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書評『スーパーベターになろう!』 ゲームをするように生きる

著者: 徳本昌大

書評『スーパーベターになろう!』 ゲームをするように生きる

第21回 ストレスフルな時代、ゲームをするように生きてみよう!

もともとある心の強さに気づこう

本書を読むことで、「ゲーム」に対する認識が変わりました。私はこれまで、iPhoneにゲームアプリを一切入れていませんでしたが、今は定期的にテトリスを楽しむようにしています。特に嫌なことがあったとき、少しテトリスをするだけで、気分をすぐに変えられるようになりました。

著者のジェイン・マクゴニガルは、ゲームをプレイするときに私たちはいつもより果敢にチャレンジしたり、他者への貢献を考えると指摘しています。また、新たな手法を考え、試すことにより、非常にクリエイティブな状態にもなります。さらには、何度も試練を克服することで、レジリエンス(あきらめない心)が鍛えられ、本来持っている「心の強さ」を十分に発揮できるといいます。

本書は、ゲームによって引き出されるこれらのポジティブな側面を、実生活に応用する=ゲームフルに生きるための解説書です。このメソッドは、彼女が脳震とうを起こし、頭痛・吐き気に悩んでいたときに発見したもの。絶え間ない苦しみの中で鬱状態に陥りながら、彼女はこう思い至ったといいます。

「自ら命を投げ出すか、これをゲームに変えるか、ふたつにひとつだ」

それから自身の状況をゲームに置き換え、仲間を作り、パワーアップアイテムを使い、悪者と戦うことを決意すると、憂鬱や不安が次第に消えていっただけでなく、自分自身を以前よりもずっと強い人間と思えるようになったそうです。そうして生み出されたゲーム「スーパーベター」は、全米40万人のユーザに活用され、効果が実証されています。

以前よりも状態になるには、著者のように困難を乗り越える作業が必要です。これを「心的外傷後の成長 (PTG)」といいますが、そのような恐ろしい出来事に見舞われるのをじっと待つのではなく、自ら試練を選ぶことでもまた、PTGの恩恵は享受できます。「恍惚後の成長(PEG)」と呼ばれるもので、プロジェクトやミッションを進んで引き受けたりといったことがこれに当てはまります。

本書では、PTGやPEGを得るため、すなわちストレスに屈することなく、それをバネに成長するために役立つヒントが数多く紹介されています。それらは実は、ゲームをするときに当たり前にやったり、考えたりしていることなのです。

実際、私もこの1カ月、ゲームフルな精神を取り入れて暮らしてますが、嫌な気分にならず、その効果を感じています。すっかり、ゲームというものを見直してしまいました。

スーパーベターになろう!

ゲームの科学で作る「強く勇敢な自分」

ジェイン・マクゴニガル著

早川書房/2160円

2015年刊

徳本昌大

iPhoneやソーシャルメディアのビジネス活用を絶えず考える読書ブロガー。複数の広告会社勤務後、コミュニケーションコンサルタントとして独立。現在は、株式会社Ewil Japan、株式会社ビズライト・テクノロジーの取締役としても活動中。 【URL】http://tokumoto.jp/