新しい設定画面ではユーザ情報が一箇所に
最新のiOS10.3では設定画面が新しくなりました。「設定」アプリを開くと、最上段にユーザの情報が表示されます。タップすると、アップルIDアカウントに関連する情報が一覧で出てきます。特にアイクラウド(iCloud)、iTunes、アップストア(App Store)の情報は、これまで画面のかなり下のほうに「iCloud」「iTunesとApp Store」という項目名で表示されていたのですが、ほかのユーザ情報と一緒に最上段にまとめられ、アクセスしやすくなりました。
また、アイクラウドのストレージ使用量はこれまで大まかな数字しか表示されませんでしたが、項目(写真やバックアップ、書類など)ごとに使用量がわかるようになっています。
このユーザ情報内で確認・変更できる項目は、ほかに名前や電話番号、メールアドレス、パスワード、2ステップ確認のオン/オフ、支払い(クレジットカード情報)と配送先(アップルストアで購入時の送付先住所)などがあります。
さらに、アップルIDに紐づくデバイス一覧も表示されます。デバイスごとに、シリアル番号やバージョンなどのデバイス情報を確認できます。デバイスをアカウントから削除したり、「デバイスを探す」や「iCloudバックアップ」などの設定を確認したり、「iPhoneを探す」アプリを起動したりといったことも可能です。
「設定」アプリの最上部にあるユーザ名をタップすると、アップルIDに紐づいた情報が一覧で表示されます。[iCloud]をタップして[容量]→[ストレージを管理]と進むと、ストレージ使用量を項目ごとに確認できます。
同じアップルIDでサインインしているデバイスの管理もできるようになりました。デバイス名をタップすると、機種、使用OSのバージョン、シリアル番号が表示されます。
iTunesでレンタルした映画のリレー視聴が可能に
iTunesは、音楽やアプリだけでなく、映画のレンタル・購入も可能なアップルのストアです。レンタルの場合、一度再生を始めれば48時間でレンタル終了しますが、再生を開始しなければ30日間はいつでも再生可能な状態が続きます。
ラインアップも充実しており、話題作・最新作も多数入っているなど、映画好きにはとても便利なサービスなのですが、レンタルの場合、これまではレンタルしたデバイスでしか視聴できないという制約がありました(購入コンテンツは複数のデバイスで利用可能)。たとえばiPhoneでレンタルした映画を途中まで見て、続きをMacで見るというリレー視聴はできなかったのです。
これがiOS 10・3で改善され、iTunesで一度レンタルした映画をどのデバイスでも視聴できるようになりました。たとえばiPhoneで借りた映画を通勤中に途中まで見て、帰宅後にMacやiPad、アップルTVで最後まで楽しむ、といったことが可能になったのです。
ただし、この機能はiOSだけでなく、iTunesのバージョンも最新の12・6にしておく必要があります。どちらもアップデートを忘れないようにしましょう。
iTunesアプリでは映画のレンタルができます。これまではレンタルしたデバイスでしか視聴できませんでした。
iPhoneで途中まで再生した映画の続きを、iPadでも見られるようになりました。同じアップルIDでサインインしている必要があります。※写真はイメージです。
開発者も自社アプリにレビューコメントをつけられる
アプリ開発者にとって、待ちに待った機能がついにiOS 10・3で登場しました。アップストアのユーザレビューに、開発者自身がコメントをつけられるようになったのです。
これまで、アプリ開発者はアップストアのユーザレビューに対してレスポンスできませんでした。質問や問い合わせにも回答できず、説明欄でサポートページに誘導するくらいしか手がなかったのです。
ユーザレビューの中には誤解に基づくものや、不当に低い評価をしているもの、明らかに悪意を持ってつけられたものもあります。これらに対し直接コメントできるようになったことは、開発者にとって大きなメリットでしょう。なお、コメントはあとから編集・削除することもできます。
レビューに対してつけられた開発者のコメントは、そのレビューコメントを作成したユーザだけでなく、すべての人に公開されます。誤った情報などは開発者が自ら修正してくれるので、一般のユーザにとってもうれしいアップデートといえそうです。
レビューコメントの評価も、これまでより簡単になりました。この機能により、レビューの信頼性はさらに増すことでしょう。
開発者によるレビューコメントは、ユーザの疑問や誤解を解消するだけでなく、お礼コメントなど開発者とユーザとのコミュニケーションを活発化させます。
アップストアのレビューにある、各コメントを、3Dタッチでプレス(強押し)するか長押しすると「参考になった」「参考にならなかった」という項目が表示されます。これらをタップすることで、コメントの評価を簡単に行えるようになりました。
まだまだある! iOS10.3のアップデート
Siriで支払いや配車が可能に
Siriを使って、支払いアプリやタクシーの配車アプリを操作できるようになりました。現在、対応しているタクシー配車アプリはウーバー(Uber)など一部のサービスに限られていますが、今後さまざまなアプリが対応してくれることを期待したいところです。
AirPodsの場所を探せる
「iPhoneを探す」アプリに、ペアリングしたエアポッズ(AirPods)の所在地を表示する機能が加わりました。現在地だけでなく、最後に確認された場所も確認できます。同アプリでは、片方または両方のエアポッズから音を出し、どこにあるか探しやすくすることもできます。音量は最初は小さく、時間が経てば少しずつ大きくなっていきます。
「マップ」が駐車中車両の検索に対応
