アップル名古屋栄は2005年1月22日のオープンから12周年を迎え、今年の1月からリニューアル工事を開始していた。リニューアルは外壁の改修から始まり、外壁の改修を終えた3月2日からは店内の改修工事に着手。営業を続けながら改修していく方針だったため、どこかどう変化したのかを随時確認することができた。
就任後初の国内改修
日本のアップルストアの改修工事は、これまでも銀座、渋谷、仙台一番町などで実施されてきた。しかし、アンジェラ・アーレンツ氏がアップルのリテール担当シニアヴァイスプレジデントに就任して以降、日本にある直営店の改修工事が行われるのはこれが初めてとなる。
アーレンツ氏は昨年、2016年内に米国の95店舗をアップル・ユニオンスクエア店型にリニューアルする計画を明らかにした。その計画が予定どおりに進んだかどうかは定かではないが、2017年になってからも世界各地で直営店のリニューアル工事が進められている。今回の名古屋栄のリニューアルも、こうした一連の流れの中で実施されたものと考えられる。
素材へのこだわり
リニューアルした名古屋栄店では、最新のアップル直営店の設計思想を随所に感じ取ることができた。まず気づくのは、店舗1階の壁面にあった2つのガラス仕切りがなくなったことだ。この変更により、フロア面積が同じでありながらもより広々と感じられる空間に生まれ変わった。
また、展示台や床など、内装に用いられている素材も大きく変わっている。まず、1階壁面側にあった細い展示台は、カエデ材からオーク材に変更されたほか、1階のピエトラセレーナ(イタリア産砂岩)製の床材も新しくなり、より明るく水はけの良い改良資材が使われていた。
さらに2階の床材は、フローリングから1階と同じピエトラセレーナ床材に変更された。2005年のオープン時、ピエトラセレーナ床材は重さの関係で2階には採用されなかったと考えられ、今回素材の軽量化を実現したことで2階フロアに採用できたのではないかと推測する。
これまでジーニアスバーの対面式カウンターがあった場所は、従来より10センチ低くなったオーク材のテーブルに変更された。アップル表参道では、国内初の360度ジーニアスバー(カウンター式ではなく、大きなテーブルを囲んでジーニアスが接客するスタイル)が採用されたが、名古屋栄も同じ方式を導入した。
対面式を廃止したことで対応可能な人数が倍以上になったほか、日本人の平均身長に合わせてテーブルも低くなり、着座しやすくなっている。さらにテーブルだけでなく椅子も新調されており、アップル・ユニオンスクエアから導入されている、細い金属パイプの上に柔らかな曲線を描いた木材を置いた椅子になった。
このように、バージョンアップしたアップル名古屋栄は、これまでのアップルストアとしてのアイデンティティを維持しつつ、より明るく展示台を小型することで、店内を広く見せることに成功している。
10年以上前にオープンした店舗は、iPhone、iPad、アップルウォッチなどの展示やサービスを提供することが考えられておらず、これまでは暫定的な対応を行ってきた。アップルが直営店でより良いサービスを提供するには、販売する製品群と店舗の親和性を高めるため、数年単位で見直しを図っていくことが必要なのだろう。
Apple 名古屋栄
住所 ● 愛知県名古屋市中区栄3-17-15 エフエックスビル
TEL ●052-238-2400