ネットでよくバズっている「成功している起業家が朝に行う10のこと」といった記事。そんな記事に頻繁に登場するのが「瞑想」です。私自身ヨガは体験したことがあるものの、瞑想と聞いてもあまりピンと来ないのが正直なところでした。ところが、ここ1年くらいで周りの起業家友だちが揃いも揃って瞑想を勧めてくるようになり、注目度の高さを感じています。
そんな彼らの大半は、瞑想のクラスやコーチに通うのではなく、アプリを利用しています。最近人気を集める瞑想アプリが、サンフランシスコ発の「シンプルハビット(Simple Habit)」。リリースからわずか8カ月で利用者数は40万人。瞑想アプリとしてアップストアで第2位にランクインし、2010年創業の競合「ヘッドスペース(Headspace)」を追い抜いてしまいました。文字や音声はすべて英語ですが、日本でも購入・利用できます。
ヨガのようにまとまった時間を要するのかと思いきや、シンプルハビットは「5分から」といった短時間でできるのが魅力(10分、20分のセッションも)。ハーバード大学で訓練を受けた心理学者や世界トップクラスの瞑想の専門家によって、多忙な人でもスキマ時間で効果を得られるよう設計されているとのこと。生活に取り入れやすい、つまり習慣にしやすいということで“Simple Habit(シンプルな習慣)”と命名されたのだそうです。瞑想と聞くと、座禅を組んで掌を合わせたポーズが思い浮かびますが、椅子に座ったままだったり、電車の中で立った状態だったり、姿勢を制限しないという点でも手軽に取り入れられます。
実際にアプリを使ってみていいなと思ったのが、基本的な瞑想だけではなく、そのときの気分や状況に応じて豊富なセッションが用意されていること。朝、休憩時間、通勤中、睡眠などから最適なセッションを選べます。「ビッグイベント」というメニューでは、「公共の場で話す前」「試験や面接前」など、具体的なシチュエーションを選ぶことも可能。まずは気が向いたときに取り入れてみて、慣れてきたら毎朝、毎晩など決まった時間に瞑想するのがいいそうです。ストレス軽減、睡眠改善、集中力アップなどの効果が期待できます。
シンプルハビットを創業したのはCEOのユンハ・キムさん。投資銀行勤務後に起業し、「ロケット(Locket)」というスマホのロック画面を広告スペースにするサービスを起ち上げ2015年7月にそれを売却。寝る間を惜しんで働く生活の中で、ストレスを解消する手段として瞑想するようになったのだとか。その効果を実感し、自分と同じような忙しい人のためにシンプルハビットを開発するに至りました。
「瞑想すると平常心を保てるので、“今”に集中できます。短い時間で効率的に仕事をこなせれば、その意思決定はよりよいものになるでしょう」(ユンハ・キム)
各瞑想のセッションをガイドしてくれるのは、世界中で瞑想を教える先生たちです。シンプルハビットが他の競合アプリと違うのは、こうした先生たちのプラットフォームを作り上げている点。彼らが自身で生徒を獲得し、独自コンテンツをマネタイズする手段を提供しているのです。
このエコシステムを支えるために、アプリは定期購入モデルを採用しています。ダウンロードは無料で、無料セッションもいくつか用意されていますが、1000以上ものセッションすべてを利用できるのは有料の「プレミアムプラン」。月額コースは1カ月1350円、年額コースは1年1万800円(月額換算で900円)と比較的リーズナブルです。初めて使うユーザには、2週間のお試し期間もあります。
同社は、5月9日にベンチャーキャピタルのYコンビネータなどから250万ドル(約2.5億円)を調達したばかり。目下はチームを強化することに注力するとのことですが、今後の展開が楽しみです。
Simple Habit 【URL】http://www.simplehabit.com
Yukari Mitsuhashi
米国LA在住のライター。ITベンチャーを経て2010年に独立し、国内外のIT企業を取材する。ニューズウィーク日本版やIT系メディアなどで執筆。映画「ソーシャル・ネットワーク」の字幕監修にも携わる。【URL】http://www.techdoll.jp