3月3日、東京・丸の内において、FIBC(金融イノベーションビジネスカンファレンス)2017が開催された。その中で、みずほフィナンシャルグループが、オープンバンクAPIの一環として国内初の更新系APIを公開。運用には関連法案の整備が必要だが、これを利用したiMessageからの送金デモも行われた。
世界を睨んだ金融イベント
FIBCは、電通国際情報サービスが主催する国内最大級、かつもっとも歴史あるフィンテック(FinTech)関連イベントであり、初開催の2012年から、毎年欠かさず行われてきた。フィンテック系のスタートアップや金融機関、ベンチャーキャピタルの交流の場として機能し、先進的な金融サービス企業によるピッチコンテストがイベントの核となっている。
6回目にあたる今回は、海外の有名なスタートアップ支援組織や各国大使館の協力によって登壇企業29社のうち過半数の15社が海外のスタートアップで占められ、日本企業も含めてピッチをすべて英語で行う本格的な国際イベントへと成長した。
また、登壇企業のサービス内容もさまざまで、送金やカード決済はもちろん、認証技術やセキュリティ関連技術、さらにはAI(人工知能)を応用したアドバイザー機能の提供まで、フィンテックの拡がりがそのまま反映されたものとなった。
たとえば、国内部門のFIBC大賞に選ばれたクラウドサービスの「オースリート(Authlete)」は、サードパーティアプリからWEB APIへのアクセス制御を行う際の「認可」の仕組みを提供し、オープンバンクAPIを介して各種スタートアップサービスと金融機関をリンクするものとして注目を集めた。
また、海外部門のFIBC大賞となった「トレードイット(TradeIt)」は、あらゆるアプリ、WEBサイト、チャットボットなどから株取引が可能なAPIとSDKを提供し、一般家庭で眠っている貯蓄を投資に活用する道を拓くサービスとして高く評価された。
その他の受賞サービスの紹介は別表に譲るが、いずれもユニークなものばかりで、最新のフィンテック関連技術のバラエティの豊かさと層の厚みを印象づけた。
法整備が待たれる新技術
ピッチコンテストと結果発表の合間に行われたゲストスピーチのスピーカーには、大手銀行として積極的にフィンテックの導入と普及に取り組むみずほフィナンシャルグループ・インキュベーションPTシニアデジタルストラテジストの大久保光伸氏、「一生通帳」としての家計簿アプリを提供するマネーツリーの共同創業者で営業部長兼MT LINK開発責任者マーク・マクダッド氏、指紋認証による決済システムのリキッドペイ(LIQUID Pay)を展開するリキッドの長谷川敬起氏が登壇。特に大久保氏のパートでは、これまで参照系(データを参照するのみ)に留まっていた国内の銀行APIの応用範囲を大きく広げる可能性を秘めた更新系(データ内容の書き換えが可能)APIの発表があり、国内初の動きとして特筆に価した。
それを受ける形でコンセプトの実証デモとして行われたマネーツリーのiMessageアプリ「ワリカン」からの送金処理は、来るべきフィンテックの恩恵を先取りするものとして興味深い機能だ。これは、ワリカンを通じて会食した人たちに人数割と各自の飲食量に応じた金額が通知され、送金ボタンをタップして口座を指定すれば、その場で支払いが完了するというもの。こうした処理が実現すれば、個人間の日常的なお金のやりとりが簡便かつセキュアに行えるようになり、キャッシュレスな世界が一層進んでいく。
更新系APIの運用には、さらなるリスク分析や関連法案の整備が必要なため、まだ少し時間がかかりそうだが、そのメリットは計り知れず、金融庁も前向きに取り組んでいることから、早期の実現に大いに期待したい。