事故に注意」という統計を見ると、歩きスマホによる被害を受けての救急搬送は5.3%以下で必ずしも多くはない。ほとんどは歩きスマホをしている本人が物にぶつかったり、転ぶといった事故で、救急搬送されている。
また、年齢別に見ると40代の救急搬送がいちばん多いということも意外なのではないだろうか。歩きスマホ問題は、往往にして「公共マナーに無頓着な若者が他人に迷惑をかけている」問題として語られがちだが、むしろ「体力や反射神経が落ちてきた中年が自分の身を危険にさらしている」問題だというのが実態に近い。
確かに歩きスマホをしている人とすれ違うときは、こちらが余計に気を配る必要がありイラっとする気持ちはわかる。しかし、それを本人のマナーの問題と考え、法的な規制をしたところで効果はあまりないだろう。「歩きながらスマホを一瞬だけ見た」というケースを、歩きスマホと判定するかどうかで余計な混乱を生むだけだ。
他人の歩きスマホは、半身を避ければ済むことだ。しかし、迷惑に感じている人でも、ついつい歩きスマホをしてしまうことがある。他人を非難するよりも、自分が歩きスマホをしないようにiPhoneの使い方の工夫を考えるほうが「自分の身を危険にさらしている」歩きスマホ問題への対処としてはるかに建設的だ。
ゲームアプリは対策が必要か
歩きスマホをしてしまうときのありがちなシチュエーションは、次の4つだろう。
(1)ゲームをしている最中に目的地の駅に着いてしまったが、きりのいいところまでやってしまいたい。
(2)ニュースなどを読んでいて目的地の駅に着いてしまったが、あと少しなので読んでしまいたい。
(3)LINEやメールを書きかけて目的地の駅に着いてしまったが、送信してしまいたい。
(4)駅を降りてから、目的地までの地図を見ながら歩きたい。
「ゲームで歩きスマホなんてとんでもない」と思われる人も多いと思うが、最近のゲームは遊んでいると一定の確率でチャンスゾーンのようなモードに入り、「5分以内にクリアすれば大量ポイントゲット」のようなことになる。駅に到着する直前にこのチャンスゾーンに入ってしまったら、やめられなくなる気持ちは理解できる。
そこでゲーム運営会社やキャリア、業界団体、総務省各方面へのお願いだが、ゲームアプリにはフリーズボタンの機能をつけてほしい。フリーズしておけば時計が止まり、あとでチャンスゾーンの続きをプレイすることができる。
ゲーム開発会社は、利益にならない機能を開発する余裕はないだろうから、業界全体でそのような自主的な取り組みをしていく必要がある。私個人は、歩きスマホ対策をしていないゲームアプリは、一律「18禁」にしてもいいのではないかと思っている。東京消防庁のサイトでも、10歳の男の子のホーム転落事故が紹介されているし10代の事故も少なくはないのだ。
Siriを活用すれば歩きスマホはなくなる
(2)や(3)は、本人のちょっとした使い方によって歩きスマホをする必要がなくなる。なぜなら、iPhoneは操作中にスリープさせて、一定時間後にスリープ解除をすると、どのような画面であっても以前のままの画面が現れる。つまり、時間をおいても続きから再開できるのだ。それがわかっていれば、なにも歩きながら操作する必要はどこにもない。あとで座れる場所を確保できてから、続きを読めばいいだけなのだ。
メッセージの送信に関しては、シリ(Siri)がもっと活用されていいのではないかと思う。メッセージ、メール、LINE、ツイッター、フェイスブックについては、シリを使えば音声で相手を指定し、音声で本文を入力することができる。iPhone付属のイヤフォン「イヤポッズ(EarPods)」であればマイクがついているので、音楽を聴いている最中にもシリが利用できる。ない場合は、電話をかけるように耳にあててシリを使えば、周りから見ても違和感がない。
確かに多少の誤認識があって、長い文を入れるにはあとで修正をする必要があるが、「5分遅れます」「もうすぐ着きます」程度であれば、十分にシリから音声で入力できる。急いでいるときほど歩きスマホをしてしまいたくなるので、シリによる入力に慣れておくといいと思う。ホームボタンを長押しして「使い方」と言えば、利用法の一覧が現れる。
「マップ」アプリはもっと評価されていい
そして、おそらく誰もがついつい歩きスマホをしてしまうのが、④の地図だろう。これに関しては、アップルの「マップ」アプリが非常によくできている。
まず、「カレンダー」に予定を入れるときに、目的地の住所も入力しておく。これは一見面倒だが、一度入力すれば、次回からは名前を入力するだけで住所が自動入力される。すると、出発時刻を逆算して通知をしてくれるのだ。
また、ぜひ活用していただきたいのがナビゲーション機能だ。アップルの「マップ」は、まだ成熟していないところもあるが、このナビゲーション機能だけは、ほかのマップアプリよりもはるかに優れている。経路を探索したあとに[出発]ボタンをタップすると、ナビゲーションが始まる。
ここでは、乗り換えなどの要所要所を、上の黒いタブ部分を左右にスワイプするだけで切り替えられる。特に注目してほしいのが、駅を降りるときだ。「A3」「北口」などの出口案内が実に見やすい。電車に乗っている間に出口案内を確認しておけば、歩きスマホをするよりも駅構内の案内に従ったほうがはるかにわかりやすい。
次に、出口を出たら右に行くのか、左に行くのか、まっすぐ進むのかだけを見ておく。これで歩きスマホをせずに、駅から歩き始めることができる。あとは信号待ちのときにでも、詳しいルートを確かめればいいだけだ。この際も、地図をドラッグしたり拡大/縮小したりするのではなく、上部のタブを左右にスワイプするだけで切り替えられ、縮尺も適度に自動調整してくれる。このアップルの「マップ」のナビゲーション機能は、もっと評価されていいと思う。
なお、地図はいったん立ち止まって見るのが基本だ。人間の方向感覚は意外に貧弱で、自分が動きながら空間方向を把握するのはかなり高度な技術になる。周りの迷惑にならない場所でいったん立ち止まって地図を見たほうが、空間把握が早くできて目的地まで短時間でたどり着けるのだ。
歩きスマホは確かに不快かもしれないが、単なる“迷惑”問題としてのみ捉えるのでは不十分だ。他人に腹を立てるよりは「自分の身を守る技術」として歩きスマホをしない工夫をおのおの考えていくほうが建設的と言えるだろう。
東京消防庁の統計によると、救急搬送されたもっとも多い年代は40代。また、自身が怪我をしたケースがほとんどで、歩きスマホをしている人にぶつかって救急搬送された例は「その他・不明」の8人に含まれているだけで、意外に少ない。【URL】http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/201503/mobile.html
地図を見るために歩きスマホをしてしまいがちの人は、「マップ」アプリのナビゲーション機能を活用しよう。「カレンダー」に予定を入れるときに目的地の住所を入れておくと、マップアプリに目的地の住所が自動で表示される。
歩きスマホをしてしまいがちなのは、駅から降りたばかりのとき。電車の中で駅付近を表示して、出口表示(ここではA3)と「降りてから左に進む」ことだけを覚えておこう。あとは信号待ちの際にでも、上部の黒いタブをスワイプして目的地までのルートを確認すれば十分だ。
文●牧野武文
フリーライター。以前は私自身も「地図を見ながら歩き」は、かなりの頻度でやっていた。しかし、「マップ」のナビゲーションを使うようになって歩きスマホはほとんどしなくなったし、今では「立ち止まってスマホ」のみでほとんどのことが済むようになった。