株式会社コルグの大人気アプリ「KORG Gadget」。このたび、そのMac版である「KORG Gadget for Mac」が発売された。本製品は、コルグが蓄積してきた技術的資産やノウハウがぎっしり詰まった注目の音楽制作ソフト。今回は開発陣のインタビューを交えながら、その魅力をお伝えしよう。
移植ではなくオリジナルを
株式会社コルグが展開する「コルグ・ガジェット(KORG Gadget)」は、文字どおりガジェット的な電子楽器を組み合わせるような直感的なスタイルで、初心者でも簡単に音楽作りが楽しめる人気音楽ソフトだ。すでに絶大な支持を集めているiOSアプリに加え、このたび待望のMac版である「KORG Gadget for Mac」がリリースされた。
コルグは日本発の世界的な老舗電子楽器メーカーだが、物理的な楽器のみならず、初代iPadと同時リリースされたアプリ「アイエレクトライブ(iELECTRIBE)」シリーズなど、音楽ソフトの開発にも積極的な姿勢を見せている。まずはコルグ・ガジェットシリーズをリリースするまでに至った経緯を、開発部の中島啓氏と福田大徳氏に聞いた。
「コルグ・ガジェットの企画自体は、2010年頃から検討を始めました。それまでは既存製品の移植・リイシューものが多かったのですが、やはりオリジナルの音楽制作ソフトを開発したいという想いがあり、検討を続けた結果、2014年にiOS版をリリースしました」(中島氏)
コルグ・ガジェットに搭載されている「ガジェット」と呼ばれる内蔵ソフト音源は、ソフトウェアでありながら、まるで各々がハードウェア製品のような優れた音と操作性のバランスを持っている。そこには、長年にわたり数多くの電子楽器を開発してきたコルグならではの蓄積が活かされている。
「ベースとして選んだのが、_モノポリー(Mono/Poly)”(1981年発売のコルグ製ハードウェアシンセで、後にソフト化)です。あのシンセは万能なうえに、ソフト版はバーチャル・パッチやエフェクトなどの拡張もなされているので、それをカスタマイズしてガジェットを作るところからスタートしました。開発当時は、まだiPadのパワーも高くなかったので、機能を削って軽量かつ使いやすくしました」(福田氏)
まさにコルグが持つ技術的な資産と、それを製品へと昇華させるセンスやノウハウの結晶といえるだろう。
会話の隅々から電子楽器への愛を感じる、株式会社コルグの開発担当・福田大徳氏(右)と中島啓氏(左)。福田氏は「他のソフトの開発を続ける間も、ずっと頭のバックグラウンドにはコルグ・ガジェットの事があり、ずっとビジョンを作っていた」と語る。
KORG Gadget for Mac
ソフト内でガジェットやエフェクトを使い、短い演奏データの組み合わせで曲の構築から書き出しまで行える。ガジェットはAU、VSTのプラグインとしても使用可能だ。
DAW初心者にもおすすめ
そして、今回リリースされたMac版は、個々のガジェットをプラグインとして「ガレージバンド(GarageBand)」など他のDAWソフトで読み込めるのが最大の特徴だ。
「エイブルトン・ライブ(Ableton Live)へのエクスポート機能を開発している際、各ガジェットがプラグインとして起ち上がった状態にできないか、という意見がありました。また、高機能なDAWソフトには大抵プラグインが付属していますが、iOSから始めたユーザにとって、そのようなソフトは少しハードルが高いですよね。コルグ・ガジェットのような導入しやすい制作ソフトと、どのDAWソフトでも使えるプラグインがセットになったものは今までなかったので、じゃあ出してみようと」(福田氏)
「コルグ・ガジェットは、これから音楽を始めようという人に向けてデザインしています。その点はMac版でも変わっていません。もちろんタッチとマウス操作では違いが出てくるので、使いながら不自然な点を1つずつ潰していきました」(中島氏)
Mac版では、新型MacBookプロのタッチバーにも対応しており、iOS版とは違った快適さが実現されている。また、iOS版では追加購入のオプションだったものも含めた30種類以上に及ぶ豊富なガジェットは、制作者に多くのインスピレーションを与えてくれそうだ。
「Mac版の画面は大きく4分割になっており、いちいち切り替える必要がないようにしました。さらに、MIDIキーボードの代わりにMacのキーボードで演奏できるような機能も加えています」(福田氏)
「エレクトロニック・ミュージック向けのほかに、ピアノなど生楽器に特化したガジェットも多数収録しています。ぜひそちらにも注目していただきたいですね」(中島氏)
DTM初心者からベテランまで、幅広いユーザに新感覚の音楽体験をもたらすコルグ・ガジェット。実際に使って、その魅力に触れてみてはいかがだろうか。