アップル好きな会長の鶴の一声で、デスクトップPCを廃止して80名を超える社員全員にMacBookが支給された舞安商事。しかし、Macに慣れない現場からは不満や疑問が続出した。そこで、社内の情報部内にモバイルビジネスソリューション推進室、通称「MBカイゼン課」が登場。本日はシブカワ常務から急用が舞い込んだ。タカハシにトンデモない展開が待ち受けている。
突然の海外出張！
タカハシ●課長、シブカワ常務から緊急の依頼ですよ。なんか僕に持って来てもらいたい製品サンプルがあるそうなんですが…。
ハヤシバラ●急な話ですね。フェイスタイム（FaceTime）で打ち合わせしてみますので、ちょっと待っていてください。
タカハシ●飛行機で出張かあ、ちょっと楽しみだな。札幌かな大阪かな？ 沖縄だったら観光もしてみたいな…。
ハヤシバラ●打ち合わせ終わりました。えーと、その、タカハシくんはパスポートは持ってるかな？
タカハシ●えっ、一応持ってますけど。まさか海外出張!?
ハヤシバラ●そのまさかです。飛行機は今日の午後なので、今からすぐ家に戻ってパスポートと最低限の着替えを持ってきてください。その間に必要な機材をこちらで用意しておきますので。
タカハシ●ちょ、ちょっと～！ 無茶苦茶いわないでくださいよ～。そもそも行き先すら聞いてないし！
ハヤシバラ●場所はドイツです。 社運が掛かった契約交渉らしいので何卒よろしく。
タカハシ●ひえ～人使い荒い会社だな。とにかくダッシュで準備します！
iPhoneとMacだけで
タカハシ●ただいま戻りましたっ（ハァハァ）。まだ10時なので出発に間に合います。持って行くものの準備はできてますか？
ハヤシバラ●ご苦労さま。このアタッシュケースがシブカワさんに渡すサンプルです。通信手段はiPhoneの国際ローミングでもいけると思うのですが、うまくいかないケースも考えてSIMフリーのiPhoneを用意しておきました。これに現地でSIMを買って入れてください。あとデビットカードなどはこの袋に入ってます。君のMacBookも忘れずに持っていってね。
タカハシ●えー、…これだけ？
ハヤシバラ●はい、これだけで十分です。向こうの空港に到着したら連絡くださいね。
タカハシ●いえ、何だかパッと見た感じ国内出張と装備が変わらないんですが、これで本当に大丈夫なんでしょうか…。
ハヤシバラ●ビジネス書作家の美崎栄一郎さんは紙袋1つとiPhoneだけで海外行くって言ってましたから大丈夫じゃないですか？ とにかく急いで！
タカハシ●僕、ドイツ語どころか英語も怪しいのに～。
ハヤシバラ●そんなことは最初から期待していませんので心配無用です。あっ、大事なことをお伝えするのを忘れてました。
タカハシ●な、なんですか？
ハヤシバラ●お土産は安いもので構いませんので、赤ワインでお願いします。
タカハシ●ほんと無茶苦茶だなこの会社。
【依頼書】
空港ではフリーWi-Fiを探そう
タカハシ●どうやら出発の時間には間に合ったようだ。移動中にオンラインでチェックインも済ませたし、保安検査も通過したのであとはゲートに向かうだけのはず。ANAだとiPhoneのパスブックが搭乗券になるって聞いていたけど、結局紙のチケット渡されたのは想定外だったな。別に紙で困るということもないけど…。
それにしても12時間のフライトでヨーロッパか。なんだか実感わかないなあ。とりあえず移動中はiPhoneを機内モードにして、映画でも観ながらおとなしくしていよう。機内でMacBook広げて仕事するビジネスマンもいるけど、エコノミークラスだと邪魔だし、さまにならないしね。
タカハシ●とかいっているうちに本当にドイツの空港に着いてしまった。でも案の定iPhoneは圏外だし、空港内のショップは免税店はあってもSIMなんてどこに売ってるのかわかりませんよ。そもそも売ってるのか？ 出迎えの人がいるのかどうかもわからないし不安ちゃん…。とりあえずネットを使えるようにしないと何も始まらないなあ。空港のフリーWi-Fiみたいのがあるので、とりあえずこれにつないでみよう。
英語の画面で戸惑ったけど、なんとかつながった。まずは課長に到着のメッセージを送らないと…。
タカハシ●ああ、本当だ。ってそういうことは先にいってくださいよ！というか乗り継ぎロビーにほとんど人がいないんですけど？ トム・ハンクス主演の映画でこんなシーンあったよなあ…本当に到着できるんだろうか僕（涙） 。
気を取り直して、ちょっと時間があるのでMacBookも充電しておきたいな。あ、電源プラグのアダプタがちゃんと袋に入ってる！ 課長ありがとう！
到着する時間帯や空港によってはその場でSIMを購入できるとは限りません。キャリアの場合は国際ローミングのプランを利用できる場合が多いですが、SMSの送信が1通100円程度かかることがあります。また、格安SIMではローミングに非対応の場合もあります。
ヨーロッパでは国によってコンセントの形状が異なります。アップル純正の「Appleワールドトラベルアダプタキット」（税別3200円）を用意しておきましょう。ドイツの場合はCタイプで、アップル製品は220Vに対応しているのでそのまま使えます。
アップル純正のウォレットアプリでは、クレジットカードやチケットをまとめて管理できるパスブック機能を搭載しています。ANAの国内線・国際線のチケットも対応しているので、出発24時間前からオンラインチェックインを済ませればチケットをパスブックに追加できます。