もともと「マップ」アプリには駐車した場所を記録しておける機能がありましたが、iOS 10.3からその検索に対応しました。駐車した場所を忘れてしまうというのは日常的にありがちなトラブルです。生活に密着したうれしい改善点といえます。
「マップ」で今後の気温・天気を確認
「マップ」アプリの右下には、小さく現在の気温と天気が表示されていますが、iOS 10.3では1時間ごとに今後の気温・天気も確認できるようになりました。右下の気温と天気を、3Dタッチのプレスか長押しします。その日の最高気温、最低気温、降水確率なども表示されます。
CarPlayの使い勝手が向上
カープレイ(CarPlay)の使い勝手が向上しました。具体的には、最後に使用したアプリに簡単にアクセスできるショートカットがステータスバーに追加されたほか、アップルミュージックの再生中スクリーンから、“次はこちら”および現在再生中の曲のアルバムへ移動が可能になりました。
カレンダーのスパム対策が進化
メールアドレスに広告を送りつけることで、アイクラウドと同期しているカレンダーの予定を参加依頼で埋めてしまう悪質なスパム。その削除と報告がiPhoneからできるようになりました。これまでこうした手続きは、ブラウザのiCloud.comかMacのカレンダーからしか行えませんでした。
一番重要な変更点APFSとは
時代に即したシステム変更
今回のiOSのアップデートにおいて、もっとも大きな変更点となるのが、新しいファイルシステム「アップルファイルシステム(Apple File System、以下APFS)」の導入です。何やら仰々しい名前ですが、ユーザにとっては極めて地味な変更点。というのも、実際にiOSデバイスを使ううえでは、目に見えて変わる部分がないからです。
そもそもファイルシステムとは、その名のとおり「ファイルを管理するためのシステム」のこと。ファイルとは、私たちがiOSデバイスに入れている写真やテキスト、音楽などのデータです。このデータを管理するのがファイルシステムの役目なのです。
仮にファイルを本とするなら、ファイルシステムは本棚のようなもの。自前で本棚を作る場合、手持ちの本の大きさやジャンルを考えて本棚を組み立てるでしょう。「あの大きさの本は結構たくさんあるから入れる場所を増やしておこう」「あの作者の本はここにまとめておくか」といった具合です。
しかし、本棚もずっと使っていると想定外の事態に対応できなくなります。考えもしなかった大きさの本やまったく新しい形の本が出てきたらどうしましょう。そのときは、本棚自体の構造を見直し、作り直す必要がありきます。
この例でいえば、APFSは作り直された本棚です。これまでアップルが採用していたファイルシステム「HFS+」は、なんと1998年に発表されたもの。20年近く前のファイルシステムをずっと使い続けていたのです。
20年前の状況は、現在とまったく異なります。デバイスのスペックは、当時では考えられないほど向上しました。記録媒体も、フロッピーディスクからハードディスクを経て、現在はSSD(フラッシュストレージ)がメインになりつつあります。どちらも20年前には一般的でなかったものです。
そんな中ファイルシステムだけが変わっていなかったのですから、さすがにいろいろとデータの扱いが難しくなってきました。アップルが約20年ぶりにファイルシステムを変更することにしたのには、そういった背景があったのです。
アップデートは慎重に
今回導入されたAPFSは、HFS+の機能を引き継ぎつつも、さまざまな新機能を備えています。たとえば「暗号化なし」「シングルキー」「マルチキー」という3種類の暗号化が追加されたことで、セキュリティがより強化されました。また、スナップショット機能が導入され、特定の時点におけるファイルシステムの自動バックアップが可能になりました。さらに、SSDに最適化されたおかげでその安定性や処理速度が向上し、デバイスはこれまで以上に快適に動作するようになっています。
といっても、iOSデバイスははもともとストレスなく使えるデバイスですから、ユーザの観点では目に見えて変わる部分はそれほどないかもしれません。しかし、少なくとも改善が期待できるという点でAPFSの採用は歓迎すべきアップデートといえるでしょう。
一方で注意点もあります。今回のiOSのアップデートは、ファイルシステムの変更という非常に重大な変更をもたらすものになるため、万が一途中で中断してしまうようなことがあれば、iOSデバイスのデータがすべて消えてしまうおそれがあります。
今回のアップデートは、いつもよりも慎重に行いましょう。Wi−Fi経由でアップデートするのではなく、できればMacに接続してiTunes経由でアップデートするのが賢明です。もちろん、デバイスのバッテリの残量なども確認しておきたいところです。事前にバックアップをとることも忘れないようにしてください。
?ファイルシステムは「本棚」のようなもの
ファイルを本と仮定すれば、それを格納するファイルシステムは本棚のようなものです。この図のように、当初は整然とファイル並べられていても、想定以上のサイズやジャンル分け不可能なものが登場したら、既存のシステムでは対応できません。
?HFS+とAPFSの違い
HFS+とAPFSの違いは、たとえばファイルコピーにおいてこのようになります。右はHFS+でのファイルコピーを表した図。ファイルをコピーしたら、ストレージ上に同じデータが複製されます。ファイル内のすべてのデータを読み取って、新しいフォルダに書き出さなくてはならないので、時間もかかります。
こちらはAPFSでのファイルコピー(クローン)を表した図です。コピーとは違い、クローンはオリジナルのファイルを参照します。もしもクローン、またはオリジナルが編集されたら、編集された部分だけ別途複製されて保存されます。 APFSではこうした効率化が図られているため、デバイスの動作の安定性や処理速度の向上が見込めるのです。