国際空港にはフリーのWi-Fiが設置されていることが多いです。国際ローミングが利用できない場合には、まずは接続を試みましょう。利用にはWEBブラウザで簡単な認証手続きが必要なことがあります。
現地SIMの入手は意外と簡単
タカハシ●いわれるがままに飛行機乗り継いできたけど、ここはいったいどこ？ なんだか目的地はドイツじゃないっていわれた気がするんだけど。あ、プラカード持ってる人がいる。ヤー、アイム、タカハシ。ナイストゥーミーチュー。え、手紙？ 開けてみろって？
タカハシ●名前間違ってるけど、これで一応は任務完了ってことなのかな…。でもすぐに帰れないのならSIMカードはやっぱり必要だよね。気が重いけど街に買いに行くとするか。
いくつか通信事業者があるのは日本と同じみたいだね、よくわからないのでこの（ドイツ）テレコムにしてみよう。ドイツ語よくわからないけど、音声通話用のSIMとデータ通信専用のSIMがあるみたい。容量ごとのプリペイドプランがあるのはどこの国でもあまり変わらないな、LTE回線が10GBで15ユーロ（約1800円）ってずいぶん安いんだね、数日の滞在じゃ容量余っちゃいそうだけど。
すいません、これください。えーと、ディスワンプリーズ。クレジットカードオーケー？ あれ、あっさり買えちゃった、サンキューベリマッチ。あとは、このナノサイズのSIMカードを入れ替えればいいんだよね。
入れたらすぐメッセージが飛んできたけどやっぱりドイツ語なので読めない（笑）。お、アンテナが立った途端にメールとメッセージの通知が来た。やっぱりネットがつながるとホッとするなあ。
現地SIMを入手する
大きな街ならキャリアの販売店がだいたいあります。また、スーパーなどでは格安SIM業者にあたるデータ通信用のプリペイドSIMが販売されていることがあり、より短期間の滞在に適したプランも提供されています。
SIMカードはサイズに合わせてカットできるように切り取り線が入っています。iPhoneやiPadで使うには一番小さなナノSIMサイズにしてからSIMトレイに挿入します。このときSIM取り出しピンを持ってきていないと困ってしまいますが店頭のカウンターで借りることもできます。
SIMカードを挿入するとメッセージが送信されて、すぐに利用可能となります。アイメッセージの送信に使われるSMSで課金が行われる旨の警告が出ますが、数十円程度ですのでOKをタップします。
利用開始のメッセージにはいろいろ書いてありますが、特別重要なことは書いてありません。利用した通信量を測定する専用アプリの案内もありますが、計測が月末でリセットされてしまうなど利用時期によってはあまり役に立たないことがあります。
大画面テレビがいいんじゃない？
タカハシ●ホッとしたらすっかり熟睡してしまった。そういえば飛行機でほとんど寝てなかったんだ。さて、モバイル通信できるなら、せっかくだしMacBookでインスタントホットスポットできるかも試してみよう。設定は日本にいるときと同じでもそのままつながるのか、便利だな～。ハヤシバラ課長とフェイスタイムしてみよう。
ハヤシバラ●お、映像でフェイスタイムですか。どうやらMacでの通信もうまく行っているみたいですね。ついでに、ちょっと確かめたいことがあるので、あとでホテルのWi−Fiに接続してフェイスタイムオーディオできるか試していただけますか？
タカハシ●あ、はい。iPhoneでもう一度かけてみよう（プルルル・呼び出し音）あれ？ ドイツ語の自動音声になっちゃった。何いってるかわからないけど、どうやらこのままでは使えないみたいですね。
ハヤシバラ●ふむ、TモバイルならWi-Fi Callsという仕組みがあるんですが、その地域はまだ対応してないんでしょうかね。あるいは電話かけ放題のプランに加入していないと使えないのかもしれません。ちなみに、その機能とiPhoneの通話の共有機能は共存できないみたいです。
タカハシ●iPhoneの通話の共有って、かかってきた電話をMacでも受けたりかけられるやつですよね？ どちらもWi-Fiを使うからなんでしょうか。でも確かに世界中どこでも無料で電話できるようになったらすごいですねえ。なんだか日本の通信環境がとても時代遅れな気がしてきました…。
ハヤシバラ●日本国内はインフラは優れているのですが、サービス面で「ユーザ目線」に立てているかどうかはまた別の話でしょうね。詳しくは帰国してから報告してもらいましょう。
タカハシ●わかりました！ iPhoneとMacBookがあれば、世界中どこでも仕事できることがわかりましたし、いい勉強になりました。お土産の赤ワインもバッチリゲットしておきました！
インスタントホットスポットでテザリングもOK
iPhoneの「設定」アプリでインターネット共有がオンになっていれば、Macからそのままインスタントホットスポット（テザリング）が利用できます。
LTEで通信できないので、京成スカイライナーの列車内Wi-Fiを利用しようとしたところ、サービス内容の確認や設定にもたもたしていたら都内に入ってしまいました。時速160キロ走行は伊達ではないと感じた瞬間です。
MacとiPhoneがあれば世界中どこでも仕事ができる時代を迎えようとしています。
【報告書】